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渡航前の仕事も、帯同中の活動も、すべてが今につながっている

もと駐在妻の再就職リアルストーリーVol.7(後編)

パートナーの海外駐在によって仕事をやめて日本を離れた女性たち。「駐在妻」と呼ばれる彼女たちのなかには、帰国後にまた仕事に戻る方もたくさんいます。

今回は、駐在帯同中に就業し、様々な葛藤を経て帰国後に希望の業務で再就職をしたある方のリアルストーリーをご紹介します。帯同中に働くことのやりがいや苦労、帰国してからの転職市場での評価など、貴重なお話をたくさん伺いました。


❖リアルストーリーVol.7前編
「家事・育児以外の「何かある」が私には必要」はこちら

 



Iさんプロフィール
2005年 大手通信会社に入社、流通事業部にてPC商材のルート営業、営業企画を担当
2008年 大手教育系出版社に転職、通信教育教材のマーケティング・営業を担当
2018年9月 台湾駐在帯同のため退職
2020年8月 戦略人事コンサルティング会社で業務委託開始
2022年3月帰国 
同年9月スモールビジネス向けのクラウドソフトウェア会社にマーケティング担当として入社

 

もと駐在妻の再就職活動の壁とは

——帰国後の再就職についてお聞かせください。「帯同中に働けば帰国後の再就職はスムーズに進むのでは?」と考える方も多いと思いますが、再就職に向けた活動では苦労したこともあったそうですね。

 

Iさん(以下、敬称略):当初、企業に応募しても書類選考が全然通らなかったんです。帯同中は正社員ではなく「業務委託」という働き方だったので、一度正社員を辞めてしまうとこんなにも社会からの評価が下がるんだ、自分には市場価値がないのかと、かなり落ち込みました。

たとえば人気の求人ポジションがあったとして、「フルタイムで正社員として働いている方」と「業務委託でパートタイムの私」からの応募が重なったら、そりゃあ私は通らないよなと転職市場の現実の厳しさを感じました。人材エージェントの方に「人気の会社にばかり応募していませんか?関心の低い会社にも応募を広げてみませんか?」と言われ、他にも応募してみたのですが、それでも書類が通らなくて落ち込んだりもしました。

渡航前の職場とも関係は良好だったので、「戻ってこないの?」というお声がけもいただいたのですが、この先のキャリアを考えた時に、戻らない選択肢も視野に入れたいと思っていました。これまで身に付けたスキルが他の会社でも再現性があるもの、普遍的なものとして自分の軸にしていけるレベルなのか、環境を変えることで見えてくることもある。だからこそ、新たな会社に挑戦してみたいという気持ちがあって。でも・・・新しい環境を探そうとするとこんなにも壁があるのかと厳しい現実を知りました。

 

——書類選考すら通らなくて辛い期間もあったのですね。再就職に向けて知っておいた方がよかったなと思うことは何かありますか?

 

I:個人的な意見ですが、大手の人材紹介会社にお願いしていると大勢の中に埋もれてしまって、帯同経験に光があたるどころか、業務委託や直近の職歴なしといった点をマイナス方向にしか見てもらえないことがあります。そうなることを前もって知っていれば不必要に落ち込まずに済んだかもしれないと思います。

大手人材紹介会社を利用するメリットは、市場動向や転職活動の傾向を知ることができる点です。多くの求人票を見られるので、職種ごとに、求める人材、経験、スキル等がわかります。それらを理解したうえで利用することはおすすめですが、やはり駐在妻ならではのスキルやキャリア志向をよくわかってくれるCAREER MARKのようなところを利用するほうが内定に繋がると思いました。

迪化街は観光客にも駐在者にも人気です

渡航前のキャリアは途切れない

——現在の会社へは同僚の方の紹介がきっかけで入社されたそうですね。

 

I渡航前の元同僚に紹介してもらいました。その方が現在私が勤める会社に転職されていて、たまたまマーケティングポストを探していたのです。そこで話があり、リファラル面談から選考を受けました。私がどういう人物でどんな仕事をしていたかを理解してくれたうえで話ができたので、働く仲間として接していただき話が弾みました。

日本にいたときの私の働き方に良い印象がなかったら、元同僚も繋いでくれなかったと思います。また、スキルだけでなく人との付き合い方なども見てくれていたのかなと思います。

 

——これまでのあらゆる経験や仕事への向き合い方は決して無駄にならない、渡航前のキャリアは途切れないんだなとお話を聞いて思いました。

 

I:そう思います。帯同はブランクではなく、すべて帯同前の自分から地続きなのかもしれないですね。こんなふうに振り返って言語化する機会をいただいて、とてもありがたいです!

