CAREER MARK公式ブログ

駐妻キャリア支援CAREER MARKのブログです。 駐在妻・もと駐在妻の人材紹介を通して「また働きたい駐在妻」と 「もっと成長したい企業」をつなぎ、 ブランクがあってもまたチカラを発揮できる社会を目指しています。 駐在妻の再就職インタビューやキャリアセミナーレポートなどを掲載中!

世界を繋ぐ!キャリアコラボセミナー第1回 タイ・バンコク「本帰国後の自分のために、駐在帯同中のいま わたしができること」

2022年7月22日、「本帰国後の自分のために、駐在帯同中のいま わたしができること」と題し、世界を繋ぐ!キャリアコラボセミナー第1回が開催されました。

今回、CAREER MARK共同代表 鎌田とともにキャリアについてお話いただいたのは、タイ・バンコク在住の礒田あいさん 。自身も駐在帯同中でありながら、駐在妻向けにキャリアデザインワークショップを多数開催されています。

 

セミナー当日はタイ・バンコクを中心として、世界各国から30名を超える方にご参加いただきました。それだけテーマへの関心の高さが伺える今回のセミナーについて、レポートをお届けします。

 

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【登壇者】

礒田あいさん

海外女性のためのキャリアデザイン主宰

2019年よりバンコク在住。大手通信会社を退職し駐在帯同したが、来タイ当初アイデンティティ・クライシスによりキャリア迷子に。ご自身の経験をもとに「どこにいても 自分らしいライフキャリアを描き、幸せを感じて生きる女性が増えること」を願い、2021年6月より「海外女性のためのキャリアデザイン」を主宰。駐在妻ならではの環境を理解し寄り添い、100名以上のキャリア支援に携わる。

 

鎌田薫

CAREER MARK共同代表

大学卒業後、金融業界、リクルートを経てハリウッドビューティサロン支配人に。企画営業、事業企画、経営企画などに従事。育児休業復帰直前に夫の駐在が決まり1年8ヶ月ロンドンヘ。帯同中に在英日本人女性のコミュニティを立ち上げ、本帰国後これからのキャリアを見据え、コーチング資格を取得。WEBメディア「LAXIC 」編集長在任中にCAREER MARKの前身となる、駐妻キャリア支援プロジェクトを立ち上げる。

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帯同中のアイデンティティ・クライシスを経験した2人を繋いだご縁

セミナーはCAREER MARKコミュニティマネージャー 筧中の司会進行により、和やかに始まりました。登壇者の自己紹介では、2人とも仕事を離れ帯同した際、キャリアについて悩んだ経験があったことに触れました。その経験がもとになって今の活動に繋がっているとのこと、詳しく聞きたい部分です。

 

また今回のセミナーは、2人の共通の知人であるカリフォルニア在住ライフキャリアコーチ 吉川ゆりさん が繋いでくださって実現したそうです。2人それぞれが吉川さんのポッドキャスト に出演したのがきっかけとのこと。アメリカと日本(もとロンドン)、タイが繋がって企画ができるとは、今後の広がりを想像するとわくわくしてきました。

 

不安を原動力に行動するも停滞感に焦っていた

まずはあいさんより自身の帯同生活で考えたことや行動したこと、またそこから得た学びを共有いただきました。

2019年の帯同開始時、退職して「●●会社の礒田さん」から「xxちゃんのママ」「礒田さんの奥さん」という肩書で呼ばれることが増え、「何者でもなくなったような気持ちでした」とアイデンティティ・クライシスに陥っていたあいさん。その後1年半ほど、仕事の代わりにボランティアや語学学校、友達に会うなど日々のスケジュールを埋めていましたが、「他人から見ると充実しているように見えるけど、自分としては進んでいる気がしなくて停滞感を感じていた」とのこと。その気持ちがよく理解できる駐在妻の方も多いのではないでしょうか。

 

新しい出会いから自分の「やりたい」に気づけた

転機はコロナ禍に訪れます。バンコクもロックダウンとなった際に、オンラインで日本のコミュニティのお手伝いを始め、そこで知り合った起業家の方々に当時のモヤモヤを相談。「それは辛いね」と共感いただいたものの、「あなたのビジョンは何?」と聞かれたら

自分のことなのに答えられない!」と認識し、ショックだったそうです。その後、会社員時代に新卒採用に関わっていた経験から、コミュニティ運営のサポートをしてくれる大学生の就職活動を支援することに。エントリーシート作成や面接練習のフィードバックを通じて彼女の目が輝いたことで、「私はこういうことがしたかったのかも」と気づいたとお話くださいました。また自分のことを語れない危機感から、コーチングを学び始め自己理解を深めていきます。

就職活動支援について発信してみたところ、他の大学生も連絡をくれるようになりましたが、どうしても目先の面接に向けた対策になりがちでした。感染状況も落ち着いてきた中であいさんが考えたのは「もっと根本的に人に関わりたい」ということ。そこから主にバンコク在住の駐在妻に向けて、キャリアワークショップを開催するようになったそうです。

 

帯同中をどうすごすか~あいさんからのメッセージ~

振り返ると、帯同生活前半の行動は「不安」が原動力だったものの、後半になるにつれて自分の「やりたい」が原動力になっていったとのこと。「苦しい前半があったから今があるけれど、セミナー参加者の方にはぜひショートカットしてほしい」とあいさんから優しいメッセージも。

さらに、ワークショップ受講者の例についても取り上げられました。帯同期間を充実したものに変えていける方々の共通点は、「理想の未来に向けて自発的に進んでいる」「ねば・べき・常識からの脱出」とのこと。特に帯同・コロナ禍など自分ではコントロールできない状況に向き合ったことで、「先読みできない時代だからこそ、行動を積み上げていくことが大事」だと実感したそうです。

 

最後に「帯同中はありたい姿を考えて、いまできることで行動していってほしい」と語るあいさん。ご自身が沢山モヤモヤして、沢山考え、沢山行動したからこそ辿り着いたというエピソードには終始熱がこもり、聞いていて非常に励まされる気持ちになりました。「誰かに会う、何かを話すというのも行動の1つですよね」と筧中からのコメントもあり、「自分にも何かできるかもしれない」という気持ちが強くなったと思います。

 

小さな一歩が大きな気づきをくれた帯同期間

次に鎌田より、自身のロンドンでの帯同経験について、また人材紹介業に携わる視点から「帯同中にやっておくべきこと」をお伝えしました。

 

鎌田も渡英当初は新鮮さから日々楽しく過ごしていましたが、3ヶ月ほど経つと家族との関わりしかない「今の私にはバリューが無い」と、アイデンティティ・クライシスに陥ります。それまで仕事をしてきた万能感のある自分とのギャップが大きかったそうです。

はじめの一歩のきっかけは、日本のママコミュニティ Himemamaを海外進出させてみないかと、代表からお声がけいただいたこと。自信を失っていた鎌田は断ろうとしたそうですが、「大きなことはしなくていいから、お茶会でいいんだよ」との言葉に励まされ、Himemama Londonを立ち上げました。その際に大事にしたのは「母でもない、妻でもない、わたしが主役の場を作ろう」ということ。コミュニティで自分たちのことを話すうちに、各メンバーのスキルがコミュニティ運営にも活かされていきました。力のある駐在妻が集まる中で、「みんな意外と自分の強みに気づいていない。もったいない!」という気持ちが大きくなったそうです。

 

自身の経験からCAREER MARK立ち上げへ

また「この機会に興味があることを学んでみよう」と、オンラインでコーチングの資格を取得。自分の好きなことをよく考えたら、「人の支援が好き」ということに気づきました。それが帰国後のCAREER MARK立ち上げや、現在もMentor Forでメンターとして働くことに繋がっているとのこと。

 

その後、CAREER MARKを運営する中で「異文化適応過程」について聞く機会があり、「帯同後に落ち込むのは皆さんが通る道なんだ」と知ったそうです。「もし落ち込むのが普通なんだって知っていたら、少し気持ちが軽くなりませんか?」CAREER MARKは、こういった駐在妻の皆さんに知って欲しい情報も発信しています。(公式ブログ記事:駐在妻のもやもや、どうしたらいいですか?臨床心理士の先生に聞きました 

帯同中にやるべきこと~鎌田の視点から~

①キャリアの棚卸しをし、職務経歴書を書いておく

本帰国後は引越しで忙しく、気づけば数ヶ月経っていることも多いので、帯同中からぜひ準備してほしいとのこと。その際はライフラインチャートの作成や、クリフトンストレングス診断の活用、またあいさんが主宰するようなワークショップに参加するのも良いそうです。客観的に見ることで「自分の中の当たり前がそうじゃない!」と気づくことができます。

②所属が無い今だからこそ、やってみたいことにチャレンジをしてみる

好きなことを軸に行動してみたり、現地ボランティアや学校活動への積極的な参加など、帯同生活の充実が意外とその後のキャリアに活きていくとのこと。

③ビジネススキルを活かせる場に身を置く

フルリモートのプロボノやインターン、ビザと環境が許す場合は現地での就労(パート・正社員)など、帯同中でも機会はあるものです。しばらく眠っていたビジネス脳を使えること、また様々なバックグラウンドの方と仕事をすることで、自分の強みに気づくことができます。

 

さらに帯同中の小さな一歩を帰国後のキャリアに繋げていった例もご紹介。CAREER MARKの部活動立ち上げから、専業主婦として初のLinkedInクリエイターになった方。現地校でのPTA活動で自分自身が価値を生み出す経験をし、CAREER MARK立ち上げメンバーに加わった方。プロボノ・インターン経験を基に、現地でフルリモートリサーチャー・編集スタッフとして活躍し、本帰国後はCAREER MARKの紹介で国際機関フルタイム正社員として再就職された方など。それぞれの一歩は決して大きくないけれど、そこから繋げていけるのだなと勇気をもらえるエピソードでした。



受講者からの質問コーナー

後半ではセミナー応募時に伺った質問に答えていただきました。

①登壇者2人のターニングポイントはいつですか?

