CAREER MARK公式ブログ

駐妻キャリア支援CAREER MARKのブログです。 駐在妻・もと駐在妻の人材紹介を通して「また働きたい駐在妻」と 「もっと成長したい企業」をつなぎ、 ブランクがあってもまたチカラを発揮できる社会を目指しています。 駐在妻の再就職インタビューやキャリアセミナーレポートなどを掲載中!

もとロンドン駐在妻のキャリアコンサルタントに聞く、駐在妻の再就職について

2021年8月よりCAREER MARKの新サービス1on1キャリアサポートがスタートしました。スタート以来続々とお申し込みいただいております!

1on1キャリアサポートお申込みはこちらから。

駐在帯同という「非日常」が終わり、「日常」に戻った時、仕事に就くことはできるのか、どんな仕事に就けるのか悩む方も多くいらっしゃると思います。

まずは現実を知ろう!ということで、本帰国後の「駐在妻の再就職事情」について、もとロンドン駐在妻のキャリアコンサルタント、林眞帆にお話を伺いました。

▼林眞帆については、こちらの記事をご覧ください。

blog.careermark.net

 

筧中(以下、省略)
——本日は、よろしくお願い致します。

 こちらこそよろしくお願いします。

駐在妻の再就職にはコツがある

——まずは、ブランク期間(駐在帯同期間)がある人は、再就職できるのでしょうか?

 できます!でも市場を選ぶ必要があります。

 

——市場を選ぶ必要がある、とはどういう事でしょうか?

 まず、多くの人が転職活動を始めるにあたり、既に企業で働いているバリバリの会社員の方々と同じような転職活動をしてしまいがちです。

その人達が競う市場に真っ向から立ち向かうと、駐在帯同期間がある私達の経歴は、働いていない期間=何もしていない期間と認識されます。よくエージェントから「難しいです」と言われ、その時点で再就職を諦めてしまう、もと駐在妻の声を聞きます。

「難しい」のは事実です。現在企業で働いている現役の会社員が転職活動をしている市場では、仕事をしない(できない)のが、どんな理由であれ仕事から離れていれば、それはブランクと、とらえる企業が集まっているからです。

 

——そうなんですね。

林 でも、そうだからといって諦めないでほしいのです!その難しい市場に敢えて真正面から突っ込む必要はありません。

ブランクは関係なく、過去にしっかりとした実績がある駐在妻を雇いたいと思う企業もあります。ポイントは、そのような企業に出会えるかどうかです!

CAREER MARKには、駐在帯同を経験した人に魅力を感じ、ブランク期間にも理解のある企業が集まっています。したがって、転職を考えたらまずはCAREER MARKに相談に来て頂きたいと思っています。

 

——大企業に再就職するのは難しいのでしょうか?

 再就職したいと思う企業が求めるスキルと、その人自身のスキルによります。
 
日本の転職市場は「経験者」採用です。産休・育休もブランクとみなされ、昇格が遅れるように、駐在帯同期間もブランクとみなされます。

また、大企業は現役の会社員が転職したい会社になりますので、先ほどお話したように、その人たちと競うことになります。

 

——それが現実なのですね。

 もしご自身が渡航前に大企業で働いていたならば、本帰国後も大企業に戻りたいか一度考えてみるのも良いと思います。海外に行って、今までとは違う価値観が生まれている可能性もあります。 

 

——正社員で再就職はできるのでしょうか?

 できます。最近よくCAREER MARK内で話しているのが、駐在妻自身の意識も変えていく必要がある、ということです。

駐在妻の方々のお話を聞いていると、出産を機に仕事から離れてしまっているから、子供がいるから等、正社員での採用をはじめから諦めている人が多いと感じています。

今はフレックスタイム制を導入している企業や、在宅ワークが可能な企業もあり、正社員だからといって必ずフルタイムで出勤して仕事をしなければいけない、というわけではありません

繰り返しになりますが、ポイントはそのような企業がある事を知り、出会うことができるかどうかです。

新しい業界や職種へのキャリアチェンジ

——年齢に関係なく、キャリアチェンジはできるのでしょうか?

 可能です。年齢に関しては仮に本帰国時の年齢が40歳前後だとしたら、「未経験ですが、なんでもしますので採用してください!」というのは、残念ながら通用しません。それは、転職市場は経験とスキルを評価され、採用に至るからです。

キャリアチェンジは、ハードルが上がります。しかし、色々な道があるのも事実です。例えば、本帰国後は、渡航前の経歴を活かせる企業に就職をして、その中でキャリアチャンジをしていくこともできます。または、はじめは未経験でアルバイトとして入って正社員に昇格していくことも可能です。

自分の希望する働き方があるならば、はじめからできないと否定するのではなく、まずは一度CAREER MARKにご相談に来て頂き、お話を聞かせてください。

 

——心強いです!

 私たちは、駐在妻を大人ポテンシャル人材と捉えています。海外で生活をしていると、自然と「生き抜く力」が身に付いていると思います。

そこに価値や魅力を感じてくれる中小企業が少しずつ増えてきています。まずは、駐在妻に価値を感じてくれている企業に就職をして色々なことにトライをし、自分の専門性を見つけたり、自分は何をしたいのかを見極めて、今後のキャリアを考えても良いと思います。

再就職へ向けて駐在帯同中にしておくと良い2つのこと

——最後に、駐在帯同中にしておくと良いことは何でしょうか?

 2つあります。1つ目は、人に伝えられるように自分の経験を言語化しておくことです。そしてそれをさらに「再就職をするのに使えるエピソード」にするにはどうしたら良いのかを考えておくと良いかと思います。

1on1キャリアサポートを担当するキャリアコンサルタント、キャリアメンターは、駐在帯同経験者です。そのため、駐在帯同中の経験やエピソードを的確に理解し、そこから個々の強みを引き出すお手伝いをする事ができます。

2つ目は、駐在帯同生活を思いっきり楽しむことです。現地での観光やショッピングなども楽しみつつ、何かしらピンときた自分の好きなこと、やりたいことを見つけてほしいです。

そして、駐在帯同生活を十分やり切ったと言えるくらい満喫してほしいと思います。その経験が、再就職の際アピールにも繋がりますし、人脈も広がっていきますよ。

あとがき

渡航後生活が落ち着いてきたら、自分のキャリアへの漠然とした不安を感じることが多くなりました。私は休職制度を使って駐在帯同をしていますが、本当に元の職場に戻りたいのか?違う道はないのか?など、悶々とする日々。

今回のお話を伺って気づいたことがあります!それは、そのモヤモヤをひとりで解決しようとしているから、答えが出ないままいつも同じことで悩むんだ、ということ。自分の状況や悩みを理解し導いてくれるキャリアコンサルタントやキャリアメンターの方達に相談することで、この悩みへの適切なアプローチを知ることができ、将来に対する漠然とした不安を晴らすことができるのではないかと感じました。

全部を自分だけで解決しようとせず、プロの力も借りながら、駐在帯同生活をやり切った!と言える位充実させていきたいと思います!

次回は、インターンメンバーの「1on1キャリアサポート」体験談をお伝えしていく予定です!

1on1キャリアサポートお申込みはこちらから。

ご希望のサービスと担当者をお選びのうえお申込みください。日時などの詳細確認のため、CAREER MARKからご連絡差し上げます。

 

文:CAREER MARK インターン3期 筧中莉紗

 

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ハッシン会議×CAREER MARKコラボセミナー 「広報PR力を身につけて自由な働き方を手に入れよう」

「本日は2021年10月13日に開催された
『ハッシン会議 × CAREER MARK コラボセミナー 広報PR力を身につけて自由な働き方を手に入れよう』のイベントレポートをお届けします。

今回のイベントは
CAREER MARK共同代表鎌田薫によるCAREER MARKの紹介、ハッシン会議代表井上千絵さんによるハッシン会議の紹介に続き、「広報PR人材にはどのようなニーズがあるのか」をテーマにしたトークイベントです。

「広報PRについて学ぶことで駐在妻の働き方の可能性が広がるのではないか」
という鎌田の想い、
「広報PRの業務経験がない方も今までの自分のスキルにプラスオンして新しく広報PRの仕事ができるという環境があること、そしてどんな広報PRの仕事があるのかハッシン会議の働き方を事例として少しでも広報やハッシン会議に興味をもってもらえれば」
という井上千絵さんの想いのもと今回のイベントが企画されました。

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【登壇者】
ハッシン会議代表 井上千絵さん
2005年から民放テレビ局に勤務。うち8年間は報道記者、2年間は宣伝広報、テレビ朝日「報道ステーション」ディレクターとして東日本大震災の現場を取材。その後テレビ局を退職して2018年に独立し、ベンチャー・スタートアップ企業を中心に広報PR領域の伴走をするハッシン会議を設立。テレビ局のアウトドアメディア「ハピキャン」立ち上げや、WEBメディアMolecule(マレキュール)編集長など、WEBメディアの事業プロデュースも手がける。


