CAREER MARK公式ブログ

駐妻キャリア支援CAREER MARKのブログです。 駐在妻・もと駐在妻の人材紹介を通して「また働きたい駐在妻」と 「もっと成長したい企業」をつなぎ、 ブランクがあってもまたチカラを発揮できる社会を目指しています。 駐在妻の再就職インタビューやキャリアセミナーレポートなどを掲載中!

運営スタッフインタビュー vol.1 鎌田薫




インターンとしてCAREER MARKをもっと知りたい!
と、運営スタッフにインタビューしました。
前回記事のCAREER MARK創設秘話に引き続き、今回は共同代表である鎌田薫のインタビューをレポートします。(※肩書はインタビュー時のもの)

今回は、ご自身のロンドンでの駐在帯同期間を経て、日本に帰国してからCAREER MARK立ち上げまでの経緯、現在の働き方、そして今後の夢について伺いました!

【鎌田薫 プロフィール】※インタビュー時
CAREER MARK共同代表/MentorFor公式キャリアメンター/Himemama世界戦略チーフで、幼稚園児のお子さん2人(5歳・2歳)を育てるママ
駐在帯同前は管理職として、社長の右腕として多くの部下をまとめる一方、コミュニティ運営にも携わるなど、仕事大好き、バリキャリの道を歩む。
第一子育休中にご主人の駐在が決まり、帯同の為に仕事を退職。
帯同期間中には、キャリアを一度手放したことでの自己喪失感と葛藤を経て、ロンドンで在英日本人女性コミュニティであるHimemama Londonの立ち上げを経験。
日本帰国後、WebメディアLAXICの編集長やHimemama世界戦略チーフを経て、CAREER MARKを立ち上げ、現在に至る。

ご自身のロンドン駐在帯同でのキャリアに対する葛藤や、帯同期間中のコミュニティ立ち上げのお話についても熱い想いを感じられますので、今回の記事以前の活動についてはこちらの記事もぜひ。

・fledgeインタビュー記事:
母である前にひとりの女性。悩んでいたからこそ出来たママコミュニティHimemamaLondon | 働き方メディア Fledge(フレッジ)

画像1

 


(インターン、以下略)
——本インタビューでは駐在帯同からの日本帰国後、CAREER MARK立ち上げに関するお話を中心にお伺い出来ればと思います。

(鎌田薫、以下鎌田)
はい、よろしくお願いします。

 

「一生の仕事ってなんだろう」 ~帯同中に出会った“キャリア支援”への気持ち~

 

——前後するのですが、帯同中に『一生の仕事』について考えるようになったと伺いました。そのあたりについて教えてください。

(鎌田)そうですね、まずは駐在帯同中の経験について。
自分の意志で退職してイギリスへ駐在帯同しましたが、渡英3か月後には、日本で一緒に仕事をしていた方が活躍してイキイキ働いているのをSNS上でみては、「いまの自分の価値はなに?」と考えて落ち込んだりしていました。そんな時期に、在英日本人女性向けのコミュニティ立ち上げの話をいただき。
当初はやれるか自信がなかったのですが、まずはと、自分の気持ちやキャリアについての葛藤を人に話したり、人に会うことで行動をとってみたんです。
その中で、同じ気持ちを持っている沢山の女性に出会い、優秀で魅力的な仲間とともに充実したコミュニティの立ち上げをすることが出来ました。
『ママ軸ではなく、自分軸』をテーマに様々な企画をして、多くの駐在妻や永住の皆さんにご参加いただくに至りました。

——普段から、薫さんとお話するとパワーをもらえるんです。
想いを持って周りに伝え続けることで、それに共感した魅力的な仲間が集まってきたんですね。

(鎌田)ありがとうございます。
こういった経験を経て、人脈を広げて多種多様な人と出会えたことが、すごく楽しかったし自分の糧になりました。そこで日本に戻ってからの働き方は、会社員じゃないかもと思うようになり。
自分で何かやるためには・・やはりスキルを身に着けたい! と帯同期間中に、子供を抱えながらコーチングの勉強をし、資格を取得しました。

——現在のメンタリング(コーチング+アドバイス)の仕事のきっかけになっているコーチングだと思いますが、コーチングの資格を取ろうと思われたのはなぜでしょうか。

(鎌田)会社員ではなく自分の力でビジネスを、と思ったものの、お金を生み出せるようなスキルがない、と思ったからです。また、これからは自分の人生を自分で舵取りしていく時代。自分のことをマネジメントしていくためにもコーチングスキルが役に立つのでは、と考えました。
また、わたしは以前から「キャリア」「応援」「誰かの役に立つ」ということにこだわりがあり。カウンセリングやメンタリングを活用できる人が増えたら、その人たちがより良い人生を送れるきっかけになる、それを継続的にサポートしていける仕事をしたいと思ったんです。
これが自分の一生の仕事になるのでは、考えるようになりました。

——駐在帯同した直後は、ご自身のキャリアについて葛藤と悩みを抱えていたそうですが、行動していくことで、帯同中に『一生の仕事』を考えて新たな方向性を見つけるに至ったんですね!

 

「薫がロールモデルになればいいじゃない」~幼稚園ママが働くこと~

 

——いざ日本へ帰国すると、後にお子さんは幼稚園に入園されたんですね。一般的には、働くママは保育園に多いと思いますが不安はありましたか?

(鎌田)私自身も働けるのかな、と心配がありました。
でも、大学時代からの友人であり、自社メディアを通して女性の働き方を支えている三好(株式会社ノヴィータ代表取締役/兼CAREER MARK共同代表)にその気持ちを伝えたところ、
「それなら薫がロールモデルになればいいじゃない」と声をかけてくれたんです。
そしてノヴィータの自社メディアであるLAXICの編集長の話をもらい、並行してHimemama世界戦略チーフにも就任し、パラレルで働く日々が始まりました。


「駐在妻がキャリアを考える場所をつくりたい」~CAREER MARK立ち上げ~

 

——なるほど。では、そこからどのようにCAREER MARK立ち上げに至ったのでしょうか。

(鎌田)有難いことにそうして働き始めることが出来たのですが、そのなかでも、まだモヤモヤと自分のキャリアについて悩んでいました。
そして周りを見ると、同じく駐在帯同中、帯同後に自身のキャリアについて悩んでいる女性が多いことに気が付きました。また駐在経験についてざっくばらんに語る場所がない。
そんな人が集まって頼れる場所、キャリアについて話せる場所があればよいのではと考えるようになりました。
これを三好にシェアしたところ、三好自身も「働きたいのに働けない女性がいることが勿体ない」と感じていて。そこで、LAXICでその場を作ってみたら?とのアドバイスを受け、駐在妻のキャリア支援をするプロジェクトの立ち上げを決めました。

——薫さんの想いを、三好さんがカタチにして実現の方法を考えてくれる!

(鎌田)その通りです、最高のパートナーだと思っています。
そして、Himemama世界戦略チーフとして世界各国のコミュニティ立ち上げで広がった人脈も大切にしたい。
そこでこのLAXICとHimemama二つの母体を背景にして、2018年6月にCAREER MARKの前身である、『駐妻キャリア支援プロジェクト』が始動したんです!
その後、2020年4月に事業体としてCAREER MARKとして活動を開始して今に至ります。

 

「余白」をもつ ~駐在帯同後の考え方と働き方の変化~

 

——駐在帯同後に新たに仕事を始めて、帯同前の働き方や考え方と変わったことはありますか?

(鎌田)帯同中に現地の働くママさんにも多く出会い、話を聞きました。
すると外務省勤務などいわゆるハイキャリアな人たちも、日本でイメージしていたよりもずっと余裕のある働き方をしていたんです。育休明けは、週3時短で復帰など。
ジョブ型で自分の役割をこなしているので、家族の時間も大切にしている。
そこに食いつく私をみて、「一体今までどんな働き方をしてきたの??」と言われるくらい(笑)
日本で働いているときには、“バリキャリ”と呼ばれることに嬉しさをもっていたのですが、今はもう少し“余白”を大切にしてもよいのではと思うようになりました。まだまだ模索中ですが。

——実際のいまの働き方についても伺えますか?

(鎌田)自分のスキルや当たり前が、人とは全然違う。今までの経験が違うから、それを融合させていくと学び、+が多いということに気が付きました。
私自身、前職では苦手なことであっても管理職なんだからなんでもやる、なんでもできるべき、と必死にジェネラリストとして働いていました。
けれど今は、完璧じゃなくていい。自分が得意でやれることをやればいいと考えています。
多種多様な仲間がいて、得意なことを割り振る。みんながそれぞれ得意なことを知ってそこに集中すると、時間が少なくても仕事のクオリティが高くなって、結果ハイパフォーマンスになる。

——なるほど、幼稚園ママで実働時間が10-13時という薫さんの働きの秘密はそこにあったんですね!

(鎌田)そうですね。
この働き方ができるようになるまでに段階はあったけど、得意でないことを引き受けることで仕事が滞ってしまって(笑)できないと認めたことによって得意な人がフォローしてくれるようになりました。周りに本当に恵まれています。自分を優秀にみせようとせず、等身大でいることが大事だと思っています、そうするとミスをしても、素直に謝ることも出来るんですよね。

―ありがとうございます。人材を大切にして信頼関係があるからこそですね。CAREER MARKの『それぞれのチカラを発揮して』という理念にもつながります。

 

「自分にあったキャリアを探す手伝いを」~CAREER MARKで実現したいこと~

 

——それでは、今後CAREER MARKで考えていることなどを教えてください。

(鎌田)CAREER MARKという名前には、駐在帯同期間中、どのタイミングでも迷ってしまったときに立ち寄ってもらえる目印でいたい、という思いが込められています。世界の駐在妻と社会、企業をつなぐ存在としてこれからも企業とのコラボ企画、企業と駐在妻のマッチングをしていきたいです。
わたしは、『誰もが人生の主役』だと思っています。どんなキャリアを歩んでいくかも一人一人の選択があってもいい。自分の強み、ワクワクすることをみつけて充実した人生を送ってほしい。その選択肢となるような情報や経験のシェアをしていって、誰もが自分にあったキャリアを選択できるお手伝いをしていきたいです。

 

「楽しそうに物事をつくっているところを見せたい」~子供への向き合い方~

 

——最後に少しプライベートについてもお聞きしたいです。
忙しい毎日だと思いますが、2人のお子さんたちとはどのように向き合っていますか?