あいさんは「新しい出会いから行動した部分」と回答。出会いによって自己分析の大切さに気づいて、自分に向き合えたとのこと。その後の「知り合いの相談に乗る」という小さな一歩もポイントだったそうです。

鎌田からも「小さな一歩が大切だった」とコメント。「お茶会でいいよ」と言われて始めたHimemama Londonがその後大きな気づきに繋がりました。

さらにあいさんから「はじめの一歩を踏み出すのがドキドキする人は、素敵な人に会いに行きましょう!」とアドバイスも。素敵な活動をしている人の近くにいると、活力をもらえて自分も行動してみようと思えるのだそうです。とても参考にしたいと思います!

②海外経験を活かした仕事ってどれくらいあるのですか?

海外経験を活かすというと真っ先に「語学力」がイメージされますが、より大切なのはポータブルスキルの方。例えば「何か問題になったときにどう行動するか?」「すごくうまくいったときは何をしたか?」ということを考えてみましょう。

海外生活ではハプニングも多いはず。その際に「自分はどうやって対処していたか?」「それが仕事現場だとすると、どう伝えられるか?」ということを考えると、自分が海外経験で得られたものを仕事に活かしていくことができると、鎌田は回答しました。

あいさんからは「ブランクがあっても採用できる人=自分の会社で活躍できるかイメージできる人」と、採用担当の知人から聞いたと答えてくださいました。

受講者同士のトークタイム

セミナーの最後は受講者同士が自身のモヤモヤや、今日のセミナーを聞いてやってみようと思ったことを話す時間となりました。お話すると、すでに本帰国された方やまだ引越しして1ヶ月の方など、様々なステージの方が今回のセミナーに参加くださっていたことが分かります。今回は特にタイ・バンコクから参加された方が多かったので、この出会いが今後リアルな交流に繋がると良いなと思いました。

 

あとがき

登壇者2人の「セミナーから何か持ち帰ってほしい」「帯同期間を充実したものにしてほしい」という熱意が伝わってくる75分。「帯同中にできること」のヒントが溢れ、とても前向きな気持ちになるセミナーでした。ご自身のエピソードのみでなく、多くの方の事例からも「はじめの一歩は小さくて良いんだ」という安心感も得られたのではないでしょうか。第2弾はどこの国のどんな方と繋がれるのか、とても楽しみです!

 

※本セミナーのアフタートークとして、あいさんとインスタライブを行いました!

セミナーを通じて感じたこと・考えたことや、セミナー内で答えられなかった質問にお答えしています。CAREER MARKのInstagramで視聴できますので、セミナーに参加されなかった方もぜひご覧ください。

https://www.instagram.com/p/Cgi7NTBKdRC/

 

 

※CAREER MARKでは現在インターン6期を募集しています。鎌田がお話しした「ビジネススキルを活かせる場に身を置く」チャンスです。

発信することに興味がある方、CAREER MARKの理念に共感できる方など一緒に活動できる仲間をお待ちしております!

 

CAREER MARK インターン6期生募集説明会

2022年9月6日(火) 11:30~13:00(応募締切:9月5日(月)中)

オンライン開催。時差により参加ができない場合は後日録画共有いたします。

ご興味のある方はこちらまで>>



文・CAREER MARK インターン5期 鳥羽夕紀美



-毎月イベントを開催しています!

詳細が決まりましたらご案内いたしますので

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海外生活は、凝り固まった価値観をほぐすチャンス

女性のキャリアとは切っても切り離せない、生理、妊娠、出産、更年期—。
今回は、そんな体の悩みを解決するフェムテック企業、fermata Singapore(フェルマータ・シンガポール)より、丹野直美さんをお招きしてお話しいただきました。

後編となるこの記事では、丹野さんとCAREER MARK共同代表の鎌田に行った、「キャリア」をテーマとしたインタビューを綴っています。キャリアに悩む駐在妻のみなさんのヒントや励みになれば幸いです。

尚、今回のnote記事は、CAREER MARKが運営する部活動「キャリアカフェ・ドイツ部」(以下ドイツ部)が企画し、ドイツ部のメンバーが対談の司会進行、記事作成を行っています。

☆いま話題となっているフェムテックの基本から、世界の潮流までを掘り下げた「フェムテック編」(前編)はこちらから。
☆ドイツでキャリアを語るドイツ部note記事はこちらをご覧ください。

1. 丹野さん、fermataについて

 

ゲスト:丹野直美さん
シンガポール在住。
ベンチャーキャピタルファンド勤務の傍ら、2020年7月よりfermata Singaporeにてカントリーマネージャーを務める。

 

fermata(フェルマータ)について
「あなたのタブーがワクワクに変わる日まで」を合言葉に、フェムテック市場の日本・アジアでの拡大を目指し、女性のウェルネスに関連した事業を展開。世界中から集めたフェムテックアイテムを販売するECサイトの運営、フェムテックイベントの企画、フェムテック事業のコンサルティング等を行っている。
fermata株式会社 (日本):https://hellofermata.com/
fermata Singapore:https://sg.hellofermata.com/

2. fermata Singapore × CAREER MARK インタビュー

fermataとの出会い

——丹野さんがいらっしゃるfermata Singaporeは2020年7月に設立されたそうですが、丹野さんがfermataで活動をされることになったきっかけ、経緯について、まずは教えていただけますでしょうか。

丹野さん(以下敬称略):
私はfermataに関わる2年前まで、フェムテックについてはほとんど知りませんでした。
fermataのお仕事には当初より副業として携わっており、本業はベンチャーキャピタルファンドのバックオフィスをやっています。そこのグループ会社でfermataのCEOであるAminaさんが活動されていたのが出会いのきっかけでした。
fermataと出会う前、ベンチャーキャピタルでいろんなスタートアップを見ていたなかで、女性向けの商品やサービス、女性のCEOが少ないと感じていまして、もっと女性のスタートアップが出てきてほしいな、というか、出てくるはずだ、と思っていたんです。
ちょうどそんな時に、グループ会社のチャットで、スタートアップとして始動したばかりのfermataがフェムテックの展示会をやるとのお知らせがありました。「シンガポールでもぜひやってください」と、私からコンタクトを取ったところ、「fermataは海外、特にアジアに進出したいと思っていたんです」とAminaさんより返事が来て、そこから「fermata Singaporeを作ろう」と話が進んでいきました。

——偶然にも、丹野さんが考えていらっしゃったように女性起業家が現れ、その出会いがきっかけでご自分も事業に携わることになり、シンガポールに拠点ができた、ということですよね。よく鎌田さんも言っている「計画的偶発性理論」というか、そういうものを感じました。

丹野:
そうですね。私自身としても本当に意外な展開でした。

 

「戦線離脱した」からこそ、立ち上げた人材事業

——一方のCAREER MARKも、fermata Singaporeと時を同じくして2020年に事業化したんですよね。鎌田さんがCAREER MARKを立ち上げた経緯についても改めて教えていただけますか。

鎌田:
CAREER MARKは駐在妻専門の人材紹介事業をしていますが、なぜ駐在妻専門なのかというと、私自身が夫のイギリス転勤によって専業主婦、いわゆるブランク人材になった経験があるからです。
日本では、半年間のブランクがあるだけでも転職市場において不利になると言われています。私は管理職として人を採用する立場だったので、採用担当者が「この人はブランク人材」って、応募書類をぽんと脇に置くような風潮があるのはよく分かっていました。だから、「あ、もう私は戦線離脱した」って、喪失感に見舞われた駐在帯同生活だったんです。
私のような方って実はたくさんいて、仕事に打ち込んでキャリアを積み重ねてきた、就労意欲が高い駐在妻は多いんです。海外に駐在帯同してキャリアを中断した方のうち、8割が本当は働き続けたかったと答えたアンケートデータもあります。
さらに就労意欲だけじゃなくて、能力も高い。私は帯同先のロンドンで在英日本人女性のコミュニティを立ち上げたんですけど、そのメンバーと一緒に何かを作り上げていく経験をして、企画力や営業力、また話をまとめる力など、みなさんが強みを持っていることを実感しました。
でも、そんな方たちが日本に帰国して、諦めて専業主婦になっている。「もったいなさすぎる」って。とにかく「もったいないもったいない」って思いながら、2年間の駐在帯同生活を過ごしました。
とは言え、私も日本に帰ったらやっぱりブランク人材で、この先仕事として何をすればいいんだろうと帰国後すごく悩みました。悩みに悩んだ結果、世界中で私と同じようにモヤモヤを抱えている駐在妻さんの、働きたいけど働けないという課題を解決しようと決めたんです。本帰国後の2018年に駐妻キャリア支援プロジェクトとして活動をスタートし、2020年春にCAREER MARKとして事業化をしました。