CAREER MARK 共同代表 鎌田薫
大学卒業後、金融業界、リクルートを経てハリウッドビューティサロン支配人に。企画営業、事業企画、経営企画などに従事。育児休暇復帰直前に夫の駐在が決まり1年8ヶ月ロンドンヘ。帯同中に在英日本人女性のコミュニティを立ち上げ、本帰国後これからのキャリアを見据え、ハッシン会議にてPRを学び始める。WEBメディア「LAXIC」編集長在任中にCAREER MARKの前身となる駐妻キャリア支援プロジェクトを立ち上げる。

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広報PRについて学ぶことで可能性が広がる

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冒頭は鎌田より現在の事業に至るまでのご経験やCAREERMARKの紹介からはじまりました。

鎌田は大学卒業後、金融業界、リクルートを経てその後ハリウッドビューティサロン支配人に。そこで経営企画などに携わっていた際にいかにしてうまく会社の中にある情報を価値あるものとして発信していくか、発信していくことの大切さを感じていたそうです。

本帰国後に何を仕事にしようかと考えたときに、
今までのキャリアの中で世の中に発信していくことが売り上げをあげることや成績をだしていくことにつながるのではないか、
広報PRについて学ぶことで可能性が広がるのではないかと思っていたことがきっかけでハッシン会議に出会ったとのこと。

CARRERMARK立ち上げの際にも事前にハッシン会議のコミュニティの中で「発信すること」に対する知識を得ていたことでスムーズに広報戦略をつくっていくことができたそうです。

企業の中から発信力を育てていく、そういった組織をつくる企業の伴走をし、力になりたい

画像2

次に井上さんより現在の事業に至るまでのご経験やハッシン会議の紹介がありました。

井上さんは約10年間テレビ局で報道記者や宣伝広報のお仕事に従事されていました。
テレビ局で働く中、どうしてもインパクトのある情報を取り上げることが多く、
スタートアップ企業など価値ある行動をされている方々の情報が取り上げられていないことにジレンマを感じていたそうです。

その後、大学院での学び直しを経て、
スタートアップ企業に特化したPR会社に入社されました。
PR会社で働く中でスタートアップの想いをもった経営者と「外注」として外から関わることへの限界を感じ「企業の中から発信力を育てていく、そういった組織をつくる企業の伴走をし力になりたい」という想いからハッシン会議を立ち上げられました。

広報PRとは信頼関係を築いていくための地道な活動

画像3

次に参加者からの事前の質問を交えながら、「広報PRの仕事とは?」をテーマに
井上さんより広報PRの役割や仕事内容についてお話いただきました。

「PR」と聞くとどのようなイメージをお持ちででしょうか?
メディアからの取材を受けたりと「華やかなイメージ」を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。

ですが、井上さんからは
プレスリリースを書いてメディアから取材を受けることは広報PRの仕事の一部である、
という話がありました。

広報PRの仕事とは

・社会と企業との間に継続的な<信頼関係>を築いていくための”地道な活動”
・企業、行政、学校、NPOなどの組織体がそれを取り巻く多様な人々との間に継続的な信頼関係を築いていくための思考・行動。

であり、みんなが信頼関係をストックしてコミュニケーションをとることがPRの役割とのこと。

企業のコミュニケーションを取る相手は直接的なお客様だけという意識を持っていたのですが地域社会、従業員、株主など様々な人々とコミュニケーションをとり信頼関係を築いていくといった点が私にとっては新たな視点でした。

そしてハッシン会議で取り組んでいる仕事を事例として広報PRの仕事内容をご紹介いただきました。


仕事内容は
PR戦略構築、メディア対応、プロモーター、PRコミュニティーマネージャー、SNS、リサーチ・情報開発、記事の入稿、クリエイティブ制作・・・など広報PRの仕事内容は多岐にわたります。

それぞれの業務の流れや、どのような人が向いているかなどを実際に業務を担当しているハッシン会議のメンバーの方々からお話を聞くことによってより具体的に仕事内容をイメージすることができました。

広報に必要な力とは?

次に「広報にはどんな力、スキルが必要ですか?」という参加者の問いに対して

井上さんは
「人と話すことが好きな人というところは共通していることかなと思います。
ただ、そのような個別のスキルよりも特にベンチャーの広報で一番大切なことはその事業に対する想いへの共感度です。
展開している事業内容やサービスを本当にいいなと思っている方やビジョンに対する共感度があれば広報の仕事をやったことがなくてもできるのではないかなと思います。」
と語られました。

個別のスキルよりも自分が本当に良いと思うサービスやその事業への共感度が大切であるというお話は印象的でした。

イベントに参加して感じたこと

今回のイベントを通して自分の中で持っていた広報PRのイメージが変わりました。
新聞や雑誌、テレビなどメディアに取り上げてもらうことは広報PRの仕事の一部であり、仕事内容は様々で「信頼関係をストックしてコミュニケーションをとることが広報PRの役割である」という点は新たな気づきでした。

「継続的に発信すること」は地道な活動であり、発信し続けることは簡単なことではないと思います。
その一方で自分が本当にいいと思うサービスやその事業のビジョンへの共感といった「想い」があるからこそ、その想いが原動力となって発信しつづけることが出来るのではないかとCAREER MARKのインターン活動を通して実感しています。

私は、駐在帯同中だからこそできることはないかと模索している中、同じように駐在帯同を経験している方々と一緒になにかしてみたいと思ったことがきっかけでCAREER MARKのインターンに参加しました。

広報PR業務は未経験。
知識やノウハウはインターネットや本を読むことで得られることもありますが、
実際に手を動かしながら頭を使いながら、実践するからこその学びや気づきを得られる環境はありがたいなと日々思っています。
CAREER MARKの活動を世界の駐在妻のみなさんに広めていきたいと今回のイベントに参加して改めて感じています。

そして現在、CAREER MARKではインターン4期生を募集しています。
広報PRの仕事、発信することに興味がある方、CAREER MARKの理念に共感できる方
など一緒に活動できる仲間をお待ちしております!

CAREER MARK インターン4期生募集説明会
2021年11月18日(木) 16:30~18:00
(オンライン開催。時差により参加ができない場合は後日録画共有いたします。)
ご興味のある方はこちらまで>>
※募集は終了しました。

 

また、ハッシン会議ではPRコミュニティ、新規メンバー募集中です。
詳細・お申込みはこちらまで>>

※募集は終了しました。


【ハッシン会議】
全国のスタートアップ・中小企業・個人事業主の方で、広報PRを一過性のものと捉えず、
継続的に力を入れていきたいと考えている方を伴走するためのPRの学び舎=PRコミュニティです。

 

文:CAREER MARKインターン3期 松木有加

 

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駐在帯同をチャンスに!5つのポイント

駐在帯同を人生のチャンスに変えるコツ。
実は心の持ち方にありそうです。
「駐在妻のもやもや、どうしたらいいですか?」
「駐在帯同期間、何をしたらいいですか?」
に続き、現在自分も駐在帯同中のキャリアコンサルタントが、心の専門家である臨床心理士の先生にお話を伺いました。

最終回の今回は、これまでの内容を心理学の観点からまとめていただきました!
最後に詳しい説明もありますので、ぜひご覧ください。

帰国後の仕事のためだけでなく、駐在妻がこれからの時代を、強くしなやかに生き抜くためのヒントをたくさんいただきましたよ。
ぜひぜひ参考にしてくださいね!

臨床心理士 原田 舞香 様

◇プロフィール◇
原田 舞香 (はらだ まいか)様
臨床心理士、公認心理師。
専門は海外在住日本人のメンタルヘルス対策、女性のライフキャリア支援、勤労者のメンタルへルス対策、及びこれらの関する研究。

2009年~2015年:中国・北京市に駐在帯同
2017年:駐在妻ライフキャリア研究所 開設
2018年:シンガポールに駐在帯同
現在、シンガポール日本人会クリニックに臨床心理士・公認心理師として勤務(非常勤)

◇聞き手◇
小橋 友美
CAREER MARK キャリアコンサルタント) 

心理学から学ぶ、駐在帯同を充実させるコツ

【原田さん(※以下敬称略)】
1回目の「駐在妻のもやもや、どうしたらいいですか?」でお話した心理学における「自己決定理論(※1)のように、人間は「内発的動機付け」と言って、自分自身の意思で決めたことには強いモチベーションを持って関わることが出来る可能性を持っています。

これに加えて心理学では「計画された偶発性(プランドハプンスタンス)理論(※2)もあります。
これは、あらゆる出来事を、「計画された偶発性」によるもの、むしろよい転機と捉え、その時出来る精一杯のことに取り組み、その一見ネガティブな経験を、ポジティブなものに変えて行こうという考え方をすることが、人生により良い影響をもたらすと考えられる理論です。

これらの考えを持って、海外生活をブランクと捉えずに、自分自身の今後の人生にとって有意義な時間にする、という気持ちで考えて行けるようになることで、元気になっていく可能性があると思います。

【小橋】
「計画された偶発性」、これは駐在妻にとっても、とても役に立つ考え方ですね!!