(鎌田)私の父も、40代で企業を辞めたあとに会社を立ち上げたのですが、幼い頃からよく私相手にも仕事の話をしてくれました。世の中の課題、その為にやりたいことを私に対して語ってくれて、数年後にその夢を実現させる姿を見てきました。
その姿をみて、働くことへのいいイメージをずっと持っていたんです。子供にもそう思ってほしい。
5歳の息子も、「ママはお喋りをするお仕事なんだね。楽しそう、僕もそうしたいな~」と言っています。アイディア出し担当なので、ずっと喋っているんですね(笑)

——素敵なお父様ですね!働くって楽しいんだよというポジティブな姿勢を見せること、私もぜひ真似したいです。

 

『しなやかに生きる』

 

——最後に、座右の銘を教えてください!

(鎌田)『しなやかに生きる』です。
自分の軸はありながら、視野は広く持ちたいです。
そしてときに流されることがあっても、根っこはしっかり張っている人間でありたいと思います!

——お話頂きまして、ありがとうございました。

 

後記

 

今回お話を聞いて見えてきたのが、まさに『しなやかに生きる』姿でした。
自分が築いて大切にしてきたキャリアがあったけれど、そこに固執することなく、人との出会いやひとつひとつの機会、落ち込んだ経験も全て糧にして、次のステージへ進んでいく薫さん。
自身で悩んだ経験があるからこそ、出会えた一生ものの仕事。
ライフステージが変わるごとに、自分のキャリアに悩む際、
多くの女性にとって共感できるポイントがあり、考え方の転換についてヒントがもらえるお話でした!


CAREER MARKでは様々なキャリアの実現を目指して部活動を行っています。
そんな部活のひとつであるレポート部の戸田岸舞さんも以前CAREER MARKについてレポートしてくれていますので、もっと知りたいという方はこちらの記事もご覧ください。
【Interview / Vol.1】鎌田薫さん 〜駐妻キャリア支援 CAREER MARK 共同代表~|CAREER MARKリポート部|note


次回は、もう1人の共同代表である、株式会社ノヴィータ代表取締役/CAREER MARK共同代表である三好怜子にお話を伺います。

文:CAREER MARKインターン1期 高橋啓子

 

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運営スタッフインタビュー vol.2 三好怜子

CAREER MARKのことをもっと知りたい!どんな背景で、どんな人がやっているの?というインターンの疑問から始まった、インターンによる運営スタッフインタビュー(vol.1鎌田薫はこちら)。第二弾は、同じく共同代表の三好怜子にお話を伺いました。
30代で株式会社ノヴィータの代表取締役に就いた三好さん。起業ではなく、従業員からの就任とのことですが、どのような背景があったのか。また、CAREER MARKが目指す場所はどこなのか、この機会にじっくりお話を伺いたいと思います。

【三好怜子 プロフィール】※インタビュー時点
大学時代から、ノヴィータの前身となる会社でインターンとして活動。2006年、ノヴィータ設立時に立ち上げメンバーとして参画。一貫してWEBディレクターとしてWEB制作の企画営業・進行/品質管理を担当。2010年3月に取締役に就任し、経営者として現場と経営の意思疎通をはかりながら、業績向上、および社員の労働環境向上に従事。
2015年2月に代表取締役就任。同年8月に、ワーママ&パパ向けWEBメディア「LAXIC(ラシク)」を立ち上げる。代表取締役就任10ヶ月後に出産し、自身も育児と仕事の両立を図る日々。CAREER MARKでは共同代表として、主に意思決定、求人企業との折衝役を務める。


(インターン、以下略)
——実は三好さんはインターンにとって謎の人物なんですよね。日々の活動で直接関わることも少ないので、どんな方なのか、お話を伺えるのをとても楽しみにしてきました。

(三好怜子、以下略)
ははは。何でも聞いてくださいね!

 

30代で社長就任。ただ、社長=偉いではない

 

——ありがとうございます。では率直に、「30代で社長就任」ってちょっと想像がつかないんですが、どんな背景があったのでしょうか?

大学在学時頃から経営に興味はあったんです。当時は親に出せなかった手紙に社長になりたいと書いていたし、学生時代にインターンや取材で関わった複数の会社の社長が、自分で様々なことを決断し、イキイキと仕事をするのを目の当たりにして憧れも感じていました。
ただ、もちろんいきなり社長になったわけではなく。もともと20代に営業をしていた時、自分が言っても納得してくれないお客さんに、同じことを当時の社長(現会長)が言うと、内容は変わらないのに納得してもらえるということがあったんです。それで、自分にも肩書が欲しいと思って、まずは役員にしてもらったんです。当時は数人の会社だったから、それもできたのだと思いますね。
で、役員になってみたら、社員から「役員になったんだから何かしてくれるんじゃないの」という期待が出てきたんです。そこで、中間管理職として、社員と会社・役員の懸け橋的な仕事をするようになりました。社員が安心して働けるように、社会保障などの環境整備も行いました。その後、なぜか顧客から「社長になるんでしょう?」と言われたりすることがあり、自分の中でも覚悟を決めて、社長になったという流れですね。


——社長として、社員の生活を背負う重責はどう感じているのでしょうか

ある程度の責任や緊張感がある仕事が自分には向いていると思うので、そこまで負担には感じていないです。そもそも、社長だから偉いとか、全部できないといけないという思いは無いんです。私が苦手なことをものすごく上手に進めてくれる社員ももちろんいるし。
少し前にストレングスファインダーを受けてみたんですが、私の強みの一つが「個別化」だったんです。いわゆる個の最適化ですね。個人個人の能力を適材適所で発揮することができるように采配するのが、自分の力の見せ所だと思っています。

 

社長就任3カ月での妊娠と、新規事業LAXICの立ち上げ

 

——すごく自然体で社長業を受け止めていらっしゃるんですね。CAREER MARKの母体のウェブメディアLAXICも、その頃に始めたと聞きました。

社長に就任して3カ月後に妊娠が発覚しました。自分でもこのタイミングか!という思いもありましたが、妊娠を望んでいたこともあり素直に受け止めて、育休は無理かもしれないけど産休は取ることにしました。
休みを取るための引継ぎにより現場業務が手を離れたこともあり、数年前から現会長も取り組み始めていた新規事業に取り組みはじめようと思うようになりました。
ちょうどその頃、同僚や協力会社さんなどにワーママが増えてきていて、彼女たちの時間の使い方に感銘を受けつつも、仕事を続けられない方も多く、もったいないな~と感じていました。
そこで、「優秀なママさんが時間的制約があっても仕事をできる状態」を作りたいと思い、時間制約のある人も対象にした人材紹介をプロジェクトとしてスタートしました。ただ、人材紹介はこれまであまり力を入れてこなかった分野だったので、まずは時間制約のあるママでも成果を出しながら働いていることを認知してもらうことが必要だと思い、また、自分自身も先輩たちの両立の術を知りたいと思い、ロールモデルを紹介するワーママ・ワーパパ向けのサイトを立ち上げようということになりました。それがLAXICなんです。


——LAXICにはご自身の経験と、周りのママさんの想いが詰まっているんですね。

そうなんです。そうやって3年ほど、出産後の働き方を模索しているママ達を見たり、社内にも子育てをしながら働く女性が増えてきたタイミングが、ちょうど旧友の鎌田(鎌田薫)が駐在帯同を経て帰国、次の仕事を探している時だったんです。
鎌田の、「働きたいけど幼稚園ママでは希望するような仕事がない。産前は完全バリキャリだった自分が、幼稚園児がいるだけで社会的価値が下がってしまうのか」という悩みを聞いた時、帯同帰国後のママと、産後ママの課題感にリンクするものを感じました。
一人の母親として、経営者として、鎌田のような、帰国後に自分の居場所を模索している人に活躍の場を提供したい気持ちが芽生え、まずは彼女に「幼稚園ママでもできるところを見せてくれ」とLAXIC編集長を打診しました。その後、鎌田がパラレルワークで関わっていたHimemamaとLAXICを掛け合わせる形で、CAREER MARKというプロジェクトの立ち上げと続いたんです。

 

ママは時間じゃない価値を提供してくれる。だから企業も、時間じゃない価値でママを見ないといけない。

 

——企業経営者として、母親業をしている女性の働き方を見てどう感じていますか

強く思うのが、「会社に理解者がいるかいないかで、その人が働き続けられるかどうかが変わってしまう」ということ。私自身、子連れ出勤など前例のないことをしながらでも働き続けてこられたのは、それを許容してくれる組織だったから。組織の理解力の必要性を身をもって経験している経営者として、ママなど時間的制約がある人にも、活躍の場を提供することにコミットしていくことが自分の役割だと考えています。
常に、子育てに家事に仕事にというマルチタスクを抱え、かつ時間制約を抱えたママたちは、決められた時間内でどれだけの成果を出すかという意識がものすごく高い。この「時間じゃない価値を提供してくれる」ことが彼女たちの最大の強みだと思いますね。だから企業側も、彼女たちを時間じゃない価値で見ないといけない。それを他の企業にも伝えていきたいです。