——駐在妻として抱えていた課題意識を実際に事業にするまでには、高いモチベーションが必要なんじゃないかと思います。鎌田さんのその原動力というか、モチベーションはどこから生まれてくるものなのでしょうか。

鎌田:
日本に帰国して、また仕事ができたことがすっごく嬉しかったんです。「戦線離脱した」って私が一度諦めちゃったからこそ、また仕事ができる喜びを、これから帰ってくる駐在妻のみなさんにお届けしたい、という想いがまずありました。
あとは、みんな同じように悩んでいたり、これがあったらいいのに、という希望をよく口にしていたから、誰かが旗を振ってやっていれば、協力してくれる人が現れるかもしれないなって思っていたんです。それで、実際に協力してくれるんですよね。「駐在妻のキャリア支援事業を立ち上げました」って言ったら、もう何年も前に駐在妻だった方がアドバイザーとして関わってくださったりとか、「こういうのがあったらいいなって思っていたから、私の方でも広めますね」って言ってくださったりとか。同じ気持ちを持つみなさんのおかげで頑張れる。原動力になっているというよりは、みなさんに火をつけていただいている。そんな感覚です。

会社も、業界も、海も飛び越えて

——丹野さんは日本で数年お仕事をされた後、シンガポールに渡られて、そこからいくつかの会社でキャリアを築かれてきたということですが、シンガポールでお仕事をスタートされた経緯を伺えますでしょうか。

丹野:
私が新卒で最初に勤めたのは、故郷の大分県の銀行でした。そこで3年ほど働いたんですが、もうちょっと面白い刺激が欲しいと思って、もともと興味があったのと、大学では海外のことを学ぶ機会も多かったので、海を渡ることにしました。田舎に住んでいたからか、東京への心の距離感と海外への距離感があまり変わらなかったというのがありましたね。
20代でまだキャリアが短くても働ける環境ということを考えて、当時はビザがおりやすかったシンガポールに行き先を決めました。

——思い切って海外に渡り、そこで仕事をするという行動力がすごいですね。仕事は渡航されてから見つけられたのですか?

丹野:
はい、シンガポールには日系企業がたくさんあったし、仕事は行けば何とかなるだろうみたいな気持ちでした。多分若かったからできたと思うんですけどね。20年くらい前は、20代から30代の女性が海外で働くのがちょっとしたブームだったんです。
私の場合は、日系企業で何かしら仕事が見つかるかなと思っていたら、予想外に、外資系の証券会社で日本語が話せる人の求人があり、そこに就職を決めました。3、4年程で日本に帰るだろうと思っていましたが、シンガポールの居心地が良かったのと、結婚・出産とライフイベントが続き、あっという間に20年が経っていました。

——その証券会社で働かれた後に、転職も経験されているんですよね。

丹野:
はい、はじめに勤めたアメリカの証券会社で15年働いたのですが、労働時間が長く、子どもが2人いるなかで仕事と生活のバランスを取るのが難しいなと感じたので、思い切って辞めるという選択を取りました
でも私も働くことが好きだったので、パートでいいからフレキシブルに働ける勤務先を探し、見つけたのがいま働くベンチャーキャピタルファンドのバックオフィスです。まだコロナが始まる前だったのですが、その頃からフルリモートが可能で、勤務時間も自分で管理するという、とてもありがたい環境を得ることができました。時間的に余裕がでてきたことが、次のfermataの副業につながったのかなと思っています。
fermataは小売業という、金融とは全く異なる業界で、私には小売の知識も全くなければ、マーケティングやPRの知識もありませんでした。さらに会社設立の手続きから、経理や人事、経営戦略まで、なんでもやらなきゃいけない少人数体制です。大変ではありますが、非常に刺激的で面白い経験をさせていただいていると思っています。

シンガポールの女性のキャリア環境

——本当に多様なキャリアを歩まれていらっしゃるんですね。シンガポールに長く勤められてきて、日本との働き方の違いを感じることはありますか?

丹野:
全般的に、女性がキャリアを築くのは当然と認識されているところが、大きな違いかなと思っています。
最初に働いた外資系企業で気づいたのが、そこで働く女性たちのマインドセットが私とは全く違っていたことでした。というのも、当初の私は海外で働けて、そこそこ生活を楽しんで、お給料をもらえればそれで満足、という感覚だったんです。でも、シンガポールや他の国からきた女性は最初からマネジメントを目指すのが当たり前、という意気込みで、もう意欲が違うんですよ。1on1ミーティングで「自分はいつ昇格できるんだ。どうやったら上に上がれるんだ」と自ら上司にかけあうのが普通というカルチャーです。そこに年齢や性別は関係なく、遠慮もありません。シンガポールでは、管理職に就く女性は実際に多いですし、そんな方々を見ていると、アピール力や自己主張力に秀でているなと感じます。自分はそういう部分が足りていなくて悔しい思いをしましたし、そういうマインドセットとスキルを日本人の女性が普通に持てるようになれればと思いました。

——私は前職が人事だったのですが、日本では管理職になりたがらない女性が多い印象です。シンガポールはその逆ということで、ちょっと意外でした。文化的な背景などもあるんでしょうか。

丹野:
そうですね、女性が働きやすい環境があることが大きいかと思います。シンガポールは共働きが多く、メイドさんを雇うことが一般的なんですよね。私も8年半ほどメイドさんを雇いましたが、彼女に家事をほぼ全部任せられるのでとても助かりました。外食文化で、男性側が奥さんに料理を期待する風潮もあまりないのかもしれません。子どもがいても、フルタイムで働きやすい社会的環境はあると思います。
ただ、完全に男女平等かと言われると実際はそうではなくて、職場や家庭でのジェンダーギャップを少なくするために、政府は取り組みを始めています。

——同じアジアの国でも、全然違いますね。社会的なサポートあってこその女性のキャリアだなと感じました。

自分らしいキャリアを歩むために

——丹野さんが自分らしく、楽しく仕事をしていくうえで、何か大切にされてきたことがあれば、教えていただきたいです。

丹野:
そうですね、自分のそのときの優先順位を決めていくことと、変化に柔軟であることは大事だと思っています。特に女性って、子どもが生まれたら、ものごとの優先順位はかなり変わってきますよね。私はメイドさんがいても、仕事と生活の両立が難しくて葛藤を抱えていました。証券会社を辞めることはすごく悩んだけれども、今では転職してよかったと思っています。
違う業界に入り、日々、失敗や試行錯誤の連続である一方で、ひとまわりもふたまわりも若いスタッフ達と働く環境は刺激的でたくさんの発見があります。
あまり自分に制限をかけず、いくつになっても、やりたいと思うことは思い切ってやってみてもいいと思います。変わっていくことは全然悪くないし、失敗してもそれは糧になるという気持ちでいたいですね。

——お話を伺って、怖がらずに、というところが大切な気がしました。思い切って行動にうつすには勇気がいりますが、やってみて考えようっていうマインドも必要なんだなと。特に海外に居るからこそ、「やってみるチャンス」も多いのかなと思います。

丹野:
そうですね。海外には日本にはないものが転がっていることがあります。例えば、シンガポールでは海外の投資家がファンドを作るケースが多く、そこでニッチな求人のニーズが存在したりします。探せば面白そうな仕事に出会えるかもしれないし、その人のスキルを活かせるものが海外だからこそあるかもしれません。
私が転職先を見つけたのは、お友達に「仕事を探してる」と話したのがきっかけでした。周囲の人に自分のやりたい事を話すのはおすすめです。どこかでネットワークが繋がってチャンスが来るかもしれませんから。また、fermata Singaporeでは、優秀な日本人駐在妻の方たちがボランティアでサポートしてくださっています。「フェムテックに興味があるから、ぜひ手伝いたい」と積極的に関わってくださっていて、そんな風に興味のあるところに飛び込んで、まず経験してみるのもいいのではないでしょうか。

——駐在帯同先で就労やボランティアをしたいと考えている駐在妻も多いので、励みになります。

自分の強み、好きなことを見出す

——鎌田さんは、キャリアメンターとして、駐在妻だけでなく、育休や介護でキャリアブランクがある女性とも向き合っていらっしゃいますよね。ブランクがあるなかでも自分らしいキャリアを歩むために、大切なマインドや、自分らしいキャリアを歩んでいる方に共通するものがあったりすれば、教えていただけますか?

鎌田:
お仕事でたくさんの方のメンタリングを担当するなかで、共通で出てくるのが「自分の強みがわからない」っていう悩みなんです。そこで強みを一緒に見つけるセッションをするんですけど、強みを見つけたことによってその方が自信を持ち、行動が変わっていくっていうのをすごくたくさん見てきました。必ずどんな方でも強みや魅力があるので、そこを見つけていくことが大事なんじゃないかなって思います。

——自分の強みを見つけることってすごく難しいと感じるのですが‥

鎌田:
CAREER MARKの部活動みたいに、仲間と共に何かをしてみることって、外的自己認識を高める行動につながると思うんですよね。ドイツ部のメンバー同士で「こんなことできてすごいね」とか、言ったりしない?