私も以前は、仕事でも子育てでも、計画を立てて目標を達成することが成功と考えていました。
でも駐在帯同となるといろいろなことが思い通りに行かず、見通しすら立てられないのですよね。
そうした自分の努力が及ばない環境であっても、オープンマインドでその時できることに精一杯取り組むことが、自分を元気にしてくれるということですね。

実はこれまでCAREER MARKのセミナーでは企業経営者の方にご登壇いただいたのですが、その際、駐在妻の強みとして「アンラーニング(※3)「レジリエンス(※4)を教えていただいたのです。
こうした力は変化の早い今のビジネス環境で、企業から強く求められるスキルということも教えていただきました!
先ほど原田先生がおっしゃっていた「ネガティブ・ケイパビリティ(※5)もそうではないかなと思います。


【原田】
なるほど、若干異なっていても、経営者の方々の視点は非常に興味深く、そして大変勉強になります。

昨今のように、先の見通しがたたないコロナ禍だからこそ、「アンラーニング」や「レジリエンス」のスキルを持った駐在妻たちが強みを生かしてビジネス現場で貢献して行くことが出来る、と私も思います。

【小橋】おっしゃる通りだと思います。心の専門家である原田先生の言葉、勇気づけられる方がたくさんいると思います!!
どうもありがとうございました。

原田先生、たくさんのアドバイスをありがとうございました。

・・・

あとがき:駐在帯同はこれまでにない成長のチャンスにできる

私は自分自身が駐在帯同する前、帰国後の駐在妻について不思議に思うことがありました。
それは、多くの方が仕事への不安を口にしながらも、自分自身のあり方というか、ご自分そのものには静かな自信を持てていることです。
どうしたらこうなれるのだろう?と思っていました。

でもこうして原田先生のお話を聞く中で、そうした自分への自信とは

「私は、会社が変わってもやっていける」

「私は、環境が変わっても対応できる」

「私は、不安を感じてもうまくやっていける」

という変化に動じない気持ちだったのだなと確信しました。

見通しの立たない未来でも受け入れ、変化する自分も受け入れて前進できた、という駐在帯同中の経験があったからこその自信だったのですね。

私自身、言葉も文化も違う海外で生活を立ち上げ、日々の暮らしを継続させていくことは、これまでの仕事とはまた違った人間的成長をもたらしてくれると感じています。

こうした人間的成長の期間を「ただのブランク」としてしまうことはもったいないですね。

それをどう仕事に活かすかという点でも、私たちCAREER MARKはサポートしていきたいと思います。

・・・

臨床心理士の先生に聞く駐在帯同の活かし方、いかがだったでしょうか?

「駐在帯同=キャリアの終わり」と考えるのではなく、これまでとはまた違う成長ができる転機ととらえると、見える景色も変わってきそうですね。

原田先生、どうもありがとうございました。

・・・

駐在帯同をブランクにしない!5つのヒント

(原田舞香・CAREER MARK共同監修)

1.自己決定理論(Self Determination Theory)
人は、内なる心理的欲求に駆り立てられて自由選択的に行動するものであり、課題遂行に伴う自由選択や、課題に取り組むことそれ自体が喜びや満足につながって行動に動機づけられることを内発性動機づけ(intrinsic motivation)と呼ぶ。自己決定理論はこの概念を発展させ、ある行動に対する自己決定性の高さがパフォーマンスや精神的健康に影響を及ぼすという理論。

参考文献:溝上慎一 2018 溝上慎一の教育論 内発的動機付け・自己決定理論URL:http://smizok.net/education/subpages/aglo_00010(intrinsic-motivation&SDT).html

2.計画された偶発性(プランドハプンスタンス)理論(Planned happenstance theory)
予期せぬ出来事がキャリアや人生におけるあらゆることの機会に結び付く、キャリアや人生を前に進めるような予想外の出来事が起きて、それが本物のチャンスに変わることがあるという考え方で、「それが本物のチャンスに変わる時には、その人自身が重要な役割を果たしている」と考えられている理論。

引用文献:John D. Krumboltz,Ph.D.& Al S. Levin,Ed.D. 2004 Luck is No Accident:Making the Most of Happenstance in Your Life and Career.:Impact Publishers.(J.D.クランボルツ・A.S.レヴィン著 花田光世・大木紀子・宮地夕紀子訳 2005 その幸運は偶然ではないんです! ダイヤモンド社)

3.アンラーニング
「学習棄却」とも訳される。一度学習した知識や価値観を見直し、不要なものを捨てて新たに学び直せるスキル。
変化の激しい現在のビジネス環境ではこれまでの知識や過去の成功体験に頼ったやり方では対応できなくなっており、こうした変化に対応できる力が重要なビジネススキルとして注目を集めている。
駐在妻の持つ「アンラーニング力」について(CAREER MARKセミナーから)https://laxic.me/column/2019/12/c_16_7

4.レジリエンス
心理学の側面から「折れない心」「回復力」を意味する言葉。
困難な状態でも落ち着いて受け止め、適応し、復活できるスキル。しなやかな心で目の前の出来事に対応できる力。
駐在妻の持つ「レジリエンス」について(CAREER MARKセミナーから)
https://himemama.com/repo-himemama-laxic-2ndseason-last/

5.ネガティブ・ケイパビリティ(negative capability)
どうにも答えの出ない、どうにも対処のしようのない事態に耐える能力、性急に証明や理由を求めずに、不確実さや不思議さ、懐疑の中にいることができる能力。

参考文献:帚木蓬生 2017 ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力 朝日新聞出版

・・・

ここまでお読みくださってありがとうございます!
第1回目、第2回目はこちらから!
駐在妻、そしてブランクに悩むすべてのみなさんの励みになればうれしいです。

◆第1回:「駐在妻のもやもや、どうしたらいいですか?臨床心理士の先生に聞きました」
◆第2回:「駐在帯同期間、何をしたらいいですか?」
◆第3回:「駐在帯同をチャンスに!5つのポイント」

 

文:CAREER MARK キャリアコンサルタント 小橋友美

 

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駐在帯同期間、何をしたらいいですか?

駐在妻のもやもや、不安・・・。誰にも話せない気持ちを、駐妻キャリア支援CAREER MARKのキャリアコンサルタントが、心の専門家である臨床心理士の先生に聞きました。
前回の「駐在妻のもやもや、どうしたらいいですか?」に引き続き、2回目のインタビューです。

臨床心理士 原田 舞香 様

◇プロフィール◇
原田 舞香 (はらだ まいか)様
臨床心理士、公認心理師。
専門は海外在住日本人のメンタルヘルス対策、女性のライフキャリア支援、勤労者のメンタルへルス対策、及びこれらの関する研究。

2009年~2015年:中国・北京市に駐在帯同
2017年:駐在妻ライフキャリア研究所 開設
2018年:シンガポールに駐在帯同
現在、シンガポール日本人会クリニックに臨床心理士・公認心理師として勤務(非常勤)

◇聞き手◇
小橋 友美
CAREER MARK キャリアコンサルタント) 

悩みの正体はアイデンティティ・クライシス

【小橋】
「渡航前は海外生活にワクワクしていたのに、いざ始まってみたら、日本のもと同僚と比較して焦ったり落ち込んでばかり。仕事をしていない自分はいったい何の価値があるのだろう…。」
そんな悩みをたくさん聞いてきました。

自分自身がわからなくなる、という意味で一種の
「アイデンティティ・クライシス」「アイデンティティ・ロス」
と考えておりますが、こうした状態から元気を取り戻すにはどうしたらいいのでしょうか?
やはり働き始めることでしか解決しないのでしょうか?

【原田さん(以下、敬称略】
渡航前は、海外生活でこんなことをしよう!と海外駐在を前向きに捉え、様々な計画を立てていた方も、いざ始まってみると、海外生活が思ったようではなかったということがあると思います。

時として、それは日本人社会が狭すぎることや、配偶者と同じ勤務先の奥様会の暗黙のルールなど、外部からは見えにくいものが要因であることが多々あります。

そのために自己実現をする場や自分自身の存在価値を認められる場所が一瞬なくなってしまったように感じられ本当はなくなってなど、いないですよ)、
自分自身のアイデンティティを見失ってしまっていることにより起こっている状況です
とりわけ駐在帯同前までバリバリ働いてきた駐在妻さんに多く見られます。

【小橋】
まさにそうなんです。
渡航前には「自分のアイデンティティとは何か」なんて考えることもほとんどないと思うのです。
でもいざ海外に来てみたら、知らなった制約や現実もあって、自分らしくいられる場所がない、存在価値を認めてもらえる場所がない、と感じてしまうのです。

こんなこと今まで感じたことのない不安ですし、思ってもいなかった感情だから戸惑ってしまうんですよね。
これはやはり自分のアイデンティティを見失っている状態なんですね。

でも、だからと言って自分の存在価値がなくなった訳でない…これは肝に銘じておきたいです!