子連れ出勤

「得意を活かす」~CAREER MARKを支えるメンバー~

——現在のCAREER MARK運営スタッフは5人いらっしゃいますが、メンバーはどうやって募ったのでしょうか。

鎌田も私もアイデア系の人間なので、想いを形に落としこんでくれる仲間が必要でした。
現在実際にキャリアセミナーなどのコンテンツを企画運営しているキャリアコンサルタントは小橋と林の2名です。
小橋は私の大学時代からの知り合いで、CAREER MARK立ち上げ当時、LAXICでキャリアについてのコラムを執筆していました。自身のアイデンティティクライシスの経験も踏まえて、相談者の悩みに寄り添ってくれる人だなと常々思っていて、キャリアの事業をやるなら必須な人とお声がけしました。
林は鎌田とのロンドン帯同繋がりです。Himemama Londonでキャリアセミナーやキャリアカウンセリングを開催していて、そのカウンセリングを通じて自分の強みを自覚した上で本帰国した人が、再就職活動から魅力的な将来を築いてたこともあり、プロジェクト立ち上げに伴い運営メンバーとしてお誘いし、最初はロンドンから参加してもらっていました。
企画運営のマネジメントや、海外との契約を担当しているのが松浦です。実は彼女は私の中高の同級生なんです。新卒で外資系企業で働いた後、育休中に欧州に駐在帯同し、7年半の帯同中に退職。帰国後はケーキ屋さんに勤めていました。それが、CAREER MARKの事業を相談してみたら、言われていないことも調べてきちっと用意してくる。素晴らしい人材だと思い、うちの会長に話しをしたところ即採用に。会長が行っている多種多様な新規事業のプロジェクト管理をお願いすることになりました。
こんなふうに何をするか具体的な事業内容は決まっていないなかで、しかもまさか仕事を一緒にすると思ってもいなかった仲間たちと、駐在妻のキャリア支援という共感ポイントをベースに、それやりたい!と立ち上がってできたのがCAREER MARKなんです。でも蓋を開けてみたら、それぞれの得意がとがっていて、かつ互いを尊重していて、非常にいい組織ができたと感じています。

 

企業が求める人材像にピッタリ当てはまるのが帯同経験者

 

——皆さん、三好さん、鎌田さんの人脈を介して集まったメンバーなんですね!それにしても松浦さんの、帯同を経てケーキ屋さんから秘書に転身というのは、印象的ですね。

松浦のような人材がまさに、CAREER MARKがサポートしたいと考えている層です。能力はあるのに、子育てのために働ける時間が限られている、数年帯同していた、または地方在住、という目に見えやすい条件、職歴書に書いてあることだけで、選択肢が提示されない。大きな社会課題だと感じています。
今、企業が求めるスキルのうち、8割程度は持っているのが駐妻だと思います。いくつか例にあげれば、
・基本的社会人スキル
・外的変化を受け入れる力
・自分でやり方を探してトライする力
などですね。
求めるスキルを8割も持っている人材を探すなんてかなり困難なことなのに、駐在妻にはこんな方が沢山いるんです。この駐在妻の持つ価値を世の中に伝えていくことで、多くの方に活躍の場がひらけると思っています。

 

オンラインワークでさらに発揮される駐妻の価値

 

——今、リモートワークが主流になってきている中で、駐妻が帯同前の仕事を継続する、または新規にフルオンラインで就業する流れも出てきているのでしょうか?

あると思いますね。駐在妻でも、例えば業務委託といった形で一部の仕事を続けることはできる時代になってきたと思います。うちのようなウェブ関連の企業や、あとは中小の企業だとフットワークが軽いので始めやすいというのはあるかもしれないですね。


——業務委託のような仕事というと、ウェブ系などのスキルが明確な仕事をイメージしがちですが、例えばバックオフィス的な仕事でもできるんでしょうか?

そうですね、できると思いますよ。バックオフィスやプロジェクトマネジメントの仕事って、マルチタスクを日々こなしているママさんにはピッタリの仕事だし、オンラインでできることもたくさんあると思います。
ただ、今自分がやっている業務を分解して、帯同中であればどのような仕事ができるのかを新たに自身で見つけていかないといけない。それは企業側もそうですね。誰がやるのかという課題もありますが、経営コンサル的なこともうちはやっているので、支援できることもあると考えています。
帯同者にとっても、渡航先で仕事をしなかったとしても、帯同前からそうやって仕事の分解をしておくことで、帰国後に再就職する際、分解した内容を新たに組み合わせて以前と違った仕事に就くこともできます。

駐在妻の価値を受け入れてもらえるような仕組みづくりも必要

 

——では、CAREER MARKの今後の展望、目標があれば教えてください

CAREER MARKはプロジェクトから始まって今年3年目。勝負の時になると思っています。もっともっと駐在妻の魅力を世の中に知ってもらえるように働きかけていきたいし、受け入れてもらえる素地がまだないのであれば、受け入れて価値を感じてもらえるような、仕組み作りからお手伝いしていきたいですね。
自身のやりたいを叶える場所を探している人と、企業のマッチングという視点では、転勤妻にも同様の課題・可能性があると考えています。地方との取り組みも始めているので、そこも絡めながら広げていきたいなと思っています。

 

恵まれた環境にいるからこそ、会社にも家庭にも感謝し、還元したい

 

——プライベートについてもお話を聞かせてください。5歳のお子さんがいるということですが、どのようなスタンスで子育てや家庭とのやりくりをしているのでしょうか?

そうですねー。。まず、私はやっぱり仕事が好きなんです。仕事をしていない自分を想像できない。夫も、その姿勢、私が仕事を楽しんでいることを魅力と捉えてくれているんです。前に冗談で、「私が娘と一緒にいたいから仕事を辞めるって言ったらどうする?」と聞いたら、「離婚する」と言ったんです!(笑)その分、彼も私以上に家事育児をしてくれていますし、家事サポートや家族のヘルプもあって成り立っている状況ですね。こんな恵まれた状況だからこそ、私は仕事で、会社にも家族にも還元しないといけないという責任感も感じています。
ただ一つだけ決めていることがあって、「娘の健康を脅かすことがあれば仕事を止める」というのはあります。健康でいてくれている娘を含む多くの方の協力があって、今の状況があるのだと感謝しています。

 

寝て食べていたら大丈夫。明日は明日の風が吹く

 

——最後に、座右の銘を教えてください

「寝て食べていたら大丈夫。明日は明日の風が吹く」
頑張ってもどうにかならないこともあるけど、最終的には切り替えるしかない。昔はもう少し引きずるタイプだったんですが、こんなふうに考えられるようになったのも、切り替えが早い夫の影響かもしれないですね。

 

後記

 

鎌田、三好とお話を聞いて共通して感じたのは、「多様な働き方を受け入れたい。広めたい」という強い想いです。幼稚園ママで働ける時間に制約があっても、働きたいならその場を提供したいし、提供してもらえるように自己PRのお手伝いをしたい。その想いを具現化させたものがCAREER MARKが行う種々のセミナーなんだと改めて実感しました。
お二人とも忙しい中でどんどん仕事を回しているのですが、強い想いがあるからこそ、忙しくても頑張れるのだろうなと思いました。


次回の運営スタッフインタビューは、CAREER MARKのキャリアコンサルタント、小橋友美にお話を伺います。

 

文:CAREER MARKインターン1期 蔀佳恵

 

-毎月イベントを開催しています!

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運営スタッフインタビュー vol.3 小橋友美

CAREER MARK運営スタッフインタビューも3回目を迎えました!(1回目2回目の記事はこちら)

今回は、CAREER MARKでキャリアコンサルタントとして、セミナー企画・運営を行う小橋友美にお話をお伺いしました!

【小橋友美 プロフィール】※インタビュー時
・国家資格キャリアコンサルタント
・米国CCE,Inc認定 GCDF-Japanキャリアカウンセラー
信託銀行に10年勤務、採用業務などに従事。出産後、「仕事と家庭の両立」「アイデンティティ喪失感」「描けないキャリア展望」に悩んだ自身の経験も活かし、ライフスタイルの転換期のキャリアデザインをサポート。特に、出産や育児、配偶者の転勤によって退職した女性に向けたキャリアコンサルティングを専門分野としている。ママ向けキャリアセミナーを多数開催。WEBメディア「LAXIC」でコラム執筆中。
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LAXICでも執筆活動をされている小橋、真摯に問題と向き合い、キャリアに悩む女性に寄り添ってくれます。
「私」はどこに行ったの? ママたちのアイデンティティ・クライシス | laxic

——2021年4月には、シンガポール駐在帯同を予定している小橋さん。今回はCAREER MARK参画までと実際のお仕事のお話に加えて、今後についてもお伺い出来ればと思います!

(小橋)はい、よろしくお願いします。

 

「自分と同じように悩む女性を支えたい」~キャリアコンサルタントへの転身~


——キャリアコンサルタントになる前は、金融機関でお仕事されていたと伺いました。

(小橋)そうです。目標もあって頑張っていたのですが、なかなか仕事が自分のものに出来ないことが苦しく、さらに組織再編で心が疲弊してきたのを感じ本格的にダウンする前にと退職を決めたのです。でもその後暫く仕事を再開できませんでした。
そのときに、深く悩み、内省の時間を過ごしたのですが、今思えばこれはトランジション*の経験でした。この期間に「自分」というものと深く向き合いました。

その後、前職で人事部で採用の仕事をしたことがとても楽しかったことや強みを発揮できたことを思い出し、やはり「働く」ことに関わる仕事をしよう、とキャリアコンサルタントの資格を取りました。自分がトランジションを経験し、これを乗り越えるには周りに助けを求める必要があると感じましたし、だからこそ自分と同じ経験をする人の手助けをしたいと思っています。

それからキャリアコンサルタントとして実際に働き始め、やり甲斐を感じていたのですが、その後出産したため、仕事は中断しました。子どもを産んでからの孤独と人生観の変化は、まさに私が「アイデンティティ・クライシス」と名付けたとおりです。(詳細はLAXICの記事にて)
そしてたくさんのママ友と出会うなかで、キャリアについてもやもやするママたちの多さに気づきました。そして「ママのキャリア」という専門性でキャリアコンサルタントとして活動したい、と考えたのです。ほぼ同時期にCAREER MARKの活動を始めました。

——ご自身の経験から、キャリアコンサルタントの必要性を感じて転身を決意されたんですね。その経験があるからこそ、友美さんの言葉が優しく、寄り添ってくれるなと感じます。

(小橋)ありがとうございます。実は出産後のアイデンティティ・クライシスに面したときに、もう一度トランジションを経験しているのですが、自分の状態を客観的に把握できていたので、比較的すんなりと前に進むことが出来ました。なので、今何かの変換期にいてモヤモヤしている方がいましたらぜひ知って欲しい考え方です。

※トランジションとは※
人生の切り替わりの時の意識変容の過程。内面の変化によって当初は混乱するが、「離脱」「アイデンティティ喪失感」「覚醒」などの感覚を経て新しい価値観とともに再生していく。米国のウィリアム・ブリッジズ博士によって提唱された。

 

「駐在妻とアイデンティティ・クライシス問題」~帰国後セミナーが出来るまで~


——キャリアコンサルタントとして、CAREER MARKではセミナーを企画運営されています。CAREER MARKのメインセミナーにもなっている帰国後セミナーですが、どのように立ち上がったのでしょうか。

(小橋)実は最初の提案では、私は駐在妻経験者ではないので、駐在妻の悩みの核心がどこにあるのか把握できていなくて。なんと最初は「キラキラ生活はもう終わりです!」なんて、いわゆる世間のイメージを押し付けてしまったものを運営スタッフに提案しました。

——それは今のセミナーの形とは確かに違いますね(笑)どういう反応でしたか?