——はい、お互いにないものに気づいたりもしますね。

鎌田:
そうなんです。でも日本で仕事をしていると、なかなか褒められることがない。慣習的に、日本ではできないところを責められるから、それに囚われて、「私なんて大したことできない」って思っちゃう。
だけど実は、自分が当たり前にやっていたことがほかの人からはとても魅力的に見えたり、すごく高いレベルのことだったりする。個人がそれぞれ一歩外に出て、人と一緒に何かをやってみて、そこでお互いにポジティブなフィードバックをするということは、強みを見つけるひとつのポイントだと思います。
それもあって、CAREER MARKはコミュニティを作っているんです。

——まさに私たちドイツ部がそれですね!

鎌田:
そう、やりたいことをやってみる、それに対して共鳴する仲間が集まってくる。そういう仲間同士だと、必ずいいコミュニケーションが生まれるんですよね。そこから自分たちの魅力を見つけたりとか、もっとこれがやりたいよねって目標を見つけて前進できる、その一歩になればと思って、コミュニティを作っています。

——私たちは「キャリアのモヤモヤ」というキーワードのもとにできたコミュニティで、仲間のいる安全地帯でありながら、いろいろ自由にチャレンジできる環境だと感じています。このドイツ部との出会いが自分が前進するきっかけになったと、メンバーとも以前話したことがありまして、もう本当に鎌田さんの言う通りになっているなと思います。
さらに、キャリアブランク中のアクションがその後のキャリアにつながった例など、具体的なお話があれば教えていただけないでしょうか。

鎌田:
とにかくこう、小さなことでいいから好きだと思うことをやってみるって重要だと思うんです。
一例として、商社の事務職をしていた駐在妻の方がいて、「長く働いてきたけど特に何ができるわけでもないし、日本に帰ったら仕事どうしよう」って悩まれていたんです。仕事のことは置いておいて、何をやったら熱中できるのかをその方に聞くと、書くこととか読むことが好きだというので、「それを使うような何かをしてみたら」とアドバイスしたことがきっかけで、CAREER MARKの広報PRのインターンをやってみた。そうしたら自分の書いた文章が周りに評価され拡散され、伝わっているのがわかった。加えて、彼女はものを読んで、思考を深めるのが好きなんだと気づいたらしいんですよね。だから読んだり書いたり、情報収集することを軸に、自信を持ってお仕事してみようっていうことで、現在はフルリモートでリサーチャーや編集を任され、活躍しています。元の仕事内容とは離れて、何が好きだったんだっけ?っていうところに一回立ち返ってから、スタートがきれたんです。
これは私の話になるのですが、私も人材紹介業はもともと経験がなかったんですよね。でも、人を応援したり、人と集まって、何かを話し合って生み出したり、人とつながる、人をつなげることがもともと好きなんです。
仕事がなくなって、なんにも肩書きがなくなったからこそ、そして海外で、ああした方がいいこうした方が良いっていう情報が入ってこないからこそ、自分は何が好きなのかとか、この先の人生何やっていきたいのかという考えがクリアになる気がします。

——たしかに、肩書きが強制的にリセットされますからね。「強みや好きなことを見つける」、私もやってみたいと思います。
おふたりのキャリアについて伺っていて、経験のないフィールドへ一歩踏み出したところが共通点ですし、キャリアは人とのつながりで築かれていく部分もあるのかな、なんて感じました。

誰もが生きやすい社会とは

——それでは最後の質問に移りたいんですけれども、これからどんな社会をつくっていきたいか、目指す未来像についてお聞かせいただけますでしょうか。
fermataとCAREER MARKは、主に女性が抱える、マイナスに捉えがちな問題をプラスに変えていく、という共通したコンセプトがあり、大きな視点でとらえると「女性を含めた誰もが、人生の選択肢を狭めることなく活躍できること」を目指していますよね。その誰もが活躍できる、選択肢がある社会とは、具体的にどんなものか、また、そういった社会に向けて課題に感じていらっしゃることを、伺いたいと思います。
まずは鎌田さんから、いかがでしょうか。

鎌田:
海外から日本に帰ってきて感じるのは、「こんなこと言ったら相手によく思われないだろうな」と、自分の考えを抑えて、発信しないことが多いということです。フェムテックに通じるところもありますが、女性としてこうじゃなきゃいけないとか、家事育児は女性がすべきといった根強いジェンダー規範がありますよね。男性だけでなく、女性自身もそれを払拭できずにいると感じます。だからまずは、自分たちが捉われているステレオタイプに気づく機会がもっとあったらいいなと思っています。
その次に、私がさっき言ったような、自分の強みや楽しいと思えること、この世の中に役立てることは何なんだろうっていうことを考えて、それを自由に発信していけるようになったらいいなと

——例えば、キャリアブランクがあったら復職は難しいかなとか、無意識のうちに決めつけてしまうことが多いのかもしれません。生理についてもそうで、またいつものように乗り越えなくちゃ、みたいな無意識の思考が実はとても大きい気がするので、そこを取り払うだけでも自分の行動が変わってきますよね。
続いて丹野さんにも同じことを伺いたいのですが、いかがでしょうか?

丹野:
私の意見もかなり似ているのですが、fermataのビジョンのように、自分や誰かを生きづらくしている価値観が変容して、タブーがワクワクに変わり、生きやすくなる社会になってほしいです。今はシンガポールで活動していますので、この国や、東南アジアのタブーをもっと理解していきたいし、それぞれの国に応じたタブーへの取り組みや、フェムテックの広め方を模索していきたいです。
もう少し自分ごととして考えると、自分の中の凝り固まった考え方だとか、ものの見方だとか、そういうことに気づくのが大事なんだろうなと思います。いま自分が感じているこの価値観って本当にそうなの?押し付けられたものじゃないのかな?と、おりにふれて、意識するというか。

——鎌田さんの話にも通じますが、アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)といいますか、私自身も、例えばドイツや外国の方に対して、〇〇人だからしょうがない、と知らず知らずのうちに思考している部分があるかもしれないと感じました。
フェムテックに関しては、男性から見ればわからない女性の世界で、男性側が思い込んでいる部分もありそうですよね。まずはお互いに知るところからが一歩なのかもしれないですね。

丹野:
そうですね。自分自身、母親だからこうしなきゃ、宿題をちゃんと見なきゃいけないし手作りのご飯を準備しなきゃ、みたいな義務感や罪悪感を無意識に持っている部分があると思うし、自分自身で生きづらくしてるなあと感じます

——海外に住んでいると、言語の問題もあって日本ほど情報が得られず、周りと自分を比較することも少なくなるので、自分の価値観を解放する意味でもいい期間なのかなと思います。
私個人としても、自分の体と向き合ったタイミングでキャリアにも向き合わざるを得なかった過去の経験があり、キャリアとウェルネスはすごくつながっていると改めて感じました。
今回、それぞれの分野で活躍されるおふたりへ質問する機会がいただけて、感謝しています。お話を聞いて、あんまり凝り固まらずにやってみたり、チャレンジしてみたらいいんじゃないかなと、気持ちが軽くなりました。ありがとうございました。

 

文:横田 マリ子
対談運営:CAREEER MARK キャリアカフェドイツ部

 

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からだの悩み・意識を変革し「自分らしいキャリア」を後押しするフェムテック

女性のキャリアとは切っても切り離せない、生理、妊娠、出産、更年期—。
今回は、そんな体の悩みを解決するフェムテック企業、fermata Singapore(フェルマータ・シンガポール)より、丹野直美さんをお招きしてお話しいただきました。

前編となるこの記事では、いま話題の「フェムテック」をテーマとしています。
前半に、丹野さんに話していただいたフェムテック、fermata Singaporeの紹介を、後半はCAREER MARK共同代表の鎌田からの質問として、いま現在のリアルなフェムテック事情を探る対談を収録しました。
最先端のフェムテックアイテムや、世界で大きなうねりを生み出しつつあるフェムテックの潮流を知ることができる内容となっています。

尚、今回のnote記事は、CAREER MARKが運営する部活動「キャリアカフェ・ドイツ部」(以下ドイツ部)が企画し、ドイツ部のメンバーが対談の司会進行、記事作成を行っています。
☆キャリアに悩む駐在妻へのヒントがあふれた「キャリア編」(後編)はこちらから
☆ドイツでキャリアを語るドイツ部note記事はこちらをご覧ください。

1. フェムテック、fermata Singaporeについて

ゲスト:丹野直美さん
シンガポール在住。
ベンチャーキャピタルファンド勤務の傍ら、2020年7月よりfermata Singapore・カントリーマネージャーを務める。

 

——丹野さん、今回はこのような機会をいただきましてありがとうございます。早速ですが、まずはフェムテックとは何かという基本から、丹野さんが働かれているfermata Singaporeについても教えていただけますでしょうか?

