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駐在妻の税金のハテナ「海外からのリモートワークによる業務委託報酬について」

 

こんにちは!税理士の加藤朋子です。
私は2020年から2年あまりタイのバンコクに駐在帯同していましたが、その前は日本で15年間、税理士として勤務していました。

日本にいた時から海外に住む日本人からの税務相談を多く受けていましたが、CAREER MARKに集まる駐在妻の方々とのお話の中で最近こんな疑問をよく聞きます。

駐在帯同しても、海外からリモートで働きたい。
今日はこの税金のハテナについて、皆さんと考えたいと思います。

質問

「私は来月からパートナーの海外赴任の帯同のためにA国に居住する予定の日本人です。A国に住みながら、日本の企業X社からフルリモートによる業務委託を受けたいと思っています。この業務委託報酬について私の税金はどのようになりますか?」

この質問へのお答えのポイントは3点です。

ポイント

 

日本の所得税はかかるのか?

(1) 居住者・非居住者とは?

日本の所得税法では、その人が日本の居住者か非居住者かによって課税の範囲が変わってきます。居住者とは日本に住所、あるいは1年以上居所*1がある人*2、非居住者とはそれ以外の人*3のことをいいます。来月からA国で暮らすこの質問者さんは、日本の非居住者になりますね。住民票の有無で居住者か非居住者かを判断するのでは?という話を聞きますが、所得税法では住民票の有無だけでは判断しません。その人の生活の本拠地が日本にあるのかどうかで判断します。
では非居住者が日本の企業から業務委託報酬を貰った場合に、日本の所得税はかかるのでしょうか?

 

(2) 原則的な取扱い

非居住者は日本の国内で役務提供したことによって貰う報酬に対して所得税が課されます*4。この質問者さんはA国でリモートワークをしていて、日本の国内で役務提供していないため原則的には日本で所得税は課されません。
日本の銀行振込で報酬が支払われるけれど、それでも所得税は差し引かれないの?という質問も一緒によく頂きますが報酬の支払地は影響しません。どこで役務提供したのかがポイントになるのです。


(3) 例外的に日本で所得税がかかる場合

原則的には(2)の通り日本で所得税はかかりませんが、もし質問者さんが日本に事務所や事業所等の恒久的施設*5を持っている場合に日本でも所得税がかかる場合があります*6。その他、日本の企業に対して行う役務提供の内容によって所得税がかかる場合があるため、詳細については税理士等の専門家に確認することがおすすめです。


(4) 租税条約の内容も確認

上記(1)~(3)は日本の所得税法で定められている内容ですが、この他に日本は色々な国と租税条約を締結しています。租税条約とは日本と異なる規定を置いている外国との二重課税を防止すること等を目的にした租税に関する二国間の取り決めのことをいい、日本が締結した租税条約が所得税法に定める内容と異なる場合には租税条約の内容が優先して適用されます。*7今回の質問では基本的に所得税法で定める内容は各国との租税条約に沿った内容になっていますが、租税条約の内容を見て所得税法に定める内容と相違がないか確認すると安心です。

 

A国の所得税はかかるのか?

では質問者さんが住んでいるA国ではどうでしょうか?これはA国の法令によりますが、原則的にはかかると思っていた方が良いです。

業務委託報酬への課税については、各国がそれぞれ課税される要件について法令で定められていて、その内容は様々です。色々な国の情報を聞きますが、多くが自国の居住者が自国で役務提供している場合には、日本の企業から支払われる報酬であっても課税する内容になっています。

居住国の税金のルールについては、自力で調べるのが本当に難しい!インターネットで調べても既に改正されて古い内容になっていたり、そもそも詳しい情報が見つからないことも多いです。現地の専門家に最新の情報を確認するのが確実です。

 

その他の注意点は?

ここまで税金について書きましたが、他にも

  • 帯同先の国のビザ
  • 社会保険 

などのルールも考慮しながら手続きを進めていくことになります。またパートナーの会社の規則で配偶者の現地での就労を認めていない場合も。このような税金以外の点も海外でリモートワークをする場合の要チェックポイントになります。

 

 

まとめ

今回はCAREER MARKに集まる駐在妻さんから最近多く頂いた質問について考えてみました。

海外からのフルリモート勤務は、居住国のビザやパートナーの会社のルールで、リモートワークによる就労が可能な人が前提になり、残念ながら誰でも可能な訳ではありません。色々検討事項が多いリモートワークですが、それでも1つ1つクリアして「無事にスタートしましたよ!」という話も聞こえてくるようになりました。これは海外帯同中にも働きたい方に嬉しいニュース。2023年は嬉しいニュース、ワクワクするニュースがもっと増えますように!

 

 

プロフィール

加藤 朋子(かとう ともこ)
税理士
2005年に税理士試験に合格
都内税理士法人で富裕層に対する相続対策、相続税・所得税の申告など、個人に関する税務サービスを提供。
特に海外在住者や海外に資産を持つ個人の税務コンサルティングに注力、国を跨いだ国際相続案件にも従事。

2020年12月からタイのバンコクに駐在帯同、
2023年1月に日本に本帰国しました!
記事についてのお問合せ・税金についてのご相談は加藤朋子税理士事務所まで
(tomoko.kato64@gmail.com)

 

 

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◆本文脚注◆

*1:居所とは、その人の住所には至らないものの、その人が現実に居住している場所をいう。

*2:所得税法2条1項3号

*3:所得税法2条1項5号

*4: 所得税法161条1項12号、所得税法第7条1項3号

*5: 所得税法2条1項8号の4

*6:所得税法161条1項1号

*7:憲法98条、所得税法162条