(小橋)駐妻経験者でもあるスタッフ達から、「うーーーーん」という表情をされてしまい、あっこれは違うのかもと。そこで実際によく話を聞いてみたところ、これは自分の役割・価値に悩む女性たちの「アイデンティティ・クライシス」の問題なんだと気が付きました。自分が経験した同じ悩みを抱えているのだということを知りました。
そこから、パイロット版としての0期のセミナーが生まれたんです。

——そうだったんですね!私自身も駐在帯同生活で、家事や子育てが中心となり、外に出ても今までのようにはいかない海外、自分の価値が見えなくなって生活に鬱々としました。それは「アイデンティティ・クライシス」だったんですね。0期で実際にセミナーを受けてもらっていかがでしたか?

(小橋)自身の内面の変化を掘り下げる内容はそれなりに評価していただけました。ただ、参加してくださった方からのアンケートで、「実際に働くにはどうしたらいいの?」という声がすごく多かったんです。皆さんの声を聞いて、「働きたい」の気持ちを感じましたし、もっと「仕事」に繋がる実践的なものが求められていると知りました。
そこでつい、帯同経験は置いておいて、前職や本人の資質を探って「適職探し」のワークをすれば満足してもらえるのかと思いかけたんです。でも、その頃に駐在帯同先のロンドンから活動に加わることになったもう一人のキャリアコンサルタントの林が、「それは違う!」と。駐在期間の経験を無視したら、絶対ダメだと。
駐在妻って、実はすごいスキルを帯同中に獲得しているんですよ。
異文化でゼロから生活を立ち上げてきた「問題解決能力」「柔軟性」。そしてこれまで積み上げてきたものをいったん捨てて新しい環境に馴染める「アンラーニング・スキル」。
実はどれも、VUCAと呼ばれる変化の大きいこの時代に必要とされているビジネススキルです。
これを仕事に活かさないのは本当にもったいない!
それに、駐在妻はこんなにすごいスキルを持っているんだってことを企業にもわかってもらいたいんです。
だから、前職のこと、駐在帯同生活のこと、それを経ての自身の強みを洗い出して、次のキャリアにつながる「職務経歴書を作る」という今の形になりました。

——なるほど!転職を考えるとき、帯同時期はキャリアのブランク期間になると考えてしまいがちですよね。帯同期間の経験も大切にしてくれているところに、CAREER MARKならではの特徴があるなと感じます。


「ライフキャリア・レインボーとCAREER MARKのロゴに込められた思い」
~「キャリア=仕事だけ」は卒業しよう~

 

(小橋)「駐在帯同で私のキャリアは終わった」と考える方が多いのですが、本当のキャリア、つまりライフキャリアは一生終わることはなく、仕事を離れていても専業主婦でいても続いているものです。CAREER MARKの活動の根底には、この「ライフキャリア・レインボー」の考え方があります。

ライフキャリア・レインボー

「100年人生の時代、もうキャリアに“成功”は必要ない」中村天江, JBpress 2017年より引用(Super, D.E.,et al.“Life Roles, Values, and Careers: International Findings of the Work Importance Study"を参考に作成)

 

私たちCAREER MARKの運営メンバーは、それぞれが別の仕事を持っており、家庭もあります。時間のすべてをCAREER MARKに費やせるわけではないのですが、だからこそ、これ以外のところで得たものを活動に還元することができています。
立ち上げ時からそうした良い循環を経験しているので、運営メンバーにとってもライフキャリア・レインボーは大事な考え方です。
駐在妻のみなさんにも、「キャリア=仕事だけ」という考え方を卒業し、「キャリア=母・妻・社会人などいろんな役割の組み合わせ」という視点で新しい自分の可能性を見つけてほしいと思います。そして「ライフキャリアを豊かにしたい!」という希望が湧いてくるようなサポートがしたいと思っています。 私たちのロゴの「虹色のC」の組み合わせにこうした思いを込めました。 CAREER MARKの「CAREER」は、まさにこのライフキャリアのことです。

——キャリアというと、「=仕事」私もそう思っていました。ライフキャリアと捉えると「ブランク期間」となるものはないんですね。帯同期間中も自分のキャリアは続いているし、だからこそその中で得ている経験や、獲得する能力があるというイメージでしょうか。そう思うと自分の心持ちが変わります。

 

「色んな役割を持った全てを含めて私」~シンガポールでの新生活と今後の目標~


——2021年春には、シンガポールの駐在帯同をされるとのこと。(インタビューは渡航直前に行いました。)CAREER MARKのお仕事をされつつ、向こうではどのような生活になるのでしょうか。

(小橋)会いたい人が沢山いますし、温めている計画も色々あります。
最近Twitterを始めたんですが、駐在している会社員や企業人事の方からも結構反応をもらうんです!意見交換するうちに「駐在妻が再就職しにくい現状の解決は、駐在妻以外の人の役に立つことにもなるのかも」って気づいたんです。

これから私たちは65歳を超えても働くことになりますよね。育児や病気や介護で休職したり会社を辞めたりすることは普通のことになるはずです。
会社を辞めたから、仕事を離れたからってキャリアが終わるなんてことはない。「休職・退職ありき」のキャリア構築を働く側も雇う側も考えていかないといけないなと。
そのために、例えば駐在妻にはどんなサポートが必要なのか?ということを自分の帯同経験を重ねながら考えていきたいですね。
そしてたくさんの方の知恵を借りながら、それをより多くの人のキャリア支援にも活かしていきたいです。

これは私のライフワークだなって感じています。ビザの関係で現地で働けないからこそ、自分がやりたいことをボランティアなどの形でチャレンジしていきたいと思ってます。
先ほどの「ライフキャリア・レインボー」の話になるのですが、虹は境目がはっきり分かれている訳ではないですよね。私は色んな役割を持っている全てを含めて私なので、シンガポールでも自分のライフワーク、そしてCAREER MARKのこと、と明確に分けずに色々取り組もうと思っています。また駐在帯同でシンガポールに行くこともそうですし、家族・子供にかける時間も自分には大切な一部です。この働き方が出来るのは、自分の考えを認めて受け入れてくれているCAREER MARKの仲間に恵まれているからです。
あとは、発信をしたい!noteを始めようかなと実は思っています。

——企業側からも反応があるのは嬉しいですね!駐在帯同に育児や介護、病気も、女性男性関係なく全ての人に起こりうることですよね。または就職後に学び直しの期間があったりしてもいい、「休職・退職ありき」のキャリア構築が浸透して欲しいです!note楽しみにしています!

 

「優しいだけじゃ人は救えない、知識を身につけて」


——では、大切にしている言葉などがあれば教えていただけますか?

(小橋)漫画「ワンピース」の一節になるのですが、Dr.くれはというキャラクターが言ったセリフです。
「優しいだけじゃ人は救えない。人を救いたければそれなりの知識と医術を身に付けな!」

というものです。
コンサルタントとして皆さんの悩みに向き合いますが、根拠のない励ましはしないよう、理論に基づいて考え、技術を持ってしっかり伝えたいと思っています。

 

——ありがとうございました!

 

後記

 

人に共感し寄り添いながらも、「知識がないとそれは本当に届く言葉にならないかもしれない」と、しっかりとした理論に基づいた真摯な言葉は、小橋の書く文章からも伝わってきます。

そしてライフキャリア・レインボーの話は、私の固定観念を変えてくれる考え方でした。
人には様々な役割があり、ライフステージにもそれぞれ段階があります。
小橋も東京で確立した生活がありましたが、駐在帯同を決意し、まだ小さいお子さんに寄り添う生活を大切にしつつ、ライフワークというキャリアコンサルタントの仕事も新天地で発展させていくとのこと。
お話を聞いて見えてきたのは、大切なものなら何かを犠牲にするのではなく、全部持ち続ける。でもその時の自分にフィットする形で、柔軟に変化していく、そんなしなやかで意志の強い女性の姿でした。
私も現在イギリスにて駐在帯同中、当初は「帰国後の仕事=キャリア」を考えがちでしたが、CAREER MARKでの活動を通して、「人生を通してのキャリア=ライフキャリア」という考え方でもっと広く今後のことを考えるようになりました。そして広く皆さんに知って頂きたい考え方だと思います。

次回は、ロンドン駐在帯同中にCAREER MARKに加わり、同じくキャリアコンサルタントとして様々なセミナーを企画運営されている、林眞帆にお話を伺います!

文:CAREER MARKインターン1期 高橋啓子

 

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運営スタッフインタビュー vol.4 林眞帆



CAREER MARK運営スタッフインタビューも4回目を迎えました。
Vol. 1 鎌田薫はこちら
Vol. 2 三好怜子はこちら
Vol. 3 小橋友美はこちら

今回のスタッフインタビューは、第3回目のスタッフインタビューに登場して下さった小橋と共にCAREER MARKでキャリアコンサルタントとして、セミナー企画・運営を行っている、林眞帆です。

林は、2019年に本帰国したのち、フルタイムで働きつつ、CAREER MARKの活動にも参加しています。勤務時間後の遅い時間にも関わらず、「この日を楽しみにしていました!」という、嬉しいコメントからインタビューが始まりました。

【林眞帆 プロフィール】※インタビュー時
国家資格キャリアコンサルタント
・米国CCE,Inc認定 GCDF-Japanキャリアカウンセラー
認定プロフェッショナルコーチ
Mentor For 公式キャリアメンター
IT企業にて10年以上、人材育成に携わる。2014年に夫がイギリスに駐在、1年後に渡英とともに退職。ロンドンにて、キャリアのワークショップやキャリアカフェを多数開催、またコーチングなどの活動を通して、女性のキャリア支援を行う。駐在帯同中より、CAREER MARKに参画。2019年本帰国。帰国直前からの転職活動を経て、再び企業にて採用や人材育成に携わっている。


(林眞帆、以下林)
普段はインターンの皆さんと接点がないので、今日のインタビューでお話しするのを楽しみにしていました。

(インターン、以下略)
——そう言って頂けて嬉しいです。どうぞよろしくお願いします。

 

キャリアコンサルタントの資格って?