丹野さん(以下敬称略):
はい、まず、フェムテック(femtech)は“female”(女性)と、“technology”(技術)をかけあわせた言葉で、生理、妊娠、更年期など、女性特有の健康課題をテクノロジーで解決するプロダクトやサービスのことを表しています。 また、サービスやプロダクトだけではなくて、女性の心身にまつわるタブー、固定観念や、価値観を変容するムーブメントとして捉える側面もあります。

このフェムテックという言葉を生み出したのが、ドイツ発の月経管理アプリ「クルー(Clue)」の創業者のイダ・ティンさんです。2012年、彼女は「フェムテック」という造語を作ることで新しい市場の存在を示し、男性中心の投資家から理解を得にくかった月経管理アプリの資金調達に成功したと言われています。

フェムテックの製品カテゴリーには、生理、不妊、妊よう性(※1)、妊娠、産後ケア、メンタルウェルネス、セクシャルウェルネス、更年期などがあり、女性のライフサイクルのほぼすべてをカバーしています。

※1 妊よう性‥「妊娠するための力」のこと

≪fermata Singaporeで扱う商品の一例≫
左上:Kegg(ケッグ)。おりものを測定し、妊娠しやすい日を把握するためのデバイス。膣に入れて計測し、その結果がすぐにアプリ上で確認できる。
右上:Lilu(リル)ハンズフリーマッサージブラ。ブラの中に空気袋が入っており、その空気袋が電動で動くことによって母乳の出を良くし、ハンズフリーで搾乳しやすくなるよう設計されている。
左下:Perifit(ペリフィット)。骨盤底筋トレーニングができるアイテム。膣に入れ、アプリと連動させて使用する。アプリにゲームが複数用意されており、楽しみながら骨盤底筋を鍛えられる製品。
右下:Lioness(ライオネス)。セクシャルウェルネスアイテムで、自分のオーガズムをアプリ上で可視化できるバイブレーター。

いまフェムテックが話題になっている背景

丹野:
いまなぜフェムテックが盛り上がりを見せているのか、そこには「女性の健康」の進化が遅かった背景があります。原因のひとつは、女性の健康課題がタブー視されていた社会や文化です。また、医学分野で女性の健康関連の研究や治験データが少なかった側面や、女性の起業家・投資家が少なく、新しい製品が生み出されにくかったという要因もありました。
現在は働き方や生き方が多様化し、女性の社会進出が進んだり、出産回数が減ったり、または生まない選択肢をとったりと、ライフスタイルは大きく変化しました。しかし、女性のライフスタイルが変化しても、生理や妊娠といった体の機能自体は変わらないですよね。そのため、生活の変化と自身の体との間にギャップが生まれ、体の不調に悩む女性が多くなっているのではないでしょうか。
実際、昔の女性と比べ、現代の女性は生涯月経回数が約10倍になっているともいわれ、その負荷によって生じる健康課題が増えていると思われます。

フェムテックは女性の健康課題というタブーの領域だからこそ、いま見えている需要や社会へのインパクトは、まだまだ氷山の一角にすぎないと言われているんです。経済産業省のレポート(※2)によると、日本におけるフェムテックの経済効果は2025年に約2兆円になるという試算も出ていて、フェムテックが女性の健康課題を解決し、社会に変革をもたらすのではないかと期待されています。

※2 出典元:https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/R2fy_femtech.pdf

「タブーをワクワクに」fermataの想い

丹野:
fermataについて少し紹介させていただくと、私たちは「あなたのタブーがワクワクに変わる日まで」を合言葉に、フェムテック市場の日本・アジアでの拡大を目指し、女性のウェルネスに関連した事業を展開しています。
fermataを通じて私たちが叶えていきたいのは、これまでは「しょうがない」「こうあるべき」と捉えていたような、さまざまな固定観念を解消していくことです。
日本では実店舗とオンライン、シンガポールではオンラインで、世界から厳選したフェムテックアイテムを販売しています。
それ以外にも、「Femtech Fes!」というイベントを開催し、世界各国から集めた150を超えるフェムテックアイテムの展示会を行ったり、世界中のフェムテック・スタートアップ企業を調査して、マーケットマップを作ったりもしています。また、国内外の企業と組み、フェムテック事業を拡大していくサポートも行っています。

2. fermata Singapore×CAREER MARK 対談

「フェムテック」をきっかけに会話が生まれる

——丹野さんのお話を伺って、fermataさんの目指す「タブーをワクワクに」、「固定観念の解消」という部分が、CAREER MARKの掲げる「駐在帯同≠キャリアのブランク」、「駐在妻が自分だけのキャリアを誇れるように」というコンセプトとつながっていると感じました。それぞれフィジカル/キャリアという視点から、マイナスに捉えられていたことをプラスに変えていく、という共通点がありますよね。
ここからは、鎌田から丹野さんに向けて、フェムテックについての質問を投げかける対談形式で進めていきたいと思います。

鎌田:
私はフェムテックという言葉を2020年頃から耳にしていたのですが、この対談を控えて最近家庭で「フェムテック、フェムテック」と言っていたら、夫に「フェムテックって何?」と聞かれまして。それで、“female”と“technology”をかけあわせた造語だよって説明したのですが、こういう名前、言葉があるのってすごくいいなと思いました。言葉を説明する時に、「女性には生理の痛みとか、更年期とかの健康課題があるんだけど、それに対してテクノロジーの力で解決していこうっていう分野がいま、すごく盛り上がってるんだ」って話をしたら、夫が「あ、そういうところに悩むんだね」と言っていたんです。フェムテックという言葉をキーワードに会話のきっかけができて、悩みを知ってもらう機会ができるなと、夫との会話から感じました。

丹野:
そうですね、フェムテックは会話のきっかけづくりに非常に役立つと私も感じます。
生理痛が重い方の中には、なかなか周囲に言えないとか、パートナーにも伝えにくく感じる方もいるかと思います。そこに対して、例えば、見た目がかわいい生理痛緩和のフェムテックデバイスを持ち出すことで、「これ買ったんだけど、なんだと思う?」と会話を切り出したりできるのかな、と。そのアイテムをきっかけにして、「実は私は生理痛がすごくつらくて、ひと月のうち3日間は動けないくらいになるんだ」と話せるかもしれませんよね。周囲もそこまでの痛みだとは知らずにいることも多いと思うので、理解できたらケアもしやすいと思うのです。
特に男性は、いままで知る機会がなかったために女性の健康に意識がいかなかったという方も多いと思います。理解を進めるために、フェムテックが役立ってほしいです。

日本と世界のフェムテックムーブメント

鎌田:
フェムテックという言葉をよく聞くようにはなってきたのですが、日本では大きな変革は起きているのでしょうか?

丹野:
日本では大きなムーブメントが起きていると思います。2020年が日本のフェムテック元年と言われており、生理をテーマに取り上げる雑誌やテレビ番組が増え、メディアで扱われることが多くなりましたね。

鎌田:
日本だと広く認知されているのは吸水ショーツですよね。

丹野:
そうですね。フェムテックアイテムのなかでも吸水ショーツが圧倒的に人気だと思います。ユニクロさんが2021年に吸水ショーツを発売して、いっきに認知度が上がりました。大企業が扱うようになったということは、産業的にもフェムテックが認められてきたんだなと感じます。

鎌田:
他国でのフェムテックムーブメントはどういったものなんでしょうか?

丹野:
私の暮らすシンガポールでは、2021年にフェムテック元年のような兆しがあったんですが、広まりを見せているのは、実は生理用品じゃないんですよね。シンガポールで最近興っているスタートアップは、性感染症やホルモンのセルフ検査キットをオンラインで購入できるサービスとか、セクシャルウェルネス系の商品とか、日本とはちょっとカテゴリーが違うのですが、メディアや投資業界を中心に、フェムテックの認知度が上がってきた感じがあります。

鎌田:
日本とシンガポールでは、異なるカテゴリーが注目されているんですね。

丹野:
世界的に見ると、アメリカではかなり早くフェムテックムーブメントが起こりました。吸水ショーツだと、アメリカでは10年以上前から広まりを見せていて、ヨーロッパやオーストラリアでも珍しいものではありません。
欧米の特徴は、スタートアップ企業の数が多く、活発なことです。大規模な資金調達を行い、最先端のテクノロジーやAIを使って新商品やサービスを生みだしています。
エルビー(Elvie)というブランドが良い例で、彼女たちが開発した搾乳機はコードレスでブラの中にスポッと入る非常にコンパクトなものです。フェムテック業界をリードするようなブランドになっています。

出典元:https://www.elvie.com/en-us/shop/elvie-pump

鎌田:
それは、本当に役立ちそうですね。
これまでは搾乳時に手がふさがっていたのが解決されますよね。

丹野:
そうなんですよ。見た目もスッキリしていますし。
ただ、まだ値段的には高いんですよね。全てそろえて買うと日本円にして7~8万円くらいでしょうか。

鎌田:
困るけど、搾乳する時期って短いですからね。

丹野:
もっとムーブメントが大きくなれば、大量生産できるようになり、安い価格で手に入れやすいアイテムになってくると思うんです。

——私の暮らすドイツでは、薬局で搾乳機をレンタルすることが多いんです。産婦人科の検診で処方箋をもらい、それを薬局に持っていくと搾乳機が借りられます。加入する保険にもよりますが、レンタル費用もカバーされることが多いと聞きます。日本では、個人的にレンタルはできるけど、自治体で補助するというのはあまり聞かないですよね。

丹野:
フェムテックを扱っていると、各国のそういった医療の保険制度だとか、規制の違いを感じることが多くあります。日本は、安全性に対してとても要求が厳しい。それには良い面も、良くない面もあります。良くないという意味では、新しい製品をなかなか導入しにくいんですね。承認プロセスに時間とお金がかかるんです。
近年は議会や行政がフェムテック支援に動いており、嬉しい流れだと感じます。