大切なのは「働くこと」より「自分で決めること」

【小橋】
また、仕事については、確かに「仕事をしていない=自分は何もしていない」と感じてしまう人もたくさんいると思います。
私はこれは、これまで一生懸命仕事してきたからこその当たり前の気持ちだと思うんです。
仕事と離れて初めて、これまでは仕事を通じて存在価値を感じていたんだと気づいたり、それが自分らしい姿だった、そういう状態に戻れたら・・・と感じる人は多いと思います。

こうした悩みやもやもやは、やはり働くことでしか解消できないのでしょうか?

【原田】
現在、駐在妻が合法的に働くことの出来る国はほんのわずかです。
しかもその場合でも配偶者の勤務先が帯同配偶者の就労を禁じていたり、暗黙のルールで「働けない」と言われていることもあって、駐在妻でありながら働くことには一定の壁が存在しています。
近年はリモートワークの出来るケースも出て来ているようですが、必ずしもすべての駐在国・駐在妻さんが可能なわけではありません。

もちろん働けるならそれに越したことはないものの、その時、現地で出来る何かしら、自分自身が有意義だと感じられる活動を精一杯することが推奨されています。
その内容は、現地語の習得、ボランティア活動、これまで取り組んできた趣味活動の更なるスキルアップ、現地で新しく取り組む趣味活動、現地でこれまでお付き合いのなかったような新しい人間関係の開拓、オンラインで出来るボランティア活動等の中で、その時のご自身にあったものを見つけられるとよいでしょう。

【小橋】
そうなのですね。つい「日本にいたときのように仕事をしなければ」と思ってしまいそうですが、仕事に限らず「自分自身が有意義だと感じられる活動」が大事なのですね。

確かに私たちが再就職をサポートをしてきた駐在妻さんも、現地で働いた経験が必ず帰国後の仕事を保証してくれるかと言うとそうでもないのです。
それはプラス材料には違いないのですが、それ以上に
「何ができるか」
「何がしたいか」
ということを自分自身で把握でき、そして発揮できる
ことが求められます。

例えば、現地の仕事で得た経験やスキルを言語化して、
今度はこんな仕事がしたい!私はこんなことができる!
と言える人はすぐに再就職できる
ことが多いのです。

でも、せっかくがんばって仕事をしても、それがどんな経験やスキルを自分にもたらしてくれたか、自分が何ができるようになったかが伝えられないと、なかなか転職市場では評価されません。

考えてみると、こうしたことが言えるのも自己決定の成果なんですね。

仕事さえできればすべてがうまくいくというわけではないので、むしろ自分自身が何をしたいか、何ができるか、そういったことを見つめ直すチャンスととらえて帯同期間を過ごすという大きな気持ちがいいように思います。

「仕事ではなくても得られることはある」という視点を持つことが大事なんですね。

それにしても、自己決定することが自分自身を保つためにそれほどまでに大切なことだとは…。
驚きました。

仕事以外の場所で身につけた力が未来で実を結ぶ

【原田】
私自身も前の駐在国では働くことの壁があり、自分の専門性に関わることからそうでないことまで、様々なボランティア活動に取り組みました。

この経験が後々役に立ち、10年後になって実を結びつつあると感じています。そして、かつての駐在妻仲間の方でも、その時習得した語学や特技を活かして数年後、大きな飛躍を遂げている方が何名かいらっしゃいます。

【小橋】
原田さんもボランティア活動をされていたのですね!
実際にどんなことをされていましたか?また、それがどんな風に役立ったと感じていらっしゃいますか?

【原田】
私の場合は駐在妻の一事例にすぎませんが、中国・北京在住の時、いくつかのボランティア活動に携わっていました。やはりそのタイミングで、その土地に住んでいるならではの経験をすることが有意義だったと思い、 その内の一つ、当時北京在住の日本人女性のボランティアグループの活動に参加していたことについてご紹介します。

このグループは、2011年、東日本大震災被害者支援のために、バザーをして義援金を送るボランティアとして立ち上がり、在住日本人女性の支援に関することも一部手掛けていました。
まずはこのグループに集まってくるメンバーは「何か人の役に立つ活動をしたい」と士気の高い方がほとんどであり、良い刺激をいただきました。

私は不器用なため、バザーの際の手作り作品の出品は、簡単なお手伝いしかしていませんでしたが、その後一時期日本で子ども達を幼稚園に通わせていた際の手作りグッズの作成へのハードルを低くしてくれたように思います。
そうした活動に携わる中で、コミュニティにとってニーズがあり、なおかつ自分の得意なことを活かした活動に携わりたい、と考え、このグループ内で、北京に住み始めて1年以内の方がだれでも参加して頂けるグループを立ち上げました。

この活動は私が本帰国した後にも他の方が継続して下さったと聞いており、コミュニティのお役に立てたことを嬉しく思っています。そしてグループのマネジメントをされる代表者の方がメンバーと関わる御姿や、マインドもまた、その後の自分にとって、ロールモデルとなったと思います。

現在ですとコロナ禍ということもあり、現地でリアルに集まってのボランティア活動は難しいかも知れませんが、規制緩和後は活動を再開される場合がほとんどかと思いますので、一度アクセスしてみてもよいかと思います。それから、最近はオンライン上でも活動の出来るボランティアグループが多くあります。現地ならではのボランティアと、オンラインで広くつながるボランティア、両方参加されてもよいと思いますよ。

私の場合はいずれの経験も、一番大きかったのは人脈を作ることが出来たことだったと思います。これらの人脈は、10年後の今、自分の生活や仕事、人生に生かされてと思います。海外生活の初めの頃はその土地の生活に慣れるので精一杯ですが、少し落ち着き始めたら、是非ご検討くださいね。

【小橋】
とても励みになるお話をありがとうございます。
確かに、ボランティアだとしても自分の専門性を活かせる場所があるとは限りませんよね。それでも何か始めてみることで新しい出会いがあるのですね。

そして仕事とはまた違う場だからこそ、人脈はもちろん、マネジメント能力や新しい分野のスキルなど新しいチカラを身につけるチャンスと言うこともできますね!

実はCAREER MARKもインターンと部活という形で、世界中の駐在妻が集まって一緒に何かを作り上げる機会を提供しています。
みなさんの様子を見ていると、それぞれのバックグラントが違うからこそ教え合い刺激を受け合って人間的に大きな成長をしているんですよ。

そうした経験は必ず仕事に役立ちますよね。私たちキャリアコンサルタントも帰国後の再就職活動でアピールできるようにサポートをしています。

CAREER MARKインターン4期生のみなさん
(インターンnoteはこちらから!:https://note.com/careermark_pr

             ・・・

いかがでしたか?
悩みの正体は「アイデンティティ・クライシス」、
仕事でなくても現地でできる何かを通じて成長できる、などなど、
心の専門家である原田先生のお話に、私は深くうなずくことばかりでした。

この記事が、キャリアに悩む駐在妻・もと駐在妻のみなさんのヒントになることを祈っています。

次の最終回では、「駐在帯同をチャンスに変える」をテーマに、引き続き原田先生にお話を伺います!

◆第1回:「駐在妻のもやもや、どうしたらいいですか?臨床心理士の先生に聞きました」
◆第2回:「駐在帯同期間、何をしたらいいですか?」
◆第3回:「駐在帯同をチャンスに!5つのポイント

 

文:CAREER MARK キャリアコンサルタント 小橋友美

 

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駐在妻のもやもや、どうしたらいいですか?臨床心理士の先生に聞きました

駐在妻の暮らしは華やかなように見えて、実は「もやもやする」「不安になる」という話をよく聞きます。
その悩みの正体はいったい何なのでしょうか?また、解決策はあるのでしょうか。
駐在妻のキャリアを支援しているCAREER MARKが、
ご自身も駐在妻の経験があり、現在はシンガポールで勤務されている臨床心理士の原田先生に伺いました。

3回にわたって、原田先生とキャリアコンサルタントとのインタビュー対談をお送りします!