 

——早速ですが、ブログ読者の皆さん、そして眞帆さんのキャリアカウンセリングを受ける方々がきっと知りたいのは、眞帆さんの持っている資格が、どういったもので実際にどのようにそれを取得したか、だと思うのですが、詳しく教えて頂けますか?
(林)大学卒業後、当時氷河期と呼ばれた就職難の末にIT企業にSEで入社しました。でも、入社早々にSEという仕事が向いていないことを悟り、自分探しを始めました。後輩が入社するにしたがい社員育成という仕事に興味を持つようになり、上司に育成をやりたいと伝えていました。

3年目に自分が担当したシステムを、利用者の皆さんへ教える研修の仕事を会社が受注し、業務立ち上げから携わる機会に恵まれました。4年ほどこの研修業務をしていたのですが、就職先がIT企業でしたので、SEに囲まれた中での研修業務の先が見えてしまい1回目の転職活動を始めました。

人材育成関連の仕事を探している中で、キャリアコンサルタントの資格を知り、中でもアメリカのCCE,Inc認定のGCDF-Japanキャリアカウンセラーに興味を抱き受講しました。

——仕事をしながらの受講だったんですか?
(林)はい。週末を使って3カ月間ほどかけて学校に通い資格を取りました。まさに自分が学びたいことだったのでとても楽しかったです。会社のコーポレート部門の育成関連のポストに空きが出たので、結局転職はしなかったのですが、新入社員との面談や社員とのコミュニケーションに、この研修で学んだことがとても役に立ちました。

——他の2つの資格は、そのあとに受講されたのでしょうか?
(林)実はGCDFの資格は取得しておしまいではなくて、3年で45時間の研修が義務付けられています。就労中は育成関連に割いていた業務時間の一部をこの研修時間にカウント出来たのですが、夫の駐在で離職するにあたり、渡航する前にこの研修時間を少しでも満たそうと「ドリームマップファシリテーター育成講座」を受講しました。

——資格取得だけではなく、継続して知識や経験を積みかさねたんですね。
(林)そうなんです。実は、このドリームマップ創始者の方が、毎年ドイツの日本人学校に講演しに来るという情報を得て、当時私が滞在していたイギリスにも寄ってもらうようにお願いしたんです。その方がイギリスにいらした際に、オンラインでコーチング講座を開設する予定だと話されて、受講を勧められたのが、次の資格「認定プロフェッショナルコーチ」につながっていきます。この資格は、講座以外に100人にそれぞれ30分ずつコーチングをするカリキュラムが組まれていました。この受講を通して世界中にコーチングの仲間ができました。

——もう一つの資格Mentor For ウィメンズキャリアメンターはどのように取得されたのですか?
(林)帯同中から知っていた資格ですが、コーチングには限界を感じていたこと、また駐在妻にはメンターが必要だと思ったこと、さらに帰国後に仕事を始めて改めて日本の企業内においても女性のメンターの存在は必要だと思ったことから、管理職で働いていたこともあり、受講を決めました。土日の講座を受講しました。

 

帯同を決心!ワークショップ開催まで

 

——話が少し戻りますが、帯同を決心されたとこのことを教えてください。

(林)2回目の育休中に夫が最初は研修生として単身渡英し、その間の1年間は1歳と4歳の子供と共に日本に残り、ワンオペをしました。1年後に夫の研修が駐在に切り替わり、私は仕事を辞めて帯同することにしました。社員の育成に関われる業務が出来ていた最中だったので迷いましたが、帯同した方が人間として大きく成長できると思えたので決心しました。

1年間のワンオペをしながら自分の身の振り方、キャリア等をじっくり考えて、結論を出す時間を持てたのは良かったと思います。自分で納得して、自分で行くと決めました。

でも、イギリスでの生活が落ち着いてきてくると、落ち込む時期がありました。英語を学んだりしていてもモヤモヤが晴れないというか・・・。私は何がしたいんだろう?何ができるだろう?ってずっと考えていたんです。その時に友人から「眞帆さんは今アウトプットしたいんだね」っていう言葉をかけてもらって妙に納得したんです。この言葉に背中を押されてイギリスでの一歩を踏み出せました。

——ワークショップのことでしょうか?
(林)はい。現在はCAREER MARK共同代表している鎌田薫さんと、当時ロンドンでコミュニティ活動を一緒にしていました。そのコミュニティのメンバーから、「海外では日本の大手企業のようにキャリア研修なんてやらないから、是非やって欲しい」と依頼されたんです。人が集まるか心配だったのですが、蓋を開けてみたら大盛況で。駐在妻の皆さんも実はキャリアを考えて、モヤモヤしているのだと改めて思いました。当時用意したワークショップのプログラムは、現在CAREER MARKで行っている帯同前セミナー、帰国後セミナーに活かされています。

 

日本に帰国して

 

——本帰国が決まった際の気持ちはどうでしたか?どのように再就職活動をしましたか?
(林)薫さんが先に帰国して、CAREER MARKを立ち上げていました。私もメンバーに入っていたので、本帰国が決まった際に真っ先に思ったのが、この活動を続けていきたいということでした。というのも、帯同中のワークショップで駐在妻の皆さんに「帰国後も絶対に大丈夫!」と励ましながら、実際に帰国した後のサポートができていなかったのがずっと引っかかっていたんです。やるならば、帰国後までちゃんとサポートしたいなと。なので、再就職活動中も、CAREER MARKでの活動に理解のある会社のみに絞って面接を受けていました。

加えて、自分自身が再就職活動をすることを通して、労働市場における駐在妻の立ち位置も分かると思い、半ば自分を実験台のようにして、色んなエージェントに登録して情報収取をしました。

——最後に!大事にしている言葉は何ですか?
(林)計画的偶発性理論(Planned Happenstance Theory)です。前職でキャリア研修のコンテンツを一緒に考えていた時に、講師の方より、この言葉を体現しているねと言われて、とても印象に残っている言葉です。

「計画された偶発性理論(Planned Happenstance Theory)」とは、米国スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授が20世紀末に提唱したキャリア理論。

プランド・ハップンスタンス理論のポイント
①変化の激しい現代において、キャリアの8割は偶然の出来事によって形成される
②偶然の出来事を利用して、キャリア形成に役立てる
③自ら偶然の出来事を引き寄せるよう働きかけ、積極的にキャリア形成の機会を創出する


駐在帯同は大きな変化を伴います。帯同期間中ならびに帰国後の自分がどうなるかなんて、誰にも分かりません。かといって諦め、投げだすのではなく、自分が求める姿に向かって行動してみることが大切だと思っています。少しでも興味がある事柄に関しては、意識してみる、行動してみる。そのことで引き寄せる偶然の連続が未来を作り出していくんです。自分の身に起こる様々な偶然を、積極的に利用してチャンスに変えていくことが大切で、この言葉はまさに駐在妻に当てはまる言葉だなと思っています。

——眞帆さんは、自分が興味を持っていることに対して、行動を起こす際に、躊躇することはありますか?お話を伺っていると、関心を持ったこと対してすぐに行動を起こし、迷いがないのがすごいなと思って。

(林)実は、私すっごく迷うんです。一度決めたらぶれないのですが、決断をするまでにかなり悩みます。迷って、迷って迷いつくして決めている感じです。最初の一歩が遅いんです。そんな風に見えないとよく言われるのですが水面下でバタバタしています。迷いながらも少しずつ進んでいる感じです。自分で考えて、納得して、ゆっくり踏み出してる感じなので、決して最短じゃなくて遠回りしています。でも、そのおかげで色んなことを経験することができたのだと思っています。

 

後記

 

インタビューは2時間超え!途中から気が付いたら筆者が身の上話をしていたりと、終始和やかな雰囲気でした。振り返ってみて印象に残っているのが、「私は遠回りをしているんです」という最後の言葉。何となく遠くてカッコイイ響きだった「キャリアコンサルタント」という資格、そして、その資格を働きながら取得した「パワフルな女性」というイメージだった林の人間らしさが垣間見られた瞬間でした。

自身も4年の駐在生活を経験したのち、本帰国後には再就職活動をしています。本業とは別に「励ましてきた駐在妻さんたちの本帰国後をサポートしたい」と、CAREER MARKでの活動を続投。本当に真摯な思いで向き合っているのだなと思いました。

林は、遠回りでもご自身の身に起こる偶然をしっかりとチャンスに変えて、周りの悩める駐在妻たちにもそのチャンスに気付かせてくれる、そんな存在だと感じました。

次は企画運営のマネジメントや、海外との契約を担当している松浦にお話を伺います。松浦は新卒で外資系企業で働いた後、育休中に欧州に駐在帯同し、7年半の帯同中に退職。帰国後はケーキ屋さんに勤めていた異色の経歴の持ち主。是非お楽しみに!

文:CAREER MARKインターン2期 紀井恭子

 

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メガバンク総合職から少人数企業への再就職「帯同経験が人生軸設計の期間に」

もと駐在妻の再就職リアルストーリー Vol.4 

パートナーの海外駐在によって仕事を辞めて日本を離れた女性たち。
「駐在妻」と呼ばれる彼女たちのなかには、帰国後にまた仕事に戻る方もたくさんいます。
今回は、駐在帯同を機に「自分にとって家族にとって”幸せ”とは?」という問いと向き合い新しい人生の軸を得た、ある女性のインタビューです。

 

◆プロフィール◆※インタビュー時点
お名前:Nさん
年齢:35歳

・2009年〜2016年:銀行(総合職)調査部門・営業部門
・2016年〜2019年:イギリス・ロンドンに駐在帯同
・2020年〜2021年:Web関連企業(業務委託契約・フルリモート) 事務※CAREER MARKの紹介
・2021年~:メーカー(契約社員) 事務・営業事務

 

メガバンク総合職を退職し、海外での子育て経験が教えてくれたこと

――駐在帯同前はメガバンクで総合職として働いていらっしゃったのですね。会社を辞めることに迷いはありませんでしたか?