世代によって違う?セクシャルアイテムへの意識

鎌田:
今回丹野さんとの対談をきっかけに、乃木坂にあるfermataさんの店舗に伺って、実際に商品を手に取ってみました。

丹野:
スタッフによると、店舗に来るお客様は、自分の悩みを積極的に話してくれるそうです。誰かに聞いてもらいたいという欲求を、実は多くの方が抱えているんじゃないかなと思うんですよね。だから、そのように話せる場所があるのはいいことだと思います。
乃木坂の店舗にはカップルで来られる方や、男性がパートナーのために購入されたり、ご高齢の方もいらっしゃるそうです。

鎌田:
幅広い年齢の方が店舗を利用されているのですね。
丹野さんに年齢層のことでひとつ伺いたいなと思っていたんです。fermataさんで扱う商品を見たときに、生理や妊娠にまつわるアイテムに関してはフムフムってすぐ受け入れられたんですけど、セクシャルアイテムに関しては「おお!こんなのも売ってるんだ」と驚きまして。オーガズムとか、なにか触れてはいけないことに触れているような、私はそういう感覚の40代なんです。そういったセクシャルウェルネス系のグッズにオープンに興味を持つのって、もっと若い人なんじゃないかと思うのですが、実際にはどうなんでしょうか‥。

丹野:
セクシャルウェルネスグッズに抵抗がないのは、Z世代(※3)以降の人たちが多い印象です。fermataのスタッフは若いメンバーが多いのですが、商品やブランドをよく研究していますし、オープンに話していますね。

鎌田:
Z世代の方たちが比較的オープンなのは、どうしてなんでしょうね。

丹野:
fermataのスタッフを見ていると、彼女たちはインターネットやインスタグラムで世界中の情報にリーチできるので、フェムテックで活躍しているブランドや商品など、いろんなことを知っています。情報に触れるなかで、あるブランドが発信するビジョンだったり、メッセージに共感するんでしょうね。そうすると、私ももっと性についてオープンに発信していこう、というようなモチベーションになるんじゃないかな、と思います。そのような子たちが発信して、インフルエンサーになって、それを見ている若い世代の人たちもまた同じように価値観がちょっとずつ変わっていく、みたいな連鎖が起きているのではと私は思います。
でも、私の周りの40代や50代の友人も、「最近セクシャルウェルネスにちょっと興味があって」と言ってくれたりして、きっと年代に関係なく興味はあるんでしょうね。個人的には、更年期に入っていく世代にもマッチするんじゃないかと思っています。
セクシャルウェルネスって、ちょっと視点を変えると、自分のメンタルがポジティブになる、自分の体と向き合える、癒しになる、といった側面もあるのではないでしょうか。

※3 Z世代‥1990年代半ばから2000年代に生まれた世代とされており、幼いころからインターネットやデジタルデバイスに触れてきたことが特徴で、「デジタルネイティブ」だと言われる。

世界では女性の性をオープンにしようという動きも

鎌田:
日本はやっぱり、そういうセクシャルなことに対しては一般的にオープンじゃないですよね。

丹野:
まだまだ恥ずかしいと思う方がきっと多いんじゃないかと思います。

鎌田:
私がイギリスに住んでいた頃、セクシャルウェルネス系グッズのCMがテレビで普通に流れていたんですよ。あと、びっくりだったのが、裸の下半身から好きな人を選ぶっていうマッチングの番組があって。下半身からどんどん上を見ていって、人柄も好きかどうか見るためにコミュニケーションもとって、最後に顔がオープンになり、初対面なのにお互いがヌードで出会ってハグするという、そんな番組を毎週のようにやっていました。

丹野:
ええ〜!それはすごい。イギリスはかなりオープンなんですね。
海外では、女性の性のタブーをなくしていこうという声があがっていますね。
私たちが取り扱っている、デイム(Dame)というニューヨーク発の女性向けプレジャーアイテムのブランドがありまして、以前、ニューヨークの地下鉄に商品広告を出そうとしたら、却下されたそうです。でも、男性向けプレジャーアイテムの広告は、男性器を連想させるような広告でも実際に採用されていたわけです。デイムの広告は性器を思わせるようなものでもないのにどうして却下されたんだ、と彼らは訴訟を起こし、何年も裁判を続けて最近勝訴したというエピソードがあります。

先進的と思われるアメリカでも、女性の性をオープンにすることに対していまだに戦っていたりするんですよね。
話しちゃいけないこと、我慢すること、隠しておくこと、というタブーの意識に気づいて、自身の心身の健康のためにオープンにしてよい、と表に出していくムーブメントが、それこそ世界同時発生的に生まれている状況は面白いですし、希望を感じます。

鎌田:
日本における女性の体や健康課題へのタブー視は、文化的なアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)と言われるそうですね。だから実は、女性である私たち自身も知識不足なんだと感じます。
丹野さんが話されていた、フェムテックがもたらす約2兆円のインパクトという経済的な切り口から「女性の社会進出のために、健康課題はテクノロジーで解決すべきもの」という認識が広まって、女性の体や健康課題をタブーとする固定観念の解消にもつながってほしいですよね。
フェムテックが広がれば、ジェンダーギャップ解消の一助になるはず。まさにfermataとCAREER MARKが実現したい社会に近づきますね。

 

文:横田 マリ子
対談運営:CAREEER MARK キャリアカフェドイツ部

 

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CAREER MARK 2周年特別企画「ブランクがあっても採用される人とは?」模擬面接ウェビナー 開催レポート

2022年4月、CAREER MARKは2周年を迎えました!
2周年を記念して、特別企画「ブランクがあっても採用される人とは?」模擬面接ウェビナーを開催、その内容を紹介したいと思います。

CAREER MARKの始まりは、共同代表 鎌田が経験した2年間の英国ロンドンへの駐在帯同経験。自分自身もキャリアのブランクに悩んだことから「世界中の駐在妻がチカラを発揮できる社会を目指して」をコンセプトに、駐在妻などキャリアでブランクを抱えた人に向けた人材紹介事業をスタート。人材紹介事業だけでなく、人材開発機能も設け、インターンやコミュニティ、1on1キャリアサポートなど駐在妻が再就職に向けて準備ができるような様々な環境を提供しています。

 今回のイベントの主な内容はこちら

1.模擬面接

まずは企画のメイン、大勢の前での公開模擬面接です。今回は2つの企業様、2人の駐在妻の方に協力頂いて模擬面接が実現しました。モデレーターはLAXIC編集長の小山佐知子様。
企業はどのような質問をしてくるのか、どのような目線でブランク人材である駐在妻を見てくるのか、そんな所が見所です。

(1)35CoCreation合同会社(桜庭様)とDさん

シンガポールでの駐在帯同を経て本帰国、現在再就職活動中のDさん。帯同前は製薬会社でMRの仕事をしていました。
シンガポールでの生活が楽しかったと語るDさんに桜庭さんは、

  • 楽しさの源は何だったと思うか?

  • どのようなことにワクワクした気持ちを持って行動できたのか?

  • 逆にやりたくないのはどんなこと?そういうときはどうする?

と質問を投げかけ、Dさんはシンガポールでの出来事や製薬会社でのエピソードを交えながら答えます。面接で印象的だったのは、企業が帯同前のキャリアと同じようにシンガポール帯同中の出来事についても聞いていたこと、どちらの経験も分けずに「どのようなことがDさんの行動力の源泉なのか?」「逆にどのようなことは源泉にならないのか?」に焦点をあて聞いていたことです。

Dさんは桜庭さんとの会話の中で、仲間と一緒に何かをつくりあげることが楽しみの源泉で、それには自分が共感できる事業やテーマであることが大事だと話します。聞いている私たちにもDさんが日本やシンガポールで、どのように楽しみを感じながら前向きな姿勢で生きてきたかがよく分かる面接内容になりました。
 

(2)ラクスル株式会社(松本様)とOさん

現在はシンガポールで海外駐在帯同中、2人のお子さんを育てながらパートタイムで現地の日系企業にて勤務中のOさんです。
松本さんはOさんのシンガポールでの駐在帯同生活のことを

  • どのような気持ちから現地での就職を考えたのか?

  • 実際に現地で生活・就労してみてどう感じたか?

  • 子育てとの両立、言葉や文化の違いでの苦労はどうだったか?

色々な角度からきめ細かく聞いていきます。実はOさん、シンガポールへの駐在帯同が決まった時点で現地での就職活動を開始、渡航前に既に正社員として採用が決まっていたそう。でも実際に働いてみると、文化の違い、言葉の壁、育児との両立に苦労し一度退職を経験。その後現地での生活に慣れてから「やっぱり私は働いていたい」と同じ会社に再度パートタイム勤務という形で復帰したそう。

現地でぶつかった壁、どのような形で乗り越えたのか、壁にぶつかっても仕事を続けたい理由について聞いたことで、松本さんは履歴書だけでは感じられなかったOさんの仕事に対するモチベーションの高さ、熱量を感じられたことが良かったと話します。画面からもOさんの芯の強さ、しなやかな生き方がよく伝わる内容でした。

2.座談会

次はLAXIC編集長小山さんの進行で、模擬面接をされた4名と鎌田で次のテーマについて語ります。

  • ブランク後の再就職 本当の壁は何?

  • ブランク人材を活かす「多様な働き方」とは?