臨床心理士 原田 舞香 様

◇プロフィール◇
原田 舞香 (はらだ まいか)様
臨床心理士、公認心理師。
専門は海外在住日本人のメンタルヘルス対策、女性のライフキャリア支援、勤労者のメンタルへルス対策、及びこれらに関する研究。

2009年~2015年:中国・北京市に駐在帯同
2017年:駐在妻ライフキャリア研究所 開設
2018年:シンガポールに駐在帯同
現在、シンガポール日本人会クリニックに臨床心理士・公認心理師として勤務(非常勤)

◇聞き手◇
小橋 友美
CAREER MARK キャリアコンサルタント) 

「駐在妻のもやもやの正体、一体なんなのでしょうか?」


【小橋】
これまでCAREER MARKでは、セミナーや個別相談を通じてたくさんの駐在妻から「もやもやする」という声を聞いてきました。
そのほとんどが「恵まれているはずなのに苦しい」「このままでいいのか焦るけど、何をしたらいいかわからない」という漠然とした不安です。この気持ちは何だと思われますか?

【原田先生(以下、敬称略)】
私は駐在妻さん達のもやもやの正体、漠然とした不安は、主に海外生活が自分で決定したことではないことと、将来の見通しがつかないことによるものが多いように感じています。

配偶者の駐在に帯同して海外で生活を始めたことは、多くの駐在妻の方にとって、自分の意思とは別のものです。

心理学では「自己決定理論」というものがあり、簡単に説明しますと、自分自身で決定した物事に対してはモチベーションを高く持って取り組み、高いパフォーマンスを発揮することが出来る一方、そうでないことは、高いモチベーションやパフォーマンスを保ちにくいと考えられています。それから、自分自身の将来の見通しが立たないなど、将来がどのようになるか分からない状況でも、人間は不安になりやすいと考えられており、ごく自然な反応と考えられます。

【小橋】
「自分で決定したことではない」という言葉にハッとしました。
確かに夫の駐在についていくと決めたのは自分です。
でもその決断をするまでに、自分ではどうしようもない現実があることを知り、様々な葛藤があった人が多いと思います。

特に会社を辞めるかどうかについては、みんなすごく悩んだと思うんです。辞める決断をしたとしてもすべてを納得したわけではなく、ほとんど時間切れのような形でそう決めたというのが実際のところではないかと感じています。
結果としてその葛藤やもやもやを抱えたまま海外生活がスタートした、というのが多くの駐在妻の現実ではないかな、というのが私の実感です。

また将来の見通しがつかないことの不安についてですが、確かにCAREER MARKで出会った多くの駐在妻さんも口にされていました。
特にCAREER MARKを利用される駐在妻のみなさんは「また仕事はできるのだろうか」という不安もお持ちの方が多いです。
ここ数年は改善されてきているものの、それでも日本の転職市場では仕事をしていない期間を「ブランク」と呼んで大きくマイナス評価する傾向にあります。
ブランク期間があっても働きたいという意欲ある人への専門的なサポートやサービスもほとんどありませんでした。

何年後に日本に帰れるのかわからないという生活面での見通しがつかないことに加え、仕事復帰への見通しの難しさも、より一層もやもやを生み出す背景なのでしょうね。

【原田】
そうですね、葛藤の末の苦渋の決断・やむを得ない選択だったからこそ、配偶者や周囲に「でも、仕事を辞めて海外駐在に帯同したのを決めたのは自分でしょ?」と言われ、傷ついている方もおられると思います。

後述しているように「ブランク」をご自分にとってのブランクではない、有意義な時間にして行くことも必要ですが、とりわけ昨年以降のコロナ禍では、駐在妻に限らず先の見通しが付かないながらも「何とかなるさ!」という見通しが立たない状況を受け容れて過ごしていく力(ネガティブ・ケイパビリティ)も求められています

こういった個々人の努力だけではなく、仰るように日本の転職市場もまた、仕事をしていない期間を「ブランク」と捉え、女性の再就職へのハードルが未だ高いという面もあるので、大きなテーマにはなりますが。
社会の変革も必要だと考えられますね。

CAREER MARK セミナーの様子(2018年)

落ち込みやすいのはどんな人?

【小橋】
駐在帯同のように環境が変化したとき、落ち込みやすい人とそうでない人はいますか?また性格のタイプなど傾向はありますか?

【原田】
元来どうしてもネガティブに考えがちな方、心配症の方、自分を周囲の人と比べがちな方が比較的落ち込みやすいように感じます。
その一方で、日本ではお仕事を精力的にこなしていた活動的な方であっても、駐在帯同に伴い、後述の「アイデンティティ・ロス」の問題で落ち込む場合もあるようです。

【小橋】
と言うことは、どんな方でも状況によっては落ち込むことはあるということですね。

CAREER MARKのセミナーでも紹介させていただきましたが、原田先生が寄稿されていた「異文化適応過程(※1)」がとても勉強になりました。この話を紹介することで、
「落ち込むのは自分が弱いせいではないのですね」
「自然な反応なんですね」
というコメントをセミナー参加者からもらうことも多いです。

【原田】
そのように、皆様のお役に立っていると伺い、大変嬉しく思います。

(※1)原田舞香さん「海外在住日本人の『異文化適応過程』」より
(シンガポール日本人会機関紙「南十字星」2019年2月号)

【異文化適応過程について】
①ハネムーン期:新しい環境のすべてが目新しく、前向きに適応しようと頑張る時期
②ショック期:海外生活の限界に失望したり狭い日本人社会のストレスを感じる時期
③回復期:葛藤や努力、周囲のサポートなどで徐々に適応していく時期
④適応期:多少の波はあるもののおおむね安定した生活が過ごせる時期

夫や子どもが落ち込んでいるときは

【小橋】
駐在員やその子どもでも、もやもやしたり落ち込んだりすることはあるのでしょうか?またどんな理由でそうなるのでしょうか?

【原田】
駐在員にとっても、子ども達にとっても、環境の変化は大きいものです。

駐在員は基本的に、朝から晩まで、週5日間、仕事に時間を費やし、コロナ前は職場で過ごしていました。
様々なケースがありますが、とりわけ言葉の壁の問題に向き合うこと、ローカルスタッフとの文化や習慣の違いにストレスを感じ、もやもやしたり落ち込んだりすることが多いと考えられます。

お子さん達にとっても、一日の多くを過ごす園や学校が変わることで、先生や友達が変わり、新しい人間関係を構築して行かなければならないということは大きなストレスとなります。
現地校やインターナショナルスクールなど、日本語以外で教育を受ける場合は、年齢が上がる程、言葉の壁の問題は大きくなって来るようです。お子さんの個性や、その環境によって様々なケースが考えられますが、こういったことからストレスを受け、もやもやや落ち込む原因になっていると考えられます。

【小橋】
駐在員である配偶者も、そして子供も、環境の変化…人間関係や文化・習慣の変化でストレスを感じやすいのですね。
違う国で暮らすというのは、やっぱり誰にとっても大変なことなんだなと感じてしまいました。

ただ駐在妻として生活していると、自分自身がワンオペ育児だったり、アイデンティティ・クライシスだったりして、家族に対して余裕ある気持ちで接することは難しいときもあります。

それでもやっぱり、家族で元気に楽しく暮らしたい!と思います。

配偶者や子供がストレスで辛そうなとき、どんな声掛けや対応を心がければよいでしょうか。

【原田】
そうですね、まずは配偶者やお子さん方にとっても、新しい環境での生活に適応していくということは、ストレスが溜まって当然だ、ということを理解し、ご本人たちに「だから、無理しなくていいよ」と伝えてあげることでしょうか。

そして私たち駐在妻も新しい環境・新しい生活に精一杯な状況ですので、その言葉はそっくりそのまま、ご自身にも伝えてあげてよいのです

家事が辛い時は、家が散らかっていたっていい。食事の支度が面倒な時は、(居住国にも拠りますが)デリバリーや、手抜き料理だって構わないのです。
そもそも、海外にいながら家族の口に合う料理を用意することには、日本では考えられないほど労力が必要だったりしますよね。お子さんや配偶者の方が過ごすご家庭のかなめとなる駐在妻さんご自身にとって、ストレスを溜め過ぎず、心と身体の声に耳を傾け、ゆとりをもって過ごせることを最優先に考えてくださいね。

【小橋】
温かいお言葉をありがとうございます。
せっかくの海外生活だから、つい楽しまないと!とか、頑張らないと!と思ってしまうのですが、おっしゃるとおり日本と同じように家事をするだけでも大変なことなんですよね。
家族に自分自身にも、心と身体の声に耳を傾けてあげたいと思います。

専門家かつ駐在妻ならではのアドバイスには心を軽くしてくれる魔法の言葉がたくさん。
原田先生、ありがとうございます。


・・・

最後まで読んでくださってありがとうございました。
この記事があなたのもやもやの正体を知る手助けになればうれしいです!

次回は「駐在帯同期間、何をすればいいのでしょうか?」をテーマに、引き続き原田先生にお話を伺います!