 

Nさん(以下敬称略):とても迷いました。
ここまでやってきたのにどうしようかな、なんとか辞めないでいる方法はないかな、別居かな…とも考えました。
でも、自分にとって何が一番大事?と考えたとき、「家族で幸せに暮らすこと」だったんです。主人も同じ考えでしたので、帯同を決めました。

 

――帯同期間にしたことは?という質問に「子育て」を一番最初にあげてくださいましたね。

N:はい。子供が2~4歳でイヤイヤ期、そして初めての帯同というのは想像より大変でした。
もともとは、海外に行くからには「何か得るものがほしい」「意義のあるものにしたい」と思っていたので、子育ては帯同中にやりたいことにあえてノミネートしていなかったんです。「当然するもの」という別カテゴリーでした。
でも実際には子育ての比重がとても大きかったです。当たり前ですが、大人のリズムには合わせてくれないし、理屈が通じない。イヤイヤ期と重なったのでおむつ替えだけに20分ほど時間をとられることもありました。ずっと仕事をしてきたので、生産的な活動に置き換えてしまい「これが勉強の時間だったら」と自分で自分をがんじがらめにしてしまうこともありました。

 

――とても共感します。こういった意識が変わるきっかけが何かあったのですか?

N:一時帰国のタイミングで私の母が家族と接する姿を見た時、自分が相手に勝手に自分の理想を掲げて苛立ちを感じていたことに気づきました。子供にとってはオムツを変えるだけでも一大事。自分のマインドチェンジで、生産性のない時間ではなく「子供との時間をとれた!」という思考に変わっていきました。

 

――ハードに働いていたところからの退職・駐在帯同、そして子育てに専念。かなり葛藤があったのではないかと思うのですが、この時間はどんな経験になりましたか?

 

N:仕事では大変なことがあったとしても、計画や目標は立てやすく理屈は通じるので腑に落ちました。でも子育てはその枠をはるかに超えてきましたね。そのおかげで、バラエティ豊かな人の中でしなやかにやっていくという力が身についたと思います。
子育てに専念する期間は自分にとってプラスになったと思います。
もし帯同中に働きたくても働けないと悩む人がいたら、そんなに落ち込むことはないよ、と伝えたいですね。

ロンドンの公園で娘と遊んでいるところ
(見渡す限り芝生が続くこの環境で目一杯遊んだのは、貴重な経験でした〜)

子どもと向き合う時間を大切にしながらも今しかできない学びにチャレンジ

――そんな忙しい毎日の中、英語学習に積極的に取り組まれていらっしゃったのですね。

 

【現地で取り組んだ英語学習】
①日本人向けの英語学校に通学(約1年半)→現地英語学校通学(約3ヶ月)→家庭教師とのマンツーマンレッスン(約6ヶ月)
②ケンブリッジ英検受験
③英会話レッスンのサークル活動も実施(組織の立ち上げ・協力者(先生役)との連絡・連携など、仕切りを担当) 

 

N:渡英時は英語のザ・初心者だった事を考えれば、自分にとっては大きな進歩でした。
また、話・聞・喋・書の4技能を試される試験に挑戦する事は勇気がいりましたが(特にスピーキング)、逃げずに挑戦・恥ずかしさや悔しさも体感しながら自分の力量を知れた事は、励みにも次へのモチベーションにも繋がりました。

自分と向き合い「言語化」する時間が持てる帯同期間の価値。自分軸を持ちながら再就職活動に臨む

――異国の地での子育て経験も、ご自身の学びの時間も目標設定をしながら自分と向き合いながら過ごされていたNさん。
本帰国後再就職しようと思ったのはどんな理由からですか?

 

N:本帰国後は環境が許せば働こうと思っていました。そのため帰国はもうすぐだなという時に保育園施設・転職サイトをチェックしていたのですが、相場観(今、どんな募集があるのか等)を知れたのはとても良かったです。

 

――再就職の際に準備していてよかったことはありますか?

 

N:子どもと一緒にいながらの転職活動だったので、限られた時間のなかで職務経歴書などの書類の準備は大変でした。
私はCAREER MARKのサービスを利用して職務経歴書を作成したのですが、この作業を手伝っていただけたのはとても良かったです。

 

――職務経歴書を書いていて大変だったところはありますか?

 

N:前職の銀行について話そうと思ったときに、同業者でない方にむけて伝えるのは難しかったです。100%お伝えするのは難しいけど、平易な言葉で表現したり、数値化するなどの工夫をしました。
もともと簡単な日記のような感じで自己分析するノートを記録する習慣があったのでそこでの言語化や過去の実績数字などが役に立ちました。

ただ、正確な数字がもうわからなくなっているとしても、自分がやってきたことが伝わって面接官の理解を助ける呼び水になるように数字を使うという意識でいいと思います。これから再就職活動をする方には、正確な数字がわからなくても諦めないでくださいと伝えたいですね。

よく遊びに行っていた児童公園の花壇
(毎日リスが顔を出してくれて可愛かったです)

――現在の勤務先で活かされている帯同中の経験やスキルはどんなものがありますか?

 

N:まずはコミュニケーション能力・組織力です。この点は再就職活動の際もPRしました。
前職の銀行にいたときにもこうした能力はもちろん磨いてきたと思います。それが駐在帯同の期間を通じてさらに強化されました。
働いていた銀行ではきちんとルールブックがあって、迷う時にはそれを確認することができたのですが、海外生活では日本とは文化が違ってルールも違う。だから聞いてみて、自分の意見を伝えてみて、ということが大事だということを学んだんです。

「聞いてみないとわからない。言ってみないとわからない。だからまずは確認してみよう!」というメンタルを身につけました。

今の会社は、中途採用も多く老若男女問わずいろいろなバックグラウンドの方がいるし、考え方も様々。その方々と円滑に業務を進めていくにあたり、帯同期間中に文化の異なる異国の方と付き合ってきた経験は生きていると思います。

 

もうひとつは「あるべき論で考えない」です。
イギリスって家の設備がとにかく壊れるんです。
しかも修理の業者さんも何の準備もせずやって来て、
「Oh!壊れてるね、ほんとキミかわいそうだって僕も思うよ!」
とか言って何もせず帰っていくんですよ!しかも次のアポもまた時間がかかったりして…。

でもまあイギリスだから仕方ないかって笑って許せるようになっていきました。もうそういうものだと。

駐在帯同を通じて子どもにも同じ気持ちになっていきましたし、子どもだから着替え遅いよね、食べ物こぼすよね、仕方ないよね、って思えるようになりました。アンガーマネジメントのようなものかもしれませんね。

今は仕事で「ああ、私ならこうするのに…。」っていうことがあっても、怒ったり諦めたりしないで
「私ならこう考えますが、どうですか?」
と話し合う場を設けたりしています。

文句を言うのではなく、いろんなバックグラウンドの人がいるんだから、相手の考えを聞いてみよう、自分が求められる動きも含めてまず確認してみよう、というコミュニケーションをとれるようになりました。

転職活動をするときって、どうしてもテクニカルスキル(専門知識や、営業スキル・プログラミングスキルなど業務に直結するスキル)に注目してしまうと思うんです。
私もそうでしたが、でも、いざ本帰国後に働こうと思ったときに自分が誇れるスキルってなんだろうと考えたとき、こうしたテクニカルスキルだけじゃなく、コミュニケーション能力や交渉力などのヒューマンスキルと呼ばれるものや、多面的に物を見られることやチャレンジ精神など課題解決につなげられる力が身についていると気づいたんです。

こうしたスキルは帯同前の仕事でも育てていて、さらに帯同先で違う文化にさらされたことで磨かれて、だんだんブラッシュアップされてきたものだと思います。

どの方にも、仕事だけじゃなく帯同期間を通じて育ててきた素晴らしいスキルがあると思うので、そこにも目を向けるといいのではないかなと思います。

ロンドンの自宅近辺
(毎日通っていた道です。懐かしい!)

新たな職種・企業規模へのチャレンジとなった現在の仕事

――メガバンク勤務から社員数人の会社でフルリモートワーク勤務、さらに現在のメーカーでの契約社員としての勤務。働く環境が大きく変化していますが、どう感じていますか?

 

N:とても良かったです。
確かに社員数万人という組織と数人の組織ではルールや文化は違いますが、それは当然だと思いますし、そうした違いに触れられたことも見識を広めるという意味で良い経験でした。

以前の会社で評価されたことも外に出てみたらそうでもない、ということに辞めてみて気づきました。
また、CAREER MARKの紹介で完全リモートという働き方に挑戦できたことも良かったですね。子供中心の生活の中で仕事ができることは自分のニーズにマッチしていました。
職務内容はこれまでの経験(営業・事務)がとても役に立っていますし、トータルとして大満足です。

 

――今はご家族との時間もとても大切にされていますね。
お子様の成長に合わせてステップアップする働き方をもともとイメージされていましたか?

 

N:もとから計画していたわけではありません。そのときどきでご縁があって、という感じです。

帯同前に働いていた時は、こんな働き方があるとも思っていませんでした。子どもに合わせた生活をしたいな…と思いながら、職場で自分に求められているものもあるし、自分としても達成したい、負けたくないこともある、だからいつも全力投球で仕事しなければ、という気持ちでいました。

だからあのまま帯同前の仕事を続けていたら、遅くまで保育園に預けて、ギリギリでお迎えに行って、なんとか、なんとかこなす、そういう毎日になっていたと思います。

それで100%満足していたかと言うと…、仕事の目標達成のために子どもへの気持ちに少し目をつぶりながらやっていく、そういう、自分をだましだまし…みたいなことを続けていたかもしれないなって思います。

 

――正社員として仕事を頑張っているからこそ、他の働き方を選ぶというのはなかなか難しいことなのではないでしょうか。

 

N:そうですね、帯同前に働いていたときには、正社員以外の働き方を選ぶことは「自分に負けた」「走り続けるのをやめた」ということだって勝手に思っちゃってたかもしれないですね。

子育てにはすごく価値があるってわかってたんですけど、でもある程度子育てを犠牲にしないと仕事で求められるレベルに達しないからそうせざるを得ないっていう部分もありました。

もちろん仕事も家庭も、どちらもうまくできる人もいると思います。でも自分としては現実的にそうなっていましたね。

以前のような働き方を続けていたら、なかなか今の働き方に舵は切れなかったと思います。
今は契約社員として10時~16時の勤務ですが、こうやって細く長く働き続けられるんだっていうことは、駐在帯同によって一度仕事が途切れたことによって気づけたことです。

 

――今後はどんな働き方をしたいですか?