海外駐在帯同によるブランクは、本当に再就職の壁になるのでしょうか?
帰国した駐在妻が再就職活動をする時に駐在帯同中のことには関心を示さない企業に出会った経験があるという話も出てきました。でも今回面接官役を務めてくださったお二人は、駐在帯同によるブランクの有無にはこだわりなく、何をしたい人なのか、何ができる人なのかという観点から採用担当として知りたいことを聞いていた印象です。
桜庭さんは「駐在妻であってもなくても私が知りたいのは‘’何がこの人のエンジンなのか‘’、’’何がこの人のエンジンにならないのか’’。」、松本さんは「スタートアップ企業においては人を一から育てる余裕がないので社会人経験がある人の復帰はありがたい」と語ります。

また、駐在妻の再就職ではフルタイムでの正社員だけでなく、限られた時間でのパートタイムや時短勤務、リモート勤務を活用した多様な働き方をしたいという希望も多く聞きます。仕事に多くの時間を割けないことは再就職の壁になるのでしょうか?松本さんは「企業次第ということはあるけれど、短い時間で成果を出す働き方ができている人は自分の会社でも現にいる。働き方は自由になる流れではないでしょうか」と語ります。

全ての企業ではなくても認めてくれる所はある。ブランクを自分で壁にせずに自分が何をしたいのか、何ができるのか、探してみて一歩踏み出す。そんな気持ちが再就職への第一歩になるのだと改めて感じるお話でした。

3.CAREER MARK新サービス『リターンシッププログラム』とは?

「実際に働き出してみないと分からないことが多いよね」これは、再就職活動をする駐在妻からも採用を行う企業からもCAREER MARKがよく聞く言葉です。このような言葉から6月よりリターンシッププログラムが始まります

CAREER MARKのリターンシッププログラムは「再就職を希望する人に対して、企業で期間限定の就労機会を提供」、離職期間を経て再就職を希望する方と働く意欲のある人を採用したい企業との橋渡しをするサービスです。リターンシップは試用期間として位置づけ、実際の就労前に「求職者と企業がお互いに相性を確認しあい」「就労にあたっての条件をすり合わせることができる」というメリットが。詳しくは近日中にホームページInstagramでお知らせいたします!

4.あとがき

模擬面接に座談会、新サービスの案内と盛りだくさんの内容であっという間の一時間半でした。今回のイベントの開催にあたっては、駐在妻の皆様からも有難いことにたくさん質問を頂きました。

  • 駐在帯同中の経験をアピールする方法は?どんなことをしておけば再就職に有利なのか?

  • 離職期間が5年、日本に帰国する頃には40代になる予定。再就職できるかが不安。

  • 語学力アップは強みになるのか?

  • 事務の経験しかないが、他にどんなスキルがあれば採用につながるか?

  • 子どもの受験準備があり今は働くことができないけれど、仕事に戻りたい。どんなスキルや資格が再就職に生かせるのか?

今回は時間の都合で全ての質問に答えることができませんでしたが、せっかく頂いたご質問、CAREER MARKのインスタライブで共同代表の鎌田、キャリアコンサルタントの小橋がお答えいたします。ぜひInstagramをフォロー、インスタライブをご覧ください!
公式Instagramはこちら

この2周年特別企画は予想を超える多くの方にご参加いただき、好評いただきました。ありがとうございます。「世界中の駐在妻がチカラを発揮できる社会を目指して」これからもCAREER MARKでは世界中の駐在妻と企業をつなぐ橋渡しをするための様々なサービスを提供してまいります。

 

文:CAREER MARK インターン4期 加藤朋子

 

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駐在妻・もと駐在妻のための仕事探しのはじめの一歩 vol.2

 みなさんは、駐在妻のキャリアというとどんなイメージがありますか?
 本帰国後に自身の再就職を希望する場合、どんな選択肢があるのでしょうか?
 駐在妻歴6年目の私にとって、キャリアという言葉はほど遠い存在でした。
「駐在帯同中はキャリアブランク期間?」「本帰国後、私が再就職なんてできるのだろうか?」と。
 そんな私にとって、ぼんやりした不安が具体的に、さらにはその解決の糸口までもが明確になった今回のセミナー。
 不安を感じながらも、将来のご自身の未来に向かって何か行動を起こしたい方へ。
 可能性を見出すきっかけ
として、ぜひ本セミナーと出会って頂きたいです。
 今回はセミナーに参加した一駐在妻の私として、学び・気づきをシェアさせて頂きます。

 同じような悩みを抱えていらっしゃる駐在妻の方へ、届きますように。
_______________________________

セミナー概要
テーマ
駐在妻・もと駐在妻のための仕事探しのはじめの一歩

日時
2022年3月10日(木) 10:00~(日本時間)

講師
CAREER MARK共同代表 鎌田 薫

blog.careermark.net


CAREER MARKキャリアコンサルタント 小橋 友美

blog.careermark.net

_______________________________

※CAREER MARKについてはこちら
本セミナーの概要については、CAREER MARK公式ブログのこちらの記事をご覧ください。

blog.careermark.net

「あなたの駐在帯同中」を履歴書に書くなら?

・「キャリア=仕事の経歴」 ではないという気づき

 私にとって、キャリアという言葉は、バリバリ働く女性のためのもの。社会人経験2年半の私にとって、自分のキャリアはもう10年も前に途絶えていると思っていました。
 それが今回のセミナーでキャリアコンサルタント小橋のお話から「帯同期間中の経験がキャリアになる」ということに気づきました。

 

・「駐在帯同中の言語化」の大切さ

 自身の経験の「言語化」が何より大切という小橋のお話。
 なぜなら、その経験を履歴書に明記することで、企業側の方からも帯同期間中にどんな想いを持ち、どんな行動を起こしてきた人であるのかが明確になります。
 それにより、「ブランク→キャリア」へと印象が変化し、採用への背中を押すきっかけとなる可能性もあるようです。
 なかなか知ることの出来ない、リアルな「採用側の視点」を知ることが出来、今すべきことが明確になりました。

 

・「本帰国前にキャリアの棚卸しをすることがススメ」

 こちらは、鎌田からのお話。帰国後は、新しい生活のスタートアップで日々の暮らしに追われてしまいがち。帯同中は、自分の未来をじっくり描き、自分の好きな事の抽象度を上げていくには、すばらしいチャンスの時間なのだということ。
 「今だからこそできること」は、実はとてもシンプルですぐにでも実践できる事が沢山あることに気づかせて頂きました。
 本セミナーを受講したその日から、今の帯同期間中の視点、過ごし方が変化しそうですね。私はまずはペンと紙に、自分のキャリアや好きなことを書き出してみました。視覚化する、書き出したことで、自分と向き合い客観的に向き合う良い機会を頂きました。
 「今の暮らし」の価値をより楽しみながら、再就職へ繋げることが出来ると思うとワクワクしました。

なんとなく感じている再就職に対する不安はどんなことですか?

 多くの方にとって初めての経験となる、本帰国後の再就職。
 周りにはあまり帰国後に再就職された方がおらず、「駐在妻」に特化した再就職のお話が聞ける場所には、なかなか出会えませんでした。
 そのなかで、なんとなく感じていた不安。「まずは何から調べたら良いのだろう?」「どんな準備をしていたら良いのだろう」。そういった不安要素が、今回のセミナーのお話から、より具体的に、より明確になったことはとても大きな学びでした。 
 不安・課題が明確になれば対策が取れますね。今から準備を進めることもできる。そう思えただけで、肩の力が抜けました。
 リアルな体験談を伺える、貴重な時間となりました。

駐在妻の再就職には「戦略と準備が大切」

 私たち駐在妻にとって、「変化への対応力」はきっと自信をもてる一つのスキル。
 さらにその対応力に、「戦略と準備」が備わったら、きっと可能性はどんどん広がっていくと思います。今からできる準備は?どんな戦略を立てれば良いのか?そんなヒントが、本セミナーにはギュッと詰まっていました。
 今まで駐在妻を経験している鎌田、小橋はじめCAREER MARKのメンバーだからこそお伝えできる、リアリティ溢れるお話。駐在妻のリアルな細かなお悩みに寄り添い、さらにはその具体的解決策まで語られた本セミナーは、再就職を希望する(もしくは再就職の可能性を諦めていた)方に、ぜひお届けしたいと思う内容でした。

 第二回目からは新たに「放課後特別企画」として参加者の方からの質問にお答えするコーナーも新設されました。この機会をぜひ、再就職への一歩としてご活用ください。

あとがき

 私一人では思いもつかなかった再就職への視点や切り口、実績のあるリアリティ溢れるお話。自分で一から調べて、求人サイトから応募するだけでは叶うことのできない未来への道筋が、ここCAREER MARKには存在することを確信しました。

 女性はとっても頑張り屋さんで、特に海外生活を乗り越えてきた駐在妻の方はリサーチ力も抜群の方がとても多い印象を受けますそれでもやはり、「誰かの力をかりる」ことで、より自分の描く理想の未来に近づけるのだと感じました。

 CAREER MARKは駐在妻のキャリアを応援しています。
 ぜひ、一歩踏み出すきっかけに本セミナーをご活用ください。

 次回開催の予定は各種SNSにてご案内致します。公式ブログリンクよりぜひフォローをお願い致します。

 

文:CAREER MARKインターン4期 吉井聡子

 

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帯同前キャリアセミナー3期

CAREER MARKでは、「渡航前〜帯同中〜本帰国後、切れ目なく駐在妻のキャリアサポートしていきたい」「駐在妻がどこにいても自分だけのキャリアを誇れるようにしたい」という想いを込め、各種キャリアプログラムをご用意しています。

本日は、2011年9月11日に開催された「帯同前キャリアセミナー」第3期の開催レポートをお届けします!