◆第1回:「駐在妻のもやもや、どうしたらいいですか?臨床心理士の先生に聞きました」
◆第2回:「駐在帯同期間、何をしたらいいですか?」

◆第3回:「駐在帯同をチャンスに!5つのポイント」

 

文:CAREER MARK キャリアコンサルタント 小橋友美

 

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駐在帯同の経験をどう活かす?「働き続けるために一歩ずつ」

もと駐在妻の再就職リアルストーリー Vol.1

パートナーの海外駐在によって仕事を辞めて日本を離れた女性たち。
「駐在妻」と呼ばれる彼女たちのなかには、帰国後にまた仕事に戻る方もたくさんいます。
そんな彼女たちは、駐在帯同期間をどう過ごしたのでしょうか。
駐在帯同をブランクにしなかったひとりひとりのストーリーです。

 

◆プロフィール◆※インタビュー時点
お名前:平野桃子さん
年齢:38歳

・2006年: 不動産会社(株)ザイマックスへ入社
(営業、コンサルティング、売買、プロパティマネジメント業務等)
・2015年: 第一子産休
・2017年:育休中に夫の海外転勤が決まり、復職せず退職
・2017年4月~2019年1月:駐在帯同/イギリス・ロンドン
・2017年11月~2018年9月:ロンドンの不動産会社Excel property services に勤務。住宅の賃貸管理業務、広告作成などを担当
・2019年:大手メーカー系列の不動産管理会社 入社
・2021年:(株)ザイマックス不動産投資顧問 入社(正社員・フルタイム)
現在、アセットマネジメント業務の担当として、国内外の投資家からオフィスビルやホテルなどの不動産資産の運用業務を受託し、日々マネジメントを行っている。

 

駐在帯同を通じて物事の見方が劇的に変わった


――駐在帯同先のイギリスではどんなことをしていましたか?

平野さん(以下省略):いろいろとやってみました。友達作りも英語学習も観光も。現地就労もしました。

 

【駐在帯同中にしたこと】
①近所の人と仲良くなること
・きっかけ:帯同初期は知り合いが全然いなくて孤独だったため。また異文化の友達がほしかったため
・感想:同じアパートのファミリー(英・米国人)と一生続きそうな仲になり、今とても嬉しく思っている。

 

②英語学習(現地の英語学校)
・きっかけ:英語がなかなか上達しなかったので、留学生のように修行してみようと思った
・感想:一人で色々な場所にでかけてみて(esolクラスや語学学校)、英語を「使う」訓練ができて上達したのでやって良かった。現地でしかできない経験だったと思う。

 

③英語学習(駐在妻向けの英語学校)
・きっかけ:駐在妻たちと仲良くなりたかった
・感想:先生とクラスの仲間に恵まれて、穏やかで癒しの時間を過ごせた。現地の生活において、やはり日本人の友人も大切だと思った。


④子供を現地のナーサリーに預ける
・きっかけ:子供が英語を習得していく様を見てみたかった
・感想:3歳半になると文章をしゃべったり、人の会話に口出しできるほど英語を話せている子供を見て感動した。(帰国後は英語を忘れてしまいましたが・・・)

 

⑤日本人コミュニティに顔を出す(Himemama)
・きっかけ:友達の紹介で。私のように色々悩んだ日本人に、自分の経験を伝えることで役に立てれば・・と思った
・感想:フィードバック頂くことがあまりないのでどれくらい人の役に立ってるかは分からないものの、たぶん誰かの役に立っているはず・・。少しでもお役に立てたらそれで十分です。

⑥現地就労(不動産会社でアルバイト)
・きっかけ:現地での生活でなかなか充実感を得られずモヤモヤ悩んでいた時に、まずは仕事してみようと思い立った(帯同前から興味はあった)
・感想:職場の仲間に恵まれ、充実した1年を過ごすことができた。人生の中でも大きな冒険に入るし、大切な思い出です。英語のレベルは十分ではなかったけど、あのとき勇気を出して面接に行ってみて良かった。


⑦ボランティアや就業に関する情報収集
・きっかけ:次は何しようかな?と思って常に情報収集していた
・感想:他の友人とも情報シェア出来てよかった

 

⑧国内観光(観光地やミュージカル・バレエ等)、周辺国旅行
・きっかけ:まさに、「今しかできない」こと
・感想:どこに行くのもリーズナブルで、楽しい時間を家族・友人と過ごすことができた。もっと行っておけばよかった。

 

――かなり積極的に活動されたのですね!!いろいろな経験をされて、駐在帯同期間にはどんなスキルが培われたと思いますか?

平野:まず語学力です。スピーキング、リスニングはそれなりにできるようになりました。渡航前は全然だったんですが・・・。
また、これまで日本でしか生活したことが無かったのですが、初めて違う国で生活して、固定概念が一気に崩れたし、物事の見方が格段に広くなりました。政治・経済・宗教・教育・環境問題など、日頃報道される時事問題に関して、他の国はどうしているのか、日本は世界の中でどのような位置付けなのかとか、俯瞰的に考えるようになりました。

鉄道の本場のYorkで鉄道博物館に行きました



子どもに合わせてステップアップしていく働き方

――再就職のときの様子を教えてください。

平野:帰国してすぐの再就職活動では「ワークライフバランスをキープしながら働く」ことを軸にしました。子どもが小さいのは今だけなので、せっかくの家族の時間を大切にしたいという気持ちがあったからです。
最初の会社に入社を決めたのは、以前の仕事を通じて社長と旧知の仲であり、すぐに役に立てそうと感じたこともありますが、会社が自宅からとても通いやすいこと、フレックス制度と在宅勤務制度が整っているうえ残業削減にも全社的に力を入れていて、未就学児2人いる私でもやっていけそうかなと思えたことも大きな要因です。

ロンドンでのアルバイトと、この会社での経験によって、在宅勤務やフレックス制度等を活用すれば子どもがいてもフルタイムで働けるなと自信と手ごたえを得ることができました。
そこで今度は身に付けた英語をちゃんと活かせる仕事をしたいという気持ちが強くなり、今の会社に転職したのです。

駐在帯同期間を経て、自分の人生で何が大切なのか、何を優先すべきなのか、よく考えるようになりました。 子どもが小さいうちは海外出張も残業も難しいけれど、それですべての仕事ができなくなるわけではありません。 子どもが大きくなるのに合わせて、少しずつステップアップしていくのも働き続けるひとつの方法だと思います。

 

――確かに、帰国して最初の会社がすべてではないですよね。子どもの成長に合わせてステップアップしていく働き方、とても参考になります。
平野さんは最初から仕事探しは順調でしたか?

平野:帰国して、仕事を探そうと思ってとある大手の人材エージェントに相談したのですが、時短勤務希望だったため、
「今の日本では時短勤務の募集はほぼない。募集要項にある時間(例えば9時~18時)で応募できるようになったら応募してみて、面接で時短にできないかどうか交渉してみてほしい。」
と言われました。
そのため他の転職サイトもいろいろチェックしました。
小さい会社やベンチャー企業も検討したり実際に面接を受けたりしたのですが、カルチャーが合うかどうか、また求めるスキルにぴったり合うかどうかが決め手のようで、その部分でなかなか折り合いませんでした。

イギリスの保育園。ユダヤ教のお祭りを学ぶ図工です。

現地就労は自分でアピールしてこそ活きる

――子どもが小さいと勤務時間がネックになりがちですよね。
そんな中で平野さんは面接で何をアピールされたのでしょうか。
ロンドンの不動産会社でのアルバイト経験は、日本で再就職する際に評価されましたか?

平野:ロンドンの不動産会社で短期間でも働いたことはプラス材料にはなったと思いますが、この経験だけで採用されたわけではないと思います。
渡航前の仕事での経験、具体的には日本の不動産業界の商習慣やビジネスの仕組みを理解し実務経験があることなども大きく評価されました。

 

――同じ不動産業界での経験なのに、現地就労はそれほど注目されなかったのですか?

平野:いくつかの企業の面接に行ったのですが、「仕事で英語が使える(就業経験があり、TOEIC800点以上)」というところは注目してもらえたようですが、それ以外の現地就労での細かい職務内容については殆ど質問されませんでした。
ロンドンの不動産会社で担当していたのはバックオフィスで、それまでの仕事(法人営業やコンサルといったフロント業務)や帰国してから希望する仕事と違ったからというのも理由だろうとは思います。

逆に言えば、自分から「これができる」と伝わるようにアピールしない限り、海外で働いていてもそれだけで評価されるということではないんだなと思いました。

実は、そのイギリスの不動産会社で初めてバックオフィス業務を経験したんですが、自分には向かないなって思いました(笑) 仕事はこなせるけど、全然ワクワクしなくて・・・。それに気づけたのは大きな収穫だったと思います。

 

――それでは、再就職できた理由は何だと思いますか?面接などでどういう点をアピールして、どう評価されたと感じていますか?