 

N:今は営業事務としてとても楽しく仕事しています。また、まだ子どもが小さいのである程度子どもとしっかり遊べる時間をとりたいと思っています。
17時には家に帰って、ちょっと子どもと遊んで宿題を見て、それからみんなで夕食を囲む、しかも自分もしっかり仕事をしている、というこの生活にとても満たされています。

今後は子どもの成長に合わせて、まずは勤務時間を延ばすこと、そしてゆくゆくは正社員へチャレンジしたいと思っています。

 

――正社員登用制度があるのですね。

 

N:はい。仕事探しの際、正社員へ移行できるという点も会社選びのポイントとなっていました。とても雰囲気のいい会社なので、このまま働き続けられたらと思っています。

 

――先を見据えた人生設計をされる中でのお仕事の選択。とても大きな気づきを与えていただきました。

最後に、これから再就職を控える駐在妻・もと駐在妻へのアドバイス、メッセージをお願いします。

N:駐在帯同生活お疲れ様です。
ここ数年、働き方のレパートリーはより幅広くなったと思います。私は今時短の契約社員ですが、子供の成長に合わせて今後も柔軟に働き方を決めていくつもりです。自分の人生にとって何が大切なのか自問自答し、優先順位を決めながら、最後は自分の直感を信じて自信を持って選択していっていただけたらと思います。陰ながら応援しています。


―Nさん、どうもありがとうございました!

 

インタビュー:CAREER MARK キャリアコンサルタント 小橋友美

文:CAREER MARK インターン 吉井聡子

 

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駐在帯同があったから選べた働き方「変化を恐れない自分に」

もと駐在妻の再就職リアルストーリーVol.3

パートナーの海外駐在によって仕事を辞めて日本を離れた女性たち。
「駐在妻」と呼ばれる彼女たちのなかには、帰国後にまた仕事に戻る方もたくさんいます。
そんな彼女たちは、駐在帯同期間をどう過ごしたのでしょうか。
3回目は、駐在帯同を経て新しい自分と新しい選択肢に出会えたある女性のインタビューです。

 

◆プロフィール◆※インタビュー時点
・お名前:久保田 友香さん
・年齢:39歳
・帯同前の仕事:不動産業界と財務会計業界で10年間正社員として勤務後、業務委託で税理士法人などから会計事務等を担当

・駐在帯同国:アメリカ合衆国(2018年10月~2020年11月)
・現在の仕事:大手メーカ―系列の不動産管理会社にて勤務(業務委託)

 

駐在帯同で身につけたタフさと寛容さ

――アメリカでの駐在帯同中は何をしていましたか?

 

久保田さん(以下敬称略):帯同前の経理の仕事を米国に駐在帯同したあともリモートで担当していました。
コロナ前に渡米したので、結果的に物理的な距離や時差がある中でのリモート勤務を先行して体験させて貰ったと感じています。

 

――帯同期間に培われたスキルはなんだと思いますか?

 

久保田:全部で4つあると思います。

①『建設的かつ楽観的思考』と、事前に調べつくす『用意周到』
②ダイバーシティーを受け入れる心
③現地で使える英語のフレーズ
④南米大陸の地理

アメリカの夜景とともに

①『建設的かつ楽観的思考』と、事前に調べつくす『用意周到』
帯同前も在宅ワークをしていましたが、実際に帯同先で.リモートワークをするにあたっては勤務時間ではなく成果物で評価されるようにしたいと考えました。そのため会社と話して成果物を定め、それを納品することで評価してもらえるようにしました。

米国では出先にWifiが無かったり、ハリケーンによる停電・デモなど、日本では起こりえない事がたびたび起きたり、時差がある、PCの環境設定がシステムに影響するなど、度々チャレンジングな状況に遭遇しました。

こうした状況を通して、人間が生活していれば、どの国に行ってもなんとかなるという『建設的かつ楽観的思考』と、事前に調べつくす『用意周到』を極めたと思います。

②ダイバーシティーを受け入れる心
人種や国籍の違いはもちろんですが、考え方もみんな違うということを受容できるようになりました。
誰でもみんなそれぞれの事情を抱えているということを理解できるようになり、自分と違う考えでも最初から遠ざけることはしないようにしよう、考え方が違う人でも機会があれば話してみよう、関わってみようという気持ちになりました。

こうした私自身の変化は対人スキルのレベルアップにつながったと思います。
質問や相談など、以前ならちょっと引っかかって聞きづらかったこともスムーズに聞けるようになりました。
また業務の合間のちょっとしたことにもいい影響がありました。先日仕事中に上司から「アイス食べる?」と言われたんですが、ランチ前だったので少し迷ったんです。
以前なら「いりません。」とだけ言って断っていたと思うんですが、せっかくだからとアイスを受け取って「なんで今アイスなんですか?」と聞いてみたんです。そうしたら、実はその上司は親会社の役員もされていて、ちょうど新製品開発のため色々なアイスのフレーバーを試しているとのことでした。
役員だったことも新製品のことも全く知らなかったので、やっぱりこうして最初からシャットアウトしてしまわずコミュニケーションをとることで広がる世界もあるんだなと実感したところです。

③現地で使える英語のフレーズ
④南米大陸の地理
このふたつは、やはり現地で生活したからこそのメリットですね。

駐在帯同があったから今の仕事がある

――帯同期間中に得られた新しい視点や価値観など、スキル以外に得たものはありますか?

久保田:まずは、駐在帯同があったからこそ今の会社との縁がありました
もともとは子どもが小さいのでフルリモートで仕事をしようと考えていたのです。でもこの会社の仕事内容や雰囲気を聞いて面白そうと興味を持ちました。
以前ならフルリモートでないから条件に合わないとあっさりスルーしていたと思うのですが、帯同中のいろいろな経験から、すべての条件が合わなくても興味があればまずは飛び込んでみようと思えるようになっていました。

次に業務連携の仕方です。
コロナ対策のため在宅勤務をしている社員のみなさんとの業務連携には、帯同中の経験が生かされています。
帯同中はビジネスチャットやZoomなどを使っていたので、リモートで仕事のやりとりをすることに抵抗を感じていません。
また、帯同期間中に対人スキルが上がったことでスムーズにコミュニケーションがとれるようになりました。

海外の生活はできないことばかりのスタートで最初はとても落ち込みましたが、そこで「がむしゃらにやるしかない」と切り替えて少しずつ生活基盤を整えました。
こだわりを捨てて未知のものにも飛び込んでいくという姿勢を身につけることができましたし、そうした自分の変化によって他の人にも寛容になりました。
こうした経験を通じて、以前なら考え方が違う人とのコミュニケーションにストレスを感じていたのですが、今は「こういう考え方の人もいるよね」と特に気にせずフラットにやりとりできるようになりました。
また、海外事業も展開するグループ会社の会話なども現実感があり、想像しやすいところは海外で住んでいたメリットだと思います。

子どもが小さい今だから働き方を選んで

――帰国されてからそれまでとは別の会社に入社されましたが、なぜでしょうか?

 

久保田:面白そうな職場だったからです。
実は本帰国して、当初はしばらくゆっくりしようと思っていたんです。
でもその矢先、駐在帯同を控えたCAREER MARKのスタッフの小橋さんと面談でお話しして、ワクワクしているのが伝染しました。
人生一度きり、新しい職場も見てみたいと思わせてくれました。

 

――いまは業務委託という働き方なのですね。

 

久保田:はい。子どもがまだ小さいため家族の時間も大切にしたいという気持ちと、不動産の専門知識を活かしたいという気持ちを両立させるため、現在は業務委託という働き方を選んでいます。
週○時間と契約で決めて、定められた業務を担当しています。

もともと、いかに効率よくして短時間で仕事を完了させられるかを考えるのが好きですし、正社員ではなくてもこれまでやってきた不動産と会計の経験を活かせるということで、今の働き方には満足しています。
今後は子どもの成長にあわせて正社員化も考えながら、より専門性を高めていきたいですね。

大切な子どもたち
――再就職の際のご自身のPRポイントは何でしたか?

 

久保田:担当の事務以外の知識があることですね。
不動産業界では営業担当はまだまだ男性が中心なのですが、私はこれまで営業や契約も担当してきたため希少な存在だと思います。幅広い不動産の知識や経験があることで、事務担当でありながら営業担当の仕事も理解でき、質の高いサポートができていると思います。


――再就職できた理由は何だと思いますか?

久保田:不動産と会計の知識だけではなく、駐在帯同中に度々経験したアクシデントを乗り越えてきたおかげで養われた「柔軟性」「コミュニケーション力」などでしょうか。

人生において無駄なことは何もない

――これから再就職を控える駐在妻・もと駐在妻へのアドバイス・メッセージをお願いします!

 

久保田:人生において無駄なことはなにもないと思っています。自身の大切な仕事を辞めて帯同する、まさに青天の霹靂と言える事態に遭遇し、心折れながらも諸外国の酸いも甘いも味わい尽くして逞しく生活したという事実は、とても貴重であり、自分自身の成長に繋がっているはずです。

海外でイチから生活を立ち上げて築き上げたという開拓力と生活に必要な情報収集能力、それからメンタルも、相当鍛えられてるはずです。さらに、現地で出産や子育てもしていたらさらにすごく大変な経験をしたでしょう。2倍も3倍もいろんな事に強くなっている、柔軟に寛容になっている、そう思います。そして、その磨かれたスキルはどんな会社でも必要な力だと思いますよ。
それを評価してくれる職場が必ずあると思いますので、ぜひ踏みとどまらずに出会いを探して欲しいと思います!