 

——再就職できた理由について、ご自身ではどうお考えですか?

 

I:大きなポイントは正直、日本にいたときの経歴を評価してもらったことだと思います。私の場合、日本ではずっとマーケティング業務に就いていました。帯同中の仕事は人事戦略コンサルティング業務でしたが、帰国して再就職するときは、やはりマーケティング業務に関わりたいと思い転職活動をしていたので、結果的に日本での経歴に焦点を当ててもらいました。また、帯同中の経歴よりも日本で働いていた期間のほうが長いので、渡航前の経歴が重要視されやすかったという点もあると思います。

 

——会社が聞きたいのは「何がしたいですか」「何ができますか」の2つ。駐在妻でもそうでなくても、転職活動中ならこれは誰にとっても同じですね。

 

I:そうなんです!私の場合は面接で帯同中の生活に話が及ぶことは残念ながらありませんでした。それよりも「何がしたいですか」「何ができますか」「どういう風に仕事に向き合っていますか」と聞かれることが多かったです。私にとっては、人生の一つ前のステージである「日本にいたときのこと」をこんなに聞いてくれることが嬉しかったです。私の過去にも興味を持ってくれる、渡航前のキャリアが過去の遺産で終わらなかったんだ、と思いました。


——頑張った過去や、培った人間関係が次のステージに導いてくれたということですね!Iさんのこのお話は、今まさに駐在帯同生活中の多くの方に勇気を与えてくれると思います。

今の職場は週3出社・週2在宅。働き方も変わりました。

駐在帯同生活で伸びるスキルとは

——帯同経験が帰国後の就労にプラスになったと感じますか?

 

I感じています。帯同中の就労が直接的に評価されたかはわからないのですが、ビジネス感覚を持続できていたことは、面接時の受け答えに活かされたと思います。

また、帯同中は日本で仕事していたときとは全然違うスキルを使っていたと思うので、私自身のベースとしてすごくスキルが上がったなと感じました。海外の新しい環境に飛び込み、情報を集めて整理して、初めてのことに挑戦して、トライ&エラーを繰り返して。既に帯同生活自体が一種の転職のようなものという感じではないでしょうか?

 

——確かに、駐在帯同でこれまでと全く違う環境に飛び込んで、1人の人間として生きる中で、苦しんだり、悩んだり、そういう葛藤での中で獲得できる「人間力」とも言えるものがありますよね。
実はそういったスキルは「コンセプチュアルスキル」と言われています。
企業は、PCスキル、語学力、商品知識等の専門スキルなどの「テクニカルスキル」と呼ばれる成果に直結するスキルに着目しがちなのですが、帯同生活で得られるのは柔軟性やチャレンジ精神、課題解決力、そしてグローバルに物事を考えられる視野の広さなどの「コンセプチュアルスキル」です。このスキルも仕事に活かせますよね。
 

I:はい。そうだと思います!コンセプチュアルスキルが上がったことによって、元々のテクニカルスキルの発揮の仕方が大きく変わってくると思うんですよ。スピードも上がるし、広がりも持たせられると思います。一見、テクニカルスキルは伸びているようには見えないかもしれないですけれど、それを発揮するベースが上がっていると感じています。

 

——「ベースが上がる」という感覚、まさに人間として成長されたのですね!
「視座が上がる」とも言いますが、帯同生活を経て、物事を見る姿勢や捉え方のレベルが高くなったのでしょうね。

 

ちょっと専門的な話になるのですが、成人発達理論では、人間の成長には横軸に伸びる「水平的発達」と、縦軸に伸びる「垂直的発達」の2軸があると定義しています。(図1)