平野:まず、渡航前に一生懸命働いていたことが評価されたと思います。
帰国して最初に就職した会社の社長は渡航前の仕事でお付き合いがあったので、勤務態度・営業実績・良好な人間関係など、前職での働きぶりを信頼してもらえました。

また、今の会社では英語人材を募集していたので、その点にマッチしました。
ただ、他に検討した会社でも英語が話せると尚可、と要項に記載がありましたが英語面接はどこもありませんでした。そういうことを考えると、やはり共通の指標となるやTOEICやIELTSのスコアを取っておくと分かりやすいPR材料になるかと思います。

ちなみに、会社によって求める英語のレベルには多少の差があると思いますが、選考過程では詳細が分からないことも多いのではと思います。
入社後、専門用語の使用頻度、会話スピード、アクセントなど、想定外のことも多々あるかもしれませんが、基礎的な英語力があれば、その後の応用は効くと思います。私は3か月くらいでようやく慣れました。

あとは面接や履歴書でやる気と誠実さは伝わったのではと思っています。
特に中途採用だと面接に進めるのは大きいですね。実際に会って話をするなかでこちらから伝えられるものもあるし、私自身もHPではわからなかった企業の雰囲気などを知ることができました。 そうした形でいくつかの会社に面接に行き、お互い理解しあえたので今の会社に入社を決めました。

ロンドンの街並み

――最後に、再就職を考えている駐在妻・もと駐在妻のみなさんにメッセージをお願いします!

駐在生活お疲れさまです。 時間が許せば、あまり限定せずに色々な企業の面接を受けることをおすすめします。
私は帰国後、今2社目ですが、会社が変わると国が変わったようにカルチャーが違うものだなと実感しています。
駐在生活は環境を選べず従うしかありませんでしたが、帰国後の働く環境は自分で選べます。そして皆さんが日本を離れている間に、多様な働き方の導入がぐっと進んでいるかと思います(ワークフロムホーム、時短勤務、フレックス制、残業規制など)。
2019年4月に働き方改革関連法が施行されたこともあり、欧米諸国にならって今後も色々な変化が出てくるのではと思います。
ちなみに私が帰国して一番驚いた変化は、働き方改革関連法で月45時間超の残業が禁止されたことです。私が今勤めている会社も、法律にしたがって、残業が多くならないように部署単位で気を付けています。仕事で体を壊しては元も子もないですし、実用的な制度ができたなと感じています。
再就職活動、うまくいくことを祈っています。自分の直感を信じて、新たな冒険を楽しんでくださいね。応援しています!

――平野さん、どうもありがとうございました!

 

インタビュー・文:CAREER MARK キャリアコンサルタント 小橋友美

 

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運営スタッフインタビュー vol.5 松浦 理恵

 

インターン生としてCAREER MARKをもっと知りたい!
と、始めた運営スタッフインタビューも5回目を迎えました。

過去のインタビュー記事
Vol. 1 鎌田薫はこちら
Vol. 2 三好怜子はこちら
Vol. 3 小橋友美はこちら
Vol. 4 林眞帆はこちら

5回目の今回はプロジェクトリーダーである松浦理恵のインタビューをレポートします。

イギリス・マンチェスター4年半、オランダ デン・ハーグ3年と計7年半の駐在帯同経験を持つの松浦。今回は、帯同中の生活や、帰国後の再就職活動を中心に聞きました!


【松浦理恵 プロフィール】※インタビュー時点
大学卒業後、外資系日用消費財メーカーにて消費者リサーチ、ボディソープ等のマーケティングに約7年間従事。北東アジアでのブランド構築に携わる。
育児休暇取得中に夫の駐在が決まり、イギリスとオランダに計7年半滞在。
2018年の本帰国後から、本プロジェクトにスタッフとして参画し、各企画運営のマネジメントや海外提携などを行う。
また9年の離職期間を経て、現在は企業のコーポレートセクレタリーとして情報システム・総務・新規事業のプロジェクト管理などバックオフィス業務に幅広く携わっている。


(インターン、以下略)

——本インタビューでは帯同中の生活や、現職に至るまでの帰国後の再就職活動を中心にお伺い出来ればと思います。

(松浦理恵、以下松浦)
どうぞ、よろしくお願いします。

 

新しい事業だから実感できる、やりがい ~現職~


——まず、現在のお仕事内容を教えて下さい。

(松浦)(株)ノヴィータではコーポレートセクレタリーとして、情報システムチームに所属中です。その他、会長のプロジェクト進捗管理、総務タスクや、新規事業のプロジェクトマネジメントなど、主としてバックオフィス業務を担当しています。

ノヴィータとFKJapanの共同事業であるCAREER MARKではプロジェクトリーダーとして、こちらもノヴィータと同様に、バックオフィス的業務をしています。
昨年はロンドンの語学学校との海外提携をリードするなど、幅広く携わっています。

——それが、英文履歴書(CV)添削や英語での模擬面接サポートする、「語学サポートサービス」に繋がるんですね。こちらは松浦さんが一から提携を進めたそうですね。

(松浦)元々は共同代表の鎌田と、語学学校Perfect Cuppa Englishの代表Victoriaさんの繋がりがあったことがきっかけですね。
私はその後、具体的に提携を進めるにあたっての、サービス設計、交渉、契約締結、その後のワークショップ企画においてVictoriaさん窓口となりリードさせていただきました。
契約締結まで、実にメール300通のやりとり。Victoriaさんの時差を感じさせないスピード感のお陰で、初回打ち合わせから3ヶ月で正式締結までこぎつけました。

——300通を3ヶ月で!ものすごいスピード感ですね。

(松浦)CARRER MARKは小規模だからこそ、仕事の範囲やスピードも違いますね。
大企業では、大きな組織の中の一人ですので、自分が知ることができる情報や自分が影響を与えられる範囲も限られていたのですが、現在は自分が介在することで広く影響を与えることができる点が魅力だと感じています。

 

苦労した再就職活動の末に挑んだケーキ屋のパート ~再就職活動から現在~

 

——イギリス、オランダと合計7年半の駐在帯同の経験をお持ちの松浦さんですが、帯同終了直後は、ケーキ屋さんでパートをされていたとお聞きしています。経緯も気になるのですが、まず本帰国後の再就職活動はいかがでしたか?

(松浦)「やっぱりそろそろ働きたい」との思いの反面、帯同期間中のブランクが約9年。焦りや不安も大きいものでした。
一社での経験しかなく、履歴書・職務経歴書を書くのも苦労しました。

数社に応募し、帯同中の様々な経験やボランティア活動を面接でアピールしても、結局は働いていないという『空白期間』としか見なされず、辛い思いをしましたね。
また、私は大手企業一社のみの経験しかなかったため、中小企業へ応募しても「うちのような小さなところは無理でしょ?」と端から決めつけられ、今までの職歴も否定されたような気がしました。

自分がそれに対してうまく切り返しできなかった、というのも良くなかった点だと思います。

——確かに帯同期間に仕事をしていない場合、その期間のことをどう職務履歴書に書くのか悩みますね。一言で『ブランク』として片付けられてしまうと、本当に辛い‥。でも、私達の方も、ポジティブに切り返せるよう準備が必要なんですね。

(松浦)そうですね。そんな中、近所のケーキ屋のパート募集の張り紙を目にし、プライドも何もかも捨てて一から挑戦する気持ちでケーキ製造に応募しました。働くにあたり、「パートだから言われたことしかやらない」という考えはしたくなかったので、『与えられた時間の中で最大限パフォーマンスを発揮をしたい』、と思いながら働いていました。
その結果、これまでパートが担当したことの無い種類のケーキ製造を任されるという大役を担うこともありました。楽しかったですね。

なにより、本物のパティシエの美しい動きを間近で見ることができますし、レシピ本や動画には載っていない、隠れたコツや技を知ることができ、とても勉強になりました。

——本格的ですね。松浦さんの真面目でまっすぐな人柄が伺えます。元々、ホームメイドに興味があったのですか?

(松浦)はい、帯同中、帰国後は「パン・お菓子教室」に通い、基礎を学びたいと思っていました。
イギリス帯同時代、私が住んでいたエリアにはケーキ屋がなく、まわりの日本人みんな「無ければ作る」人が大多数でしたし、どの家もオーブンが備わっているので、環境が整っていたというのもあります。
また、母や義母が手作りのお菓子を作っていたという影響も大きいですね。

——順調そうなケーキ屋のパートですが、辞めることになったきっかけは?