 

――久保田さん、どうもありがとうございました!

 

インタビュー・文:CAREER MARK キャリアコンサルタント 小橋友美

 

 

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駐在・帯同・育児。すべての経験が糧になる「人とのご縁を大切に、流れに乗る」

もと駐在妻の再就職リアルストーリー Vol.2

パートナーの海外駐在によって仕事を辞めて日本を離れた女性たち。
「駐在妻」と呼ばれる彼女たちのなかには、帰国後にまた仕事に戻る方もたくさんいます。
そんな彼女たちは駐在帯同期間をどう過ごしたのでしょうか。
2回目の今回は、自分から縁をつなぎ、流れに乗って新しい生活を始めたMさんのインタビューです。

 

◆プロフィール◆※インタビュー時
・お名前:Mさん
・年齢:38歳
・帯同前の仕事:自動車部品業界で11年間、海外営業・海外購買に従事
 (うち約5年はメキシコで勤務)
・駐在帯同:2018年~2019年/タイ・バンコク
・現在の仕事:大手自動車会社で海外購買を担当(正社員・フルタイム)

 

悩みと葛藤の中で駐在帯同生活スタート

――駐在帯同先のタイではどんなことをしていましたか?

Mさん(以下敬称略):タイ語の学習と、日本人会のボランティア活動をしていました。
初めての出産、しかも海外でということが不安だったので、妊娠・出産に関わる日本人会のボランティアに入ったんです。後半にはリーダーも務めました。リーダーをやりたかったというよりは、自然にできる人がやるという流れの中で気づいたらやっていたという感じです。

 

――以前メキシコで働いた経験もあるのですね。タイで働けないということにストレスは感じませんでしたか?

 

M:最初はすごく葛藤がありました。メキシコでは働いていたのに、なぜいま私は働いていないのだろうと考えたりして、最初の数か月は本当に落ち込みました。
でもしばらくして妊娠がわかって状況が変わりました。つわりもきつく、タイ特有のナンプラーの料理のにおいもつらくて。タイ語もわからないなかで、とにかく心身ともに自分を大事にしないといけないことが増えてきたこともあって、もやもやしつつもちょっとずつ「仕事は一旦お休み」という気持ちに変わっていきました。
お腹が大きくなってくるとタイの人がとても優しくしてくれて、ドアを開けてくれたり、「男の子?女の子?」と言葉をかけてくれるようになりました。そういう日常を通して、少しずつ新しい生活に気持ちも馴染んでいきましたね。
今振り返ってみると、最初の数か月を暗い気持ちで過ごしたのはもったいなかったですね。せっかくなんだからもっとタイを満喫すればよかったー!って思います。

メキシコの教会の飾り

海外生活で身についた「言ってみないとわからない」

――そんな帯同期間中に培われたスキルはなんだと思いますか?

M:コミュニケーション力、交渉力、チャレンジ精神です。
もともとこうしたスキルはメキシコで働いたときに体得したのかもしれませんが、海外で過ごす期間を通じて「言ってみないとわからない、聞いてみないとわからない」という姿勢が身についたと思います。

 

――日本に帰ってからの再就職活動の様子を教えてください。

M:帰国してから大手のエージェントにも登録しましたし、CAREER MARKにも履歴書を送りました。CAREER MARKは駐在妻のキャリアを考えるイベントでキャリアコンサルタントの林さんと話をしたのが最初の出会いです。
今の勤務先に決まったのは本当にたまたまで、きっかけがあって軽い気持ちで登録したビジネス系SNSを通じて会社の人から連絡があったのです。
ちょうどCAREER MARKから紹介された企業の面談に向けて、キャリアコンサルタントの林さんとキャリアメンターの鎌田さんに色々と相談していたところだったので、結果的にそれが今の会社の面接にもとても役立ちました

 

――再就職活動で評価されたのはどんなことだと思いますか?

M:もともと募集していた分野の仕事をずっとしていましたので、その経験は評価されたと思います。それに加え、海外(メキシコ)で働いた経歴から、 多文化の中で働くのも大丈夫だろうと判断されたのだと思います。今の仕事は海外拠点とのやり取りが多いため、語学レベルが高いことに加え「様々な国の人とでも働けるか」という点も重視していたようです。

 

――ビザや家庭の都合で海外で働けないという人もたくさんいます。それでも駐在帯同中に何か面接でアピールできるような活動をしたいという話はよく聞きます。どんなことをしたらいいと思いますか?

M:ボランティアや、最近ならプロボノやインターンも増えてきているので、そうした活動をするといいと思います。そこで自分がやりたい仕事に携われると一番いいですね。
なおかつそこで現地の方と一緒に何かをする機会があれば、それは多文化の中で働けるというアピールのひとつにもなるのではないでしょうか。
仕事につながる、そして現地の方と一緒に何かする。そういう環境に身を置くことで自分自身が面接でもアピールしようという自信を持てる気がします。

タイ、屋台の様子

「どうしようもないこともある」と知る

――現在の勤務先で活かされている帯同中の経験やスキルはありますか?

M:正直、帯同期間中だけというよりはメキシコで働いたときの経験も含めて海外生活での総合的な気づきや学びが活きていると感じています。
実は帰国してから就職した会社は従業員が1万人ぐらいいる大きな会社で、しかも自分の部署はほとんどの方がリモートワークをしているんです。隣に誰かが座っているわけではないので、やっぱりわからないことがあったときに最初は「誰に聞けばいいの?」って戸惑いました。誰も知り合いがいないですから。
でも海外での「言ってみないと、聞いてみないと」という姿勢を思い出して、まず誰かに聞いてみて、解決して、上司にも話して…っていうことを繰り返して、だんだん聞ける人、喋れる人を広げていった感じです。

 

――リモートワークでコミュニケーションが取りづらくて悩む人はたくさんいますよね。特に転職した先で苦しむ人も多いです。

M:私も苦しい時期もありました。ただ上司にも相談しながら、「まずは来週まで頑張ろう」「次はまた来週まで」って、とにかくスモールステップを重ねていくようにしたんです。そのうちに、会社の人と顔を合わせる機会が増えたり、自分の状況も変わったりと、環境が変わってだんだん楽になってきました。

こういうとき、以前ならなんとかしようともがいたり、抵抗したりしていたと思います。 でも日本に帰ってきて、どうしようもないことはどうしようもないと割り切る自分になっていました。子どもができたのも大きいのかもしれないですが、自分だけではどうしようもないことってありますよね。でもそこでその状態にとらわれてしまって何もできなくなったり、全部諦めてしまったりするんじゃなくて、スモールステップでもいいから、最低限でもいいから、流れの中で前に進めばいつかどうにかなると思えるようになりました。

タイ、ピンクのガネーシャ

駐在帯同も子育ても経験して捉え方が変わった

――駐在帯同から帰ってきて、「私、変わったな」と思うことは他にもありますか?

M:すごくあります。駐在帯同、そして出産・子育てを経験して、ものごとのとらえ方が大きく変わりました。
駐在妻って、帰国したらとにかく子どもの預け先を探して、同時に自分の仕事も探さないといけないですよね。それがとっても大変で。保活激戦区に住んでいるので、簡単には保育園に入れられないし、保育園が決まらないと仕事も決められない。ああ、私が駐在妻だったからこんなに大変なんだって自分の大変さにばかり目が向いていたんですが、ふと見渡すと、出産子育てで仕事を辞めて再就職に苦労している女性が世の中にはたくさんいるということに気づいたんです。こういうことってもしかしたらスムーズに仕事を続けていたらわからなかったかもしれないですよね。
こうやって広く周りの状況を見渡せるようになったり、社会に目が向いたのも、自分が変わったところだと思います。

 

――確かに、帰国した駐在妻のみなさんから、再就職活動や保活で大変という話をよく聞きます。うまくいかないときでも前に進むコツはありますか?

M:私の経験ですが、再就職活動や保活では、
①自分の足で情報を稼ぐこと
②人とのつながりを大切にすること

がとても役に立ちました。

自分の足で稼ぐとは「自分で情報を取りに行く」ということなんですが、これはメキシコでもタイでも意識していましたし、帰国後に仕事をしようと思ったときもまずやってみたことです。イベントに出向いたり、ビジネス系SNSに登録してみたりしました。
そこで誰かとつながることができて、今の会社との出会いがありました。

保活も同じです。よく行っていた児童館で再就職活動の面接時に預かってもらえたり、保育園もよく遊びに行っていた施設で声をかけてもらったから決まったりしました。

自分から動いて、人とのご縁の恩恵にあずかり、最後にいろんなことが決まる。そんな大きな流れの中で今に至る、という感じです。

CAREER MARKでは私と同じように帯同経験のあるキャリアコンサルタントとキャリアメンターがすごく私の価値を引き出してくれて、そのおかげで面接でも自信を持って話せることができるようになったんです。結果的にCAREER MARKの紹介先ではなく今の会社とご縁があったのですが、これも自分で情報を取りに行って、人とのご縁がつながった結果だと思っています。

こうした経験をしたから、仕事で思うように進められない状況になっても、「まずは半年やってみよう」「流れの中で少しずつ前に進められればOK」と考えられるようになったのかもしれません。

――最後に、駐在妻のみなさんにメッセージをお願いします。

私は人とのご縁や、アンテナをいろんなところに貼っていたおかげで、本帰国後の保活や再就職ができたと思います。私のビザの条件では駐在妻は働けないというのがずっとネックでしたが、今思えば思い切り遊んでおけばよかったなと思います。現在の状況が許す範囲でですが、できるだけ楽しむのはとても良いことだと思います。また、働きたい人は、働く方法はいくらでもあるので、こちらもいろいろ情報のアンテナを立てておけば不可能ではないのかなと思います。
できない、と思わず、まずは探してみたらなんとかなることが多いと思うので、有意義な時間を過ごされるよう応援しております。

――Mさん、ありがとうございました!

 

インタビュー・文:CAREER MARK キャリアコンサルタント 小橋友美

 

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