・これまでの帯同前キャリアセミナーレポートはこちら

blog.careermark.net

blog.careermark.net

夫の駐在が決まった!でも、わたしにも仕事がある。海外での生活が楽しみな反面、自分のキャリアはどうしよう。駐在帯同のために、諦めないといけないのかな・・・。

 

新しい土地での生活への期待と自分の意志とは関係のないタイミングで決めなければならないモヤモヤした気持ちを抱えていませんか?

 

帯同して、なんとか生活は落ち着いてきたと思ったら、急に自分のキャリアについての不安が押し寄せて来ていませんか?

 

そんな不安やモヤモヤを抱えた皆さまのために、キャリアコンサルタントの資格をもつ、もと駐在妻・現駐在妻が自らの経験を元に作った、想いの詰まったセミナーです。

今回は、ヨーロッパに駐在帯同予定の方、オーストラリアに駐在帯同予定の方、2名のプレ駐在妻の方々にご参加頂きました。本セミナーのファシリテーターを務めるのは、もとイギリス駐在妻でキャリアコンサルタントの林眞帆です。

▼林については、以下の記事をご覧ください。

blog.careermark.net

では、早速セミナーレポートスタートです!

第1部 帯同前の準備

・私のキャリアにおける、駐在帯同期間の目標を持とう
 「◯◯のせい」ではなく、自分の意思で前向きな気持ちで海を渡るには?

・渡航後多くの人に訪れる暗黒期。その落ち込みから早く抜け出せる人となかなか抜け出せない人との違いについて。

・ワークをしながら、キャリアコンサルタントと一緒に自分の強み、仕事の成果、業務スキルを記憶が鮮明なうちに棚卸しをしましょう。

第2部 駐在帯同中の過ごし方

・「駐在帯同中もキャリアの一部」というけれど、それはどういう意味?
 駐在帯同生活は、企業が求めるスキルを伸ばすためのとても良い機会ということをご存知ですか?

・駐在帯同は「個」を確立する特別な時間。日々葛藤を抱える駐在妻だからこそ、得られる「個」の確立とは一体なにか

・CAREER MARK運営スタッフ松浦理恵に聞く、駐在帯同生活で得たことを仕事に活かす方法

▼松浦については、以下の記事をご覧ください。

blog.careermark.net

第3部 先輩駐在妻との座談会

参加者の皆さまの駐在帯同先、悩みに応じた、先輩駐在妻の方々をゲストとして参加してもらい、直接リアルな話を聞くことができる時間です。今回は、

・現地のコミュニティの探し方、入り方は?
・再就職する時は、どんな気持ちだった?
・越境ワークをしたいけれど、どこから手をつければ良いの?

などなど、今まで誰に相談したら良いかわからなかったことでも、率直に聞いて解決に繋がっていました。また、ゲストの人脈をもとに、帯同前から駐在帯同先でのつながりを作れる機会にもなっています。

最後に、「駐在帯同を自身のキャリアのためにどんな期間にするのか?」「不安を解消できる最初の一歩は何か?」をそれぞれシェアして、セミナーは終了しました!

あとがき

3時間のセミナーは、終始ファシリテーターの林さんの明るくポジティブなエネルギーに満ち溢れた時間で、「迷える駐在妻を救いたい」、「孤独な駐在妻を作りたくない」という想いをセミナーの端々で感じました。駐在帯同2年目の私が聞いても、ためになることばかりで、メモをとる手が止まりませんでした。

駐在帯同への漠然とした不安を抱えている方や、自分のキャリアについて悩んでいる方、渡航後間もない方にぜひ受けて頂きたいと、改めて感じました。受講後にはきっと、受講前に感じていた心の霧は晴れ、未来に向けて気持ちが明るくなっているはずです。

また、セミナー後には、キャリアメンターまたは、キャリアコンサルタントとの60分個別セッション(通常価格:10,000円)を無料で受けることができますので、こちらもぜひ活用して頂きたいと思います!

 

文:CAREER MARK インターン3期 筧中(といなか)莉紗

 

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帯同前キャリアセミナー2期

こんにちは。

今回は、好評だった1期に続き、2021年6月に開催された帯同前キャリアセミナー2期についてレポートしたいと思います。

・前回の帯同前キャリアセミナーレポートはこちら

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帯同前キャリアセミナーってなに?

自分の意思とは関係なく決まる配偶者の海外駐在。単なる国内の異動とは違い、家族とともに生活を続けるとなれば、自分の仕事・キャリアを一旦手放すだけでなく、知らない人ばかり・母国語も通じない国での海外生活を始めなければならない・・・。

自分のキャリアはどうなる?駐在帯同中は何をすればいいの?誰でも不安や疑問でいっぱいになるはず。

そんな不安を、自身もロンドン駐在帯同経験のあるキャリアコンサルタントの林真帆と一緒に、心の中にある思いを言語化しながら解消し、帯同中の過ごし方について考えるセミナーです。

大きな変化をただのストレスではなく、人生のステップアップのきっかけに。キーワードは「前向きに」

今回の参加者はアメリカに駐在帯同して間もないMさん。
VISAや会社規定により駐在帯同中は就労できないパターンも多いかと思いますが、Mさんは現地就労が可能とのこと。
ゆくゆくは現地で働くことも視野に入れている。が・・・なんと、もうすぐ出産予定の妊婦さん。
初めての海外生活、初めての専業主婦状態、そして間もなく始まる初めての出産・子育て・・・。
大きな変化がいくつも重なり、なかなかのストレスを感じていたようです。
初めは仕事においてもやりたいことに迷いがあり、不安な様子が少し見受けられたMさん。
しかし林とのセッションを通して自分の中にある不安や思いを表に出すことで、少しずつ「自分が本当は何がしたいのか」が見えてきたよう。
最終的には、「今までも逆境を前へ動く原動力にしてきたし、それが自分の強み。駐在帯同という大きな環境の変化も必ず自分にとって良い方向に向かせる。妊婦期間・子育て期間を通して、今まで関わることのなかった人や場所に飛び込み、駐在帯同中はとにかくやりたいことをできるだけやってみる期間にしたい」と明るい表情で話してくれました。

前もって「渡航後どう過ごすか」を決めておくことが大事

今回のセミナーに参加して、他の方と私で大きく違っていたことが1つあります。
それは、帯同前に「何をしに行くか」「帯同中、どう過ごすか」を明確化しているかどうか、です。
私は渡航する一ヶ月前まで仕事を続け、残りの一ヶ月でバタバタと荷造り作業を進め・・・と、何かについて深く考える時間を確保していませんでした(言い訳ですね・・・)。
一方、セミナー参加者の方々(ゲスト参加)は、行く前に「帯同中は専業主婦生活をめいいっぱい楽しむ!」「帯同中も私は私で働き、夫とは日本にいるときと変わらない関係でいる!」と、帯同中どう過ごすかを決めて、家族で話し合っていたとのこと。そのおかげで、帯同中もキャリアやこれからのことについて、特に不安に苛まれることはなかったと。
その話を聞いてハッとしました。実は、私自身、渡航前後は何か分からない大きな不安を感じ、今まで一度もなかった食欲不振に(苦笑)。
しばらくして体調は戻りましたが、きっと何の考えもないまま渡航してしまったから、「何のために来たのか」「何をすればいいのか」という漠然とした不安がずっと心の中にありストレスになっていたのでしょう。
渡航前に、駐在帯同の目的や過ごし方を決めておくことはとても重要だったんだと今更ながら気づかされました。

「ママ」であり、「私」である

セミナー参加者のMさんは現在妊娠中ということもあり、ゲスト参加者とのトークセッションでは産後の過ごし方についてや子育てについての話題が中心に。
「産後はしばらく子育てで精一杯で自分の時間がないと聞く。やっぱり自分のことがなかなかできなくなるのか」という問いに、「抱っこ紐でアクティブにボランティア活動してたよ」「産後・子育て中はとにかく子供を通してローカライズすることに専念してた」と様々な回答が。
要は、体調さえ大丈夫なら、何かをセーブすることはない。ナーサリーや周りの助けを借りてでも、自分のやりたいことをやればいい。
そして、私の心に響いたのがCAREER MARKスタッフの
「自分は自分の人生、子供は子供の人生を歩む。ママになったからといって、自分が変わるわけじゃない」
という言葉。
私自身、仕事から離れて子供を連れての海外生活となると、どうしても子供中心の生活になりがちで、それに少しモヤモヤしていました。そのモヤモヤを晴らしたくて、CAREER MARKのインターンに応募しました。
それでいいんだ、子供がいても私は私のやりたいことをやっていいんだと改めて言ってもらえた気がして気が晴れました。

このように内容盛りだくさんの帯同前キャリアセミナー、2011年9月11日に第3回を開催します!
駐在帯同が決まった(帯同したばかり)、初めてのことで不安だらけ、キャリアについて相談するところもない・・・。
そんな方は是非参加してください♪

※2011年の帯同前キャリアセミナーは終了しました。

 

文:CAREER MARK インターン3期 門野瑛子

 

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