(松浦)1つは、三好社長からノヴィータの業務委託のお仕事をパート転換しないかと、声掛けをもらったことです。
元々、三好社長は中高時代の同級生でした。駐在帯同から帰ってきたタイミングで再就職活動をしている最中に、今度新しく駐在妻向けのプロジェクトを立ち上げるから参加してほしいという連絡がきて、それがCARRER MARKの前身「駐妻支援キャリアプロジェクト」。
その活動がきっかけで、ケーキ屋での仕事が半年ほど経過した頃、㈱ノヴィータのお仕事を業務委託で並行し始めていました。

2つ目は、ケーキ屋は年中無休のサービス業なので、日曜祝日も出勤。特に下の娘には寂しい思いをさせてしまっていたことです。

また、自分の中で「この環境でずっと働くのは自分の価値としてどうなのかな」と考えるようになったことも、辞めるという判断の後押しとなりました。
時給で働くということは、あくまでも「時間」で働くということ。自分なりに工夫して作業効率を上げると、早く上がれるのですが時給だと給料は減ってしまうんですよね。
そして、仕事の領域はあくまでもパートの範囲なので、余った時間に他の仕事を頼まれることはなく、手持ち無沙汰に。
「時間」で働く価値観と自分の気持ちにズレを感じるようになっていました。

——それでステージを変え、現在のお仕事に繋がっているんですね。それにしても三好社長との件は、本当に素敵な巡り合わせですね。

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2カ国での帯同生活 ~帯同中~

 
——では、帯同中のお話についてお聞きします。帯同中はどのようなことを考えて過ごされていましたか?

(松浦)外資系日用消費財メーカーの育児休業中に帯同が決まりました。
帯同中は育児休暇と休職制度を使い、生活拠点が海外に移っただけで生活スタイルに大きな違和感はありませんでした。休職中でも、自分がどこかに所属しているという拠り所があったのでそれほど不安はありませんでしたね。

その分、子供を介して日本人・イギリス人のママとも交流には積極的に参加しました。

オランダではイギリスの時以上に、現地のプレイグループを自ら調べて、日本人がいなくても積極的に出向き国際色豊かな生活を楽しみました。

——オランダでは、お子さんの学校の日本人会代表やクラスマムなど、本当にたくさんのコミュニティ活動をされていたそうですね。

(松浦)はい、coffee morningの企画、担任の先生への誕生日ギフト準備、その他にもinternational day で日本文化のプレゼン、出店企画なども行いました。

正直、大変なこともたくさんありました。中には消極的な人も多かった中、「情熱を持ってこんなに定期的に活動してくれたのは理恵さんが初めて」と言ってもらえたのがとても嬉しかったですね。自分が動くことで、新しい価値を生み出すことができたような気がしました。

——ご自身のキャリアについてはどうのように考えていましたか?

(松浦)帰国したら働いたほうがいいんだろうな、とぼんやり思い始めていました。
まだイギリスの帯同中、本帰国のタイミングが見えない中で、会社の休職制度も期限が見えてきたので、最終的には退職という形を選びました。やはり、その時は大きく不安を抱きましたね。

——今ままではどこかに帰れるという安心感がなくなってしまった感じでしょうか。

(松浦)まさにそうですね、拠り所が無くなってしまったように感じました。
でも、本帰国が決まった時はまずは家族と生活が優先で、自分のキャリアについては後回しでした。生活する場所や、子どもたちの学校のことで手一杯で、自分のことは二の次でしたね。

 

現在帯同中の方に伝えたい、自分の帯同生活を「言語化」する大切さ


——松浦さんから帯同中の駐在妻の方にアドバイスを送るとしたら、どんなことですか?

(松浦)私のことを反面教師だと思ってほしいですね。笑
まず、覚えているうちに、これまでの自分のキャリアの棚卸しをしておくことですね。

私のようにどこかに帰れるかもしれないという帰属意識を持って帯同生活を送っている場合は尚更ですが、一旦、仕事から離れてしまうとやってきたことを忘れてしまうんですね。

仕事の感覚もだんだん薄れてくるので、やってきたことが何に繋がるのかわからなくなってきます。上司からもらった大切な言葉だったり、自分の強みというのは、帯同生活中も定期的に振り返りをすることで、自分の誇りにもなるし、喪失感も埋められるのだと思います。

2つ目に、帯同生活を終える前・終えた後に、ちゃんと自分にとっての帯同生活を言語化すること。自分の強みを書き出して言語化し、だからこういう帯同生活を送ってきたんだと、自分自身に納得することです。

——確かに、何も考えずに過ごしているとあっという間に月日が立ちますし、振り返った時、「あれ、育児や家事はしていたけど…それ以外は何をしていたんだろう…」となりそうですね。

(松浦)まさにそうです。言語化することで自信が無いまま帰国し、再就職活動の面接でもアピールできない、という事態を避けられるのだと思います。これは、「有償の仕事をしていなかった自分」を認め、受け入れる、という意味でとても大事だと思います。

もしこういったことに悩んでいる駐在妻の方がいらっしゃるのであれば、ぜひCAREER MARKのサービスをおすすめしたいですね!

私自身もCARRER MARKのスピンオフ企画として、帯同中を振り返るワークショップをしてもらい、自分の中で「私の帯同生活はこれだ!」と言語化したことで、すっきり納得することができました。それ以降は、「あの7年半は何だったんだろう?」などとうじうじ考えることが一切なくなりました。

——確かに、私自身、帯同中の交友関係の中では、なかなか一歩踏み込んだ話まで及ばないことも多いです。ていねいに自分の考えを深めたり、言語化することが、次のステップには必要なんですね。参考になります!

 

駐在帯同を経て変化した価値観


——現在は、都心から1時間30分離れた郊外にお住まいだとか。駐在生活を経ての価値観の変化ですか?

(松浦)そうですね。住環境は大きく変わりました。帯同前は夫婦お互いの勤務地に30分以内で通勤可能な場所に住んでいたのですが、今は自然が多く、隣の家と密接していないゆったりした環境で生活をしたいと思い、郊外に住んでいます。今は、フローリングを貼ったり壁を塗ったり、キッチンを作ったりと新しい家を自分たちで作りながら生活しています!

——家を自分たちで!愛着がより一層湧きそうですね。ヨーロッパのゆったりした住環境から影響を受けたんですね。他に影響を受けた考え方はありますか?

(松浦)主人は、オランダでの働き方を目の当たりにし、オランダで主流だったリモートワークが日本でもいずれ広まるだろう、と考えていました。そのため、帰国後は「職場への近さ」よりも「住環境」を優先しました。コロナの影響でリモートワークが予想以上に早く定着したのは驚きましたが。私はありがたいことにフルフレックス&フルリモートで勤務させていただいています。

——フルフレックス&フルリモートは本当に魅力的な働き方ですね。最近はコロナの影響もあり在宅ワークの人気が高まっていますよね。

(松浦)多様な働き方を実現してくれているノヴィータに感謝の気持ちでいっぱいです。
その中で肝に命じていることが1つあるのですが、それは、リモートは働き方の手段に過ぎず目的では無いということです。職種や事業自体に意欲がまず無いと、再就職活動の際に「なぜその会社や業務内容でなくてはいけないのか」、熱意をもって明確に伝えられないですし、続けていくのは厳しいのが現実だと思います。

——なるほど、私達も履き違えいないよう、再就職活動時に参考にしたい考え方です。

 

いつも大切にしている言葉「困ったことは起こらない」


——最後に、大切にしている言葉や座右の銘を教えて下さい。

(松浦)「困ったことは起こらない」
渡航前、母が私の背中を押してくれた言葉なのですが、帯同中のみなさんにも贈りたい言葉です。この言葉を胸に刻んでいることで、困ったことが起こったとしてもなんとかあるし、なんとかする力が湧いてきます。今までの帯同生活や仕事においても、この言葉で乗り越えてくることができました。

 

後記

 

ヨーロッパでの帯同生活を経て、日本を俯瞰的に見ることで日本の良さを再認識したという松浦。日本文化や季節の移ろいを愛でる意識も高まり、着付け教室に通ったり、お彼岸におはぎを作ってみたりしているそう。海外で日本のことを紹介する時に、行事の背景や意味の理解が大切だと実感したとのことでした。

プロジェクト進捗管理等、バックオフィス的業務を着実に遂行している冷静沈着なイメージだった松浦ですが、それに加え、パン・お菓子作り教室や着付け教室に通ったり、家族で家を創ったり、帯同中たくさんの活動をしたりと、多趣味でパワフルな一面を垣間見られたインタビューでした。

そして、駐在生活でアンテナを広げ、一つひとつの経験をしっかりと吸収し、ご自身の糧にしてきた林の芯の強さをぜひ見習いたいな、とひしひしと感じました。

駐在生活をステップにして、帯同生活中の自分を認め自信を持つこと、家族と対話し自分たちがより心地よいと思う生活を楽しむこと。帯同後のあり方のひとつの理想のようなものに巡り会えたような気がしました。

帯同経験がブランクと見なされ、持てる能力を発揮しきれていなかった松浦はまさに、CARRER MARKが支援したい駐在妻像そのものかもしれません。
自分が経験したからこそ伝えたい、という松浦。
「CARRER MARKを駐在妻がキャリアに悩んだら必ず立ち寄る場所にしたい」という強い思いがCARRER MARKの基盤を支えているのだ、と確信しました。

 

文:CAREER MARKインターン3期 廣瀬望

 

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