「水平的発達」は業務知識などテクニカルスキルが伸びていくことで、「垂直的発達」はものの見方や考え方の枠組みが変わる、というイメージです。
そしてこの縦軸の「垂直的発達」は葛藤があったときに伸びると言われています。

駐在帯同のようなこれまでにない環境では、葛藤の中で物事の見方や考え方を柔軟に変化させながらみなさん過ごしていると思います。その経験が人としての成長を促しているのです。しかも視座が上がる、つまり、人間力やコンセプチュアルスキルが伸びて垂直方向に成長していくと、もともと持っている横軸のテクニカルと併せて面が広がっていくのです。これがIさんが感じた「ベースが上がってもともとのスキルの発揮の仕方が大きく変わる」ということです。

成長をとらえる2つの着眼点

 

(「成人発達理論で解き明かす若手の挑戦と成長」高城明子氏執筆、パーソル総合研究所2019年)

https://rc.persol-group.co.jp/column-report/?writer=akiko_takagi


I
なるほど!本当にそうです!縦軸が伸びていることには、自分ではなかなか気づかないですし、その渦中にいるときは意識もしていませんでした。自分の棚卸しをしたことで、それに気づけたと思います。新しい会社に入った今、それをより実感できています。

 

日本での経歴も帯同中の経験も、棚卸し&言語化が大事

——渡航前の仕事の経験も、帯同中に得たスキルも、すべて今のIさんの仕事に活かされているということですね。

 

I:はい。経験社数が増えたこと、海外生活を経験したことにより、柔軟性と順応性、またチャレンジ精神や知的好奇心などは高まったと思います。海外生活では、たくさんの情報の中から、どれが大事か、どのレイヤーの話か、このケースには当てはまるのかなどを整理して、類型化するスキルが日々鍛えられていたと思うので、新しい会社の初動でも発揮しています。

 

また、帯同中にいろいろな価値観や文化の方と触れ合った経験から、分からないことに戸惑わなくなったし、最初はわからないのが当然だから焦らなくて大丈夫、と思えるようになりました。むしろ質問した方がいい、と帯同前より素直になれました。単に年齢を重ねることで視野が広がった面もあるのかもしれませんが、これも新しい会社で活かされています。

 

——再就職に向けてやっておくべきことは何だと思いますか?

I渡航前の職歴も、帯同中の経験も、どちらも棚卸しをして、言語化しておくと良いと思います。そしてそれらを、新しいフィールドにどのように繋げようとしているか、ということをしっかりと伝えられることが大事だと思います。


私は帯同中に別の職種を経験したことで、本当に自分がやりたいことに気付き、今後さらに磨いていきたい方向性もわかり、
自分の中で整理するきっかけになったと感じています。棚卸しをすることで帰国後にどういう仕事に就きたいのかということも見えてくると思います。そのためにも、帯同中でも帯同後でもいいので、職務経歴書を書いてみると良いかもしれません。

——Iさん貴重なお話をありがとうございました!

駐在妻の再就職にとって大事なのは、自分のどの部分を強みとしてアピールしていくかだと私たちも考えています。

渡航前の職歴と帯同中の経験を、客観的に、市場評価も交えて、棚卸しして言語化できている人は再就職市場でも強いと言えます。今、まさに帯同中の方にはご自身の経歴の棚卸しと言語化にぜひ取り組んでみてください。棚卸しと言語化のサポートもCAREEAMARKでは行っていますので、お気軽にご相談ください。

【1on1キャリアサポート】

駐在帯同経験のあるキャリアコンサルタント・キャリアメンターが「個別相談」「強み発見」「履歴書・職務経歴書の添削」などを1対1で行います。駐在帯同前から本帰国後まで、いつでも、世界中どこからでも、オンラインでご利用いただけます。

https://1on1.careermark.net/


※リファラル…従業員の知人・友人などを、採用目的でヘッドハンティングするリクルーティング活動のこと

※コンセプチュアルスキル…知識や情報など複雑な事象を概念化し、抽象的な考えや物事の本質を理解するためのスキルで概念化能力ともいわれる

 

 

文:CAREER MARKインターン5期 小塩奈緒

インタビュー・文責:CAREER MARK 小橋友美